上方落語をきく会から(下・月亭方正は大丈夫であろうか)

やっと確定申告が済んだので、夜遅くなってブログを更新します。
当ブログではあまり人気があるとはいえない、上方落語の話ですが。

上方落語をきく会の夜の部である。
昼の部は笑福亭主体であり、夜の部は米朝一門主体。

桂二葉さんが、NHK新人落語大賞を獲った演目「天狗さし」で出ていた。
NHKでは、審査員全員が満点だったとおり素晴らしいデキだったのであるが、さらにパワーアップの印象。
アホが進化している。
甚兵衛さんが天狗のすき焼き屋を始めるため天狗を獲りにいきたいアホ男に、呆れてはいるもののそれほど怒ってはいないのが二葉さんの工夫であろうか。
アホに怒ってはいけないと思う。
こんなに上手いのに、いまだに噺を忘れて詰まることがあるというから面白い。客のおっちゃんに続きを教えてもらったりするのだとか。

インタビューで伊藤史隆アナに質問されていたのが、NHKを獲った際に「ジジイども、見たか」と言い放ったことについて。
年始のNHK「東西笑いの殿堂」でも、爆笑問題の前で自らこう言っていた。
「女に落語はできひん」と言い、「高座返しするなら(女なので)前掛けせえ」と言ったジジイとは、いったい誰でしょう。
二葉さんのファンなら大いに気になるところだ。
だが、たぶん大した噺家じゃないと思う。
昔はこんなジジイが確かにいたよなとファンは思うだろうが、そんなに昔じゃない。つい最近、たかだか10数年前である。
そんな最近にこんなことを言っていたような噺家は、現実すら見えていない人だ。絶対売れていないと思う。

上方では露の都師とか、桂あやめ師とか女流のパイオニアがいるわけだが、こういう人はセクハラ言動をされても受け流してきたのだろう。
それもひとつの方法論だが、時代は完全に変わった。
二葉さんからすると、時代錯誤の言動はどんどん表に出して、排撃していかないとなというところ。
しかしこんな闘う女流落語家が、女性目線でない、アホ丸出しの落語をしているというのが面白い。
この先は二葉さん、どんなタイトル獲れますかね。芸術祭新人賞とか。

二葉さんの前年のNHK覇者が、午前の部に出た羽光さん。そしてその前年が、桂華紋さん。
華紋さんが顔付けされたのも、あるいはNHKのおかげなのだろうか?
演目がまたしてもふぐ鍋。NHKを獲った演目。
それでもどことなくレベルアップしている気がする。元々楽しいストーリーの噺だが、筋に頼らない部分がしっかり楽しくてすばらしい。

中トリは桂文三師で「たばこの火」。
先代文枝の十八番である。鷹揚な旦那がお茶屋で湯水のように金を使う、楽しい噺。
三遊亭歌武蔵師が、文珍師からだと思うが教わって落語研究会で出していた。
それもよかったのだが、お茶屋遊びは江戸には伝統がなくて、やはり上方になるであろうか。
文三師はトークコーナーでもって、昼に沸かせた羽光師とエロ談義。どんなラジオだ。まあ、本当にいやらしいわけではないのだが。

さて、非常に気になったので今日のタイトルにしたのが月亭方正。弟子も取ったことなので、芸歴13年だが「師匠」を付けて呼ぶことになります。
東でも西でも、軽い相撲噺としておなじみの「大安売り」。
これがなんとも締まらない一席で。
この噺で、滑った人は見たことないのだけどな。力を抜いて語ると得てして大ウケすると思う。

噺家としてデビューした頃はともかく、一度ラジオで方正師を聴いて、悪くないじゃないのと思ったことがある。
吉本の噺家はあまり「なみはや亭」にも出ないものだから、それ以来になる。
お笑い芸人から噺家に転身した人に対し、私はなんら負の感情は持っていない。
だいたい、たびたび名を挙げている羽光師がそうなのだ。一門の、希光、茶光もそう。
成金でも、昇也さんもそうだし、カデンツァの竹千代さんもそう。
談笑師の弟子の前座以外の3人はすべて芸人上がりだし、円楽党の鳳月、好志郎といった人も。
芸人上がりの人のほうに、むしろ好感を持っている。そう言ってもいいと思うのだ。
だから、方正師を色眼鏡で見ようとする理由など皆無。
なのに。

キラキラネームを振っていたマクラからして、なんだか客にフックが掛からなかった感じ。
客がみな、「邦正やんけ」と思ってるわけじゃないと思う。
客に掛からないその感じが、三平みたいだなと。

枝雀の息子であるりょうばさんとともにトークに出た方正師、噺家になったきっかけを語っていた。
営業で舞台に出ても、自分にはネタがなかった。チュートリアルとか後輩の漫才がバカ受けしているのを見つつ、ショックに打ちのめされる。
それで落語に来るのはまあいいのだが、今でも話術はそのまま?

そういえば、桂三度さんもすっかり見なくなってしまった。この人だってNHK受賞なのに。
私の好きな芸人上がりの人たちと違うのは、落語を使って何かをしようとしているところ。
そんな方法論だってあってもいいとは思うけども、落語の客との接点がやはり薄いのだろうか。

この話はもっと膨らむのだが、その前にもう少しサンプル採取として、吉本の噺家がラジオで聴けるといいのだけど。
ちなみに文三師も吉本。やはり、だからあまり聴けない。

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作成者: でっち定吉

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