キングオブコント2022(中・時間経過に強いネタ、弱いネタ)

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いろいろあって、すっかり続きが遅くなりました。キングオブコントです。
8日にあった大会なのに、今日はもう18日。旬を逸してしまったが、でも日が経っていいこともあるのです。
改めて録画を見返してみたら、私の大好きなネルソンズとロングコートダディが、めちゃくちゃ面白いのだった。
最初に付けた採点よりも、さらにだ。
なるほど。
彼らのコントの完成度は恐ろしく高く、そして大会向きではないらしい。
いっぽう、優勝したビスケットブラザーズの1本目、見るたびに面白さが減少する。
彼らの優勝が間違っている。そんなことを主張したいのではない。
彼らは、ネタの完成度よりも爆発力を選び、それが功を奏したということ。
そして、大会では爆発力(私の定義では、「混乱の拡大」)が高く評価される。
ネルソンズ、ロングコートダディのように、客を取り残さずに連れていくスタイルは、最先端じゃないらしい。
だが、二組はこれでいいのだ。残されたビデオは、しっかり力量を語っている。

ちなみに、作り込んだ「かが屋」のネタ(ドM)も、1週間熟成すると同じ匂いがしてくる。
かが屋に関しては、無理に爆発しようなんて誘惑にはまるで駆られなさそうだ。自分たちのスタイルが、ファンになってくれる客に合うかどうかなので。

私が評価した人たちのコントは、シチュエーションコメディだ。
そして、「大人のコント」の匂いがする。
ビスケットブラザーズは、比較するとやっぱり子供のコントだなあと。
どっちがいい、どっちが悪いではなくて好みの問題であることは断っておきますが。

さて採点です。
M-1と異なり、一杯やりながらいい気持ちで観ています。昨年もそうだった。
いちいち断らなくてもいいと思うけど。
いい気持ちだが、後半酔っぱらってぐずぐずということはない(はず)。

 

丁稚の採点 順位
クロコップ 92 8位
ネルソンズ 91 4位
かが屋 90 5位
いぬ 89 9位
ロングコートダディ 95 7位
や団 85 同点2位通過
コットン 93 同点2位通過
ビスケットブラザーズ 90 1位通過
ニッポンの社長 89 10位
最高の人間 93 6位
【決勝】
や団 94 3位
コットン 91 2位
ビスケットブラザーズ 95 優勝

「結婚式で元カレが取り返しに来る」ネルソンズの採点、グッとこらえて、ウケたトップバッター(クロコップのあっち向いてホイ)より低くしている。
ロングコートダディ(料理の鉄人紹介ビデオ収録)は、振り返ってみれば、好きなので高くしすぎたようでもある。
だが、1週間経った今観ると、ロングコートダディは十分面白いし、ネルソンズの点数はまだ付け足りなかった気がしてくるのだった。

先日書いた通り、二組とも、状況設定をエスカレートさせていかない。
最初にかさ上げしたハードルより、ドラマが上へ行かないのだ。
ただ審査員たちには、それが(明確には言わないが)努力不足に感じてしまうらしい。
現にどちらのオチも、ごく穏やか。
私からすると、とても落語のサゲっぽくて気持ちいいのだ。
いつも落語について書いていることだが、落語のサゲなんてごく穏やかでいいものであり、コントに近しい新作落語も同様。
落語の基準でコントを観ると、状況の混乱度合いを増していく意味なんてまるでない気がしてくる。

落語のコンテストなら、穏やかなサゲは全くマイナスにならない。
しかし現状のキングオブコントでは、どんどん設定をずり上げていく必要があるらしい。
整合性より、爆発力重視。それもしんどいなあ。

「や団」は結果から見れば私の採点は低すぎるのだが、これが先日書いた通り、審査員との感性が著しく違う部分。
やっぱり1本目は私にはダメだ。
「殺人」ネタを扱うのは絶対にいけないか? そんなことは思わない。ただ、背景に暴力を感じてしまうと、こうじゃなくてもいいと思ってしまう。
ただしビスケットブラザーズと違い、1週間経っての劣化は見られない。完成度が最初から高かったことはうかがえる。

あと、「コットン」。
NHK新人お笑い大賞を獲って、演芸図鑑その他にも出ていた(当時の名前はラフレクラン)のでちょっとだけ知っている人たち。
私も点数は付けている。でもなんというか。
「インテリジェンスが高すぎる」気がするのだ。
この感想、自分でも持て余していて、どうしたらいいんでしょう。私は落語でも他の演芸でも、基本インテリ好きなんだけども、コットンに関してはもう少し庶民の側に下りてこないものでしょうか。
実に難しいものである。

今日の記事は「中」なのですが、続きはあるかわかりません。
審査員のことなど(特にお笑いインテリの小峠)、触れたくなったら「下」として続きを書きます。
まあ、書くとしたら常識的に、M-1グランプリまでには出すことになる。
出さなかったらごめんなさい。

作成者: でっち定吉

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