「心が折れる」ということば

でっち定吉がたまにお送りする日本語コラムです。
まあまあ好評のようです。
「『突っ込みました』を言い換えたい」も、落語と関係なく検索でお越しの方がいらっしゃいますよ。

「1ミリもない」に続き、取り上げようと思っていた言葉が、ラジオから流れてきた。
「心が折れる」である。

新真打の春風亭昇也師が、師匠・昇太のラジオ(ビバリー昼ズ水曜日)のゲストに出ていた。
昇也師、かつて地上波笑点で円楽師の代演を務めた話を披露していた。
その際に好楽師から、「絶対ウケないから心折れるんじゃないよ」とアドバイスをもらったという。
昇太師は、「好楽師匠に言われるなら本当だ」。
笑点の客からすると、どこの誰だかわからない奴が木久扇いじりなんかしても反感を買うだけなのだと。
気を確かに、しっかり務めることが重要なのだ。

自称「春風亭昇太の懐刀」である昇也師の話は面白かった。惣領弟子の昇々師と同様、師匠との心理的距離が非常に近い人だ。

さて、75歳の好楽師からも出てきた「心が折れる」ということば。本当は好楽師でなくて、昇也師がそう表現しただけかもしれないが、別にいい。
私はこの表現、使ったことがない。
「落語にはサゲより大事な『いただき』がある」という世紀の大発見に読者がついてこなかったのが、最近の当ブログで最も心折れた状況。でも、ポキリとは折れない。
もともと人生winding roadなので、少々のことで心は折れない。そんなわけで、このことばを使う機会もないみたい。
ツイッターに悪口書かれた程度でも、心は折れない。

自分の脳内に沸いた感情を言語化する能力に欠けているため、リツイートばかりしている72歳のジジイの分際でと、軽く立腹はするが。
いっぽう人前に出る芸人にとっては、心証風景をわかりやすく説明できる、便利なフレーズが「心が折れる」。

笑点に抜擢されてウケないのは、心折れても仕方ない。
5年を過ぎてようやく折れた人もいるが、あれは珍しい。

「心が折れる」も新しい言葉である。
なんでも、女子プロレス最強の男、神取忍が使ってから普及したらしい。
さすが肉体派アスリートは違う。骨が折れるんなら、心だって折れても不思議はないということか。

「心折れる 落語」で検索を掛けてみた。
一之輔師が対談で「心が折れる」と使っているが、他には前述の好楽師のような例が出てこない。

検索の「他のキーワード」に、「昭和元禄落語心中 気持ち悪い」「菊比古 本名」「昭和元禄落語心中 モデル」などのワードが並ぶが、なぜだ。

まったくの余談ですが、BSで昭和元禄落語心中のアニメやってる。
これをきっかけにお客さんが来るかなと思い、古い記事に手を入れた。内容にではなく、次の回に飛ぶリンクを張ったのである。
でも、誰も来ない。
よろしくお願いいたします。

カテゴリ:昭和元禄落語心中

「心折れる 落語」に戻ると、木久扇師のインタビューがヒットした。
「がんはがんですけど、絶対生きてやろうと思ったし、気が折れることはなかったです」という表現がある。
「気が折れる」は辞書にも載っている、昔からある慣用句。

たい平師のインタビューもヒット。
心が折れずに修行を続けられたのはなぜですかと、これは聴き手が振っている。
その後、たい平師のコロナ感染から復活のニュースがあり、これはご本人が述べていた「皆様からの温かいお言葉で、心折れずに過ごすことが出来そうです」。

ちょっと面白いのがみつかった。
よしもと新喜劇座員へのインタビューで、「森田展義」編。

最初笑福亭福笑師に入門したのだが、落語が覚えられずに挫折したのだという。
たまにこんな人、いるみたいだ。
桂二葉さんだって、落語が覚えられなかったと繰り返し述べている。

立川吉笑さんのコラムが、「1ミリもない」に続いて今回もまたヒットした。
吉笑さんが新しい表現をことさらに好んでいるということではないと思う。
書くものが面白く、人気が高いためなのだろう。
私のブログも、関係ない検索で引っかかることありますからね。自慢かって? ちょっとね。

なぞかけの「その心は」の解説もヒットした。まるで関係ない。
もーれつア太郎に出てくる「ココロのボス」の「~のココロ」はなぞかけと関係ありそうな気がする。

まあ、今日は「心が折れる」という表現についてこれという結論も出ないまま、なんとなく1本作ってしまいました。
まいじつみたいだって? いいじゃねえか俺のブログだよ。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. コメントこそ書いておりませんが、小生定吉さんの「いただき」論には、おおいに納得しておりました。まずはそれをお伝えしながら、「心が折れる」という言い方は、スポーツのシーンなどでよく聞くようにも思いますし、自分でもよく使っていたなあと。
    落語などでの使用例はなくとも、イメージが伝わりやすい便利な言葉になっているようにも思います。とりとめのないコメントになってますが、悪しからず。

    1. いらっしゃいませ。
      不評のいただき論にご賛同いただき感謝です。
      いずれと思い続編の機会を狙っております。

      日本語のほうも、いくつかありますのでまたいずれ。
      と言いつつ、なんだったかなと思ってますが。

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