春風亭百栄「バイオレンス・スコ」@ちよだ猫まつり

百栄師は鈴本中席のトリで、全8席ネタ出し。
私は「アメリカアメリカ」を聴かせていただいた。
3月20日はこの芝居の千秋楽だが、百栄師は予定の休演。
寄席の主任より先に依頼されていた(だいたいそういうもの)、ちよだ猫まつりがあったためである。

東京かわら版には出ていないこの会を百栄師のブログで知り、出かけることにする。
私は無料の会をこの上なく愛するビンボー人である。
コロナの前は無料の会、たくさんあったのである。ようやく徐々に復活の兆し。

神保町で仕事をしてから、千代田区役所へ。落語会は午後4時スタート。30分の予定。
神保町に来るのは、ほぼらくごカフェに用があるとき。それ以外でこの地にいるのは珍しい。
早めに会場に行ってみた。区役所はまだ新しく、快適な施設である。
9階に立派な図書館もある。

保護猫の活動などの展示と、グッズ即売会。
別段愛猫家でない私には、あまりピンと来ないです。すみません。
「ねこはるすばん」という絵本の、擬人化されつつリアルな猫の絵が拡大されていて、これはなかなか楽しい。

区役所1階の特設ステージに高座が設えられている。スタッフがソーシャルディスタンスを計りながら椅子を並べる。
全然知らなかったのだが、すでに整理券が配られていて、持っていない私は座れない。まあ、30分だから立って我慢する。

窓際の光がたっぷり注がれるスペースで開放的だが、その分音響はよくない。
仕切りがあるわけじゃないので、ねこまつり会場の音が全部混ざって聴こえてくる。福引の鐘とか。
演者はハンズフリーマイク装着。ピンマイクとかじゃなく。
しかし無料の会に対しては、一切文句は言わない主義。

めくりには、「猫落語 春風亭百栄」と出ている。
まあ、演目は「バイオレンス・スコ」でしょうね。「ロシアンブルー」という可能性もあるが、猫は脇役だ。
この2席と「露出さん」の入ったCDを持っている(上の広告)。
昨年、池袋の2月下席の初日に百栄師を聴いた。演目は「キッス研究会」。
その翌日は「ねこの日」だったので、ねこ落語を出すと予想したら、やはりバイオレンス・スコだったらしい。

百栄師登場。
普段落語を聴く客じゃないので、「こんにちわあ」じゃない。
ごく普通に登場し、いつもの「世界一汚いモモエ」を語る。ウォームアップ。
この会は昨年流れてしまったとのこと。オンラインで一席披露したそうだが。

それからたまたま私も取り上げた、先日のテレビ「ねこ自慢」。
百栄師は元ノラ猫の2匹を紹介した。自宅にテレビが入るという、猫に不慣れな状況で気を遣ったとのこと。
猫トイレは、ときとして龍安寺の石庭のように、うんこが点在して風流になることがあるという。だが、通常はテレビに映せないし。

大声タレントのサンシャイン池崎が猫に不安を与えるのではないかと心配だったが、実に物静かな人だったそうで。
猫を落ち着かせるまで一切口を開かないような。

昔は落語の放送もたくさんあったと百栄師。
今はあまりない。あるけども、早朝のジジイしか起きてない時間にやっている。
そんな昔、NHKのアナは落語をよく知っていて、一席終えた師匠に見事な質問をしてみせる。

あ、昨年の池袋(初日以外にもう1日出向いた)で聴いた楽しいマクラ。
その日の「マイクパフォーマンス」専用のマクラなのだろうと思っていたが、こうやって他の場所でも使うことがあるらしい。

往年のNHKアナは、「子ほめは前座噺で、オウム返しの基本がある」という話題を、楽しい師匠から見事に引き出す。
昔の師匠は私生活から楽しかったが、今の若手は着物を着ていないときはフツー。
百栄師、「若手でもないんですけど」とご自分について補足。確かに、今年還暦だもんな。

この、普通の若手に、「落語好きです」とアピールだけする不勉強な女子アナがインタビューするとどうなるか。
いきなり「はるかぜていひゃくえい師匠」と呼ぶ女子アナが、若手をグサグサ傷つける。
楽しいマクラであったまったところで、予想通りのねこ落語「バイオレンス・スコ」へ。マクラは15分強だった。
本編は20分ぐらいあったので、若干時間オーバー。

私はこの噺を生で聴くのは初めて。
猫好きの客がどういう反応を見せるかなと興味を持っていたら、なんとも実に薄かった。
猫が好きでも、落語というものは若干調子が狂うらしい。とりわけ新作落語というものに、どうアプローチしていいかわからないみたい。
席に座っているのに、ずっとスマホの画面見てた若者がいた。死刑だ。
親子連れも、お父さんを除いて退屈そうにしてて、このお母さんもスマホ見てた。整理券持ってるくせに、タダだからなんとなく聴いてるだけなんだ。

一番ウケてたのは、ノラ猫に餌を与える「猫ばばあ予備軍」。そのひとりイチゴサンダルちゃんは美人なのに、どこか幸薄そうな、猫好きにはよくあるタイプというくだり。

そんなことはともかく、バイオレンス・スコは楽しい。
CDと違うのは、猫の縄張りに、固有名詞が加わっていたこと。
マタタビ沼とか、もふもふ谷とか。あくまでも猫たちの使う地名なんだろう。正確な記憶でないことをお断りしておきます。

ともかくも、スコティッシュフォールドと、アメリカンカールの野良猫トップ同士が、餌場を巡って闘うという、ねこ落語。
2頭は基本的にギャングだが、実際に戦闘を始めるときはリアルな猫の喧嘩となる。
猫の品種がたくさん登場する。アメリカンショートヘアーとかマンチカン、長い名前のギャグとしてのノルウェージャンフォレストキャットとか。
このあたり、猫マニアが落語の客なら当然喜びそうに思う。鉄道落語を聴くテツのように。
だが、観察していると全然そうでもない。
よく考えたら、愛猫家だからって猫の品種に詳しいわけじゃないわな。そもそも私のように、愛猫家じゃない人が紛れているのかもしれない。

とどめが仲裁に入る、関西弁のジャパニーズボブテールの旦那。希少な三毛猫のオス。

客の薄めの反応はともかく、私にとってはとても楽しかったのです。
来年また呼ばれたら、百栄師匠には他のねこ落語はあるのでしょうか。

作成者: でっち定吉

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