マニアック落語上等

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柳家小ゑん千一夜Vol.9「鉄寝床・吉田課長」
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ネタ切れで1日休みました。

〆切をやっつけたので、昨晩は早くから飲み始めた。
一杯やりながらモツ煮込みを作る。
今朝早く目覚めたら、昨日の夕食の記憶がない。ああ、またやらかした。

若い頃は、大酒飲んで記憶を失くしたものだ。
最近は、二日酔いになるほど飲んでいるわけでないのに記憶を失う。困ったもんだ。
そういえば最近やらかした前回も、似たようなものを作ってた気がする。

せっかく作ったのに味の記憶がなくてとても損した気持ち。
キッチンを覗くと、料理が若干残っている。家族揃ってちゃんと食べた形跡が。
記憶はモツを煮込み、茹でこぼしをした後で止まっているのだが、ちゃんとその後他の素材も入れ、味付けもきちんとしている。
この時点でべろべろであったわけではないのだ。その後飲んだアルコールが海馬を侵し、大脳皮質へ送り込まれようとしていた記憶を壊したということである。

まあ、煮込みは朝いただいた。うまかった。

酒の噺と禁酒の話

昨年こんな記事を書いた。
最近はまたよく飲むようになったのだが、このときに生まれた「飲まない快感」はまだ記憶に新しく、日々せめぎあっている。
飲まない日の朝はとても気分がいい。だが、この気持ちよさも酒飲みだからこそ知っているものだ。

まあ、ヒヤでよし、燗でよし、飲まずともよし。それが酒。
ところでリンク先、累計アクセス数が妙に多いのだけどなんで?

さて、こんなマクラからごく薄く今日の話につながっていきます。
すでに飲み始めていた段階だが、モツを煮込みながらたまたま放送大学を視ていた。
放送大学、楽しみにしているわけではないが、偶然にチャンネルを合わせると、とても面白い授業をやっていることがある。
家畜の育種について語っていたのだ。

牛なら乳、豚なら肉、競走馬ならスピード。優れた特性を伸ばすため、人間は近親交配と、雑種強勢との繰り返しで家畜を育て上げてきた。
競馬の好きな人なら、インブリードとアウトブリードの話だとすぐわかる。
最近、なぜか競馬にハマっている息子も呼んで一緒に見る。

放送大学の授業範囲からは離れるのだが、この話題はどこにでもつながるから面白い。
家畜は人間のために使役され、作り替えられて気の毒にも思える。しかしそこには動物の側にも遺伝子を残す生存戦略があるわけだ。
「動物の権利保護」の話も思い起こす。
そして、ベストセラーの「ホモ・デウス」のことも。家畜の歴史を見たとき、太古からすでに人間は神であったのだなと。

しかし今日取り上げたいのは、私の関心の矛先ではなく、競馬好きな息子が案の定これに食いついたこと。
私はこやつが小さいうちに競馬をやめてしまったので、父の影響で競馬好きになったわけではない。
趣味はなんでもそうだが、競馬というものはひとつの体系をなしている。ハマると、すべての分野を知り尽くしたくなるわけだ。
私が競馬を始めた時代のレースはおろか、さらに昔の時代についてまですでに知識を得ている。カブラヤオーとかアンバーシャダイとか。
あっという間に、競走馬の血統までそらんじるようになってしまった。
ロベルトがどうの、ナスルーラがどうの、シルバーシャークがどうの。
私もかつてはこうだったので、笑ってしまう。
血統を覚えたって馬券にはさしてつながらない。でも趣味とはそういうことじゃなく、体系をいかに知るかなのだ。

さて競馬好きでなくても、ここまで読んでこられた方は、ひとつの体系がもたらす面白さについてご存じなのではないか。
落語だって、好きになるうちに三遊亭圓朝に興味を持ったり、さらに昔の江戸時代の落語に思いを寄せたりするのは普通のことだろう。

この感性があるからこそ、マニアックな落語をも、我々は楽しめるのである。
鉄道落語なんて、必ずしも鉄道好きでない人も聴きにきている。
なぜか。マニアックであることが面白いからだ。
春風亭百栄師の「マイクパフォーマンス」は、プロレスのパフォーマンスを落語界に取り入れたもの。
この楽しい噺を聴いた際、自分がプロレス好きでないのを悔やんだものだが、それでも知る知らないにかかわらず、マニアな世界はとても楽しい。

さまざまな分野に造詣の深かった談志が、なぜ新作落語を嫌ったのかまるでわからぬ。
新作落語は、マニアをターゲットにするうちに普遍性を持つに至った。

古典落語にだってある。
先日「花筏」のマクラで聴いた、三遊亭兼好師のマニアな相撲談義。
私は最近、相撲にはとんと関心がない。だがマニアな話というのは、どんなジャンルでも実に面白いものだ。

最近、私ちょっと困っているのが、趣味がなくなってきたこと。
唯一の趣味が落語なのだが、こちらはブログも書かなきゃいけないし、半分仕事になってきてしまった。
落語は最初から趣味として持つようなものじゃない気がする。いろんな分野に興味を持った人が、最後にたどり着いたほうが楽しいかもしれない。
新たな趣味が欲しいなと、そんな定年退職後の人のようなことを、いま思っている。

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作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。