いつものように落語のニュースを探します。
柳家吉緑が「さがみはら若手落語家選手権」で優勝に笑顔「人生で初めての賞です」
さがみはら若手落語家選手権は、東京の二ツ目が出られる大変権威ある賞である。
ここ数日取り上げている笑福亭羽光師も過去の優勝者。
二ツ目の落語の大好きな私も非常に興味のある大会だが、橋本は遠い。
興味はありつつ今年も行かなかったけど。いずれリニアの駅ができるのだが。
それにしても柳家吉緑さんとは。
正直、意外中の意外。賞レースに関われそうなイメージすら持っていなかった。
花緑一門において、この人が抜け出すイメージもなかった。
花緑門下の芸歴12年。初の受賞だそうで。
実にユニークな人だけども、マクラが面白過ぎて本編が尻すぼみという、なまじ笑い力の高い人がしくじりがちな高座にも数回出くわしたもので。
こういうとき、つくづく落語は難しいのだなと思うわけです。
反対に、表面的な面白さに欠けている人でも、型から入ってなんとかなったりする芸でもあり。
もちろん、面白いのは立派な武器だ。バランスがとれるようになったので、武器をフル活用できるようになり、一気に伸びたということなのでしょう。
受賞すると、客の焦点がピタッと合うようになるという効果がある。今度の活躍に期待大。
受賞の演目は「妾馬」。
適度にクスグリと人情を挟み込む噺で、素質が開花したのであろうか。
そうに違いないと信じている。この人から最後に聴いた「厩火事」がまさにそれだったからだ。
前述の羽光さんの飛ぶ鳥落とす活躍を見ていたりすると、これからは芸協の時代だと思ったりする。
当ブログでも、成金メンバーの相互を引き上げるすごさと、遅ればせながらユニットらしくなってきた芸協カデンツァをたまに褒めている。
だがこの大会も結局、落語協会の人が多く戴冠していくなあと。落語協会員、数は多いけども、二ツ目の数は実はそんなに変わらない。
緩い芸協のほうが伸びそうなイメージを抱いたままで。
師弟関係については、落語協会のほうが関係性が強いような気がする。その分、悪いほうにブレたりもするのだが。
それはそうと、柳家花緑師の育成力については、つくづく感服する。
前回優勝の林家つる子さんの師匠である正蔵師もそうだが、古い落語ファンからはしばしば「血でやってるだけのヘタクソ」と罵られてきた人でもある。
そして、惣領弟子を破門するという、その後の師匠人生の大きな汚点になりかねない道を歩んでもきた。
もっともこうやって賞レースの結果が出ても、「弟子もヘタクソだろう」「実際に聴いたがやはりヘタクソだ」。そうかたくなな人もいるでしょう。
花緑一門はことごとく型にハマっていないので、確かに焦点を合わせづらいところはある。
マイナスの感想もわかります。でも出た結果のほうが、数段真実に近いです。
マクラの楽しい吉緑さんから聴いてヒットだったのは、古今亭志ん輔師のマクラ。
最近当ブログでは志ん輔師に対し非常に批判的なのだが、ちゃんと理由はあるのです。
まあ、人の人生に対して影響力を行使したいと願いつつ、相手に避けられる人はどんな世界でもいますよね。
大会の準優勝は、三遊亭好志朗さん。
NHK新人落語大賞では目立たなかったが、あの大会も決して悪くなかった。やはりの実力者だ。
好志朗さんはピン芸人上がり。
当然「面白さ」については非常にこだわりがあるはずだが、落語の場合はそれをストレートに出そうとしても大コケするのである。
早めに、連綿と続く落語のエッセンスを吸収しないといけない。芸人上がりでも、これができる人だけ出世する。
昨日書いたことと関係しています。
好志朗さんは、前座の頃からできていたから立派なものだ。
まず落語が普通に語れるようになることで、それまで培った面白さが見え隠れして、楽しい高座ができ上がる。
そして3位が、今秋の新真打(柳亭小燕枝を襲名)、柳亭市弥さん。
NHK新人落語大賞では3年連続本選に出た実力者だが、私はあまりいい高座に出くわしてない。
先日、笑点特大号の若手大喜利でスベり気味だった印象。スベリキャラだからいいのかもしれないが。
柳家吉緑さんは、今月29日のらくごカフェ、「柳家花緑弟子の会」でトリだ。
お旦のおかげでワンコインの安い会。行こうかな。
神田連雀亭にもよく出ている。