三遊亭天歌の告発に思うこと

闘う三遊亭天歌さんに、多少の援軍が届いたようだ。
柳家吉緑さんであり、林家はな平師。彼らはブログで。
そして春風亭柳枝、三遊亭金八といった師匠もツイッターで。他協会からは春風亭吉好さん。
もうちょっとあってもよさそうな気はする。
真打になっていない二ツ目さんたちが語れないのも理解はする。だが、彼らにも世間の風向きを見抜いて欲しいものである。
そもそも三遊亭圓歌に噺を教わっている人なんていない。緩やかでいいので連帯すれば、正義の側に回れるはずだ。

吉緑さんのエールは素晴らしい。
三遊亭天歌という人!

吉緑さんは無鉄砲ではない。ちゃんと自分でよく考えたうえで、自分にGOサインを出している。
ちなみに、「さがみはら」「北とぴあ」という、権威ある大会を二つ獲った本物のホープ。
余計なこと言わなくたっていいところなんだ。
打算でなく、本心でなにかしたかったのだと思う。

はな平師は、悪いことは悪いとしたうえで、スタンスはやや現在の落語界擁護。
とはいえ、しっかり天歌さんにはエールになっている。
三遊亭天歌さんのこと

Googleポータルに、古今亭志ん輔師のブログも出てきたので驚く。
前日

正直なところ、「あなたもちっともいい師匠じゃないよね」とは思ったが。
とはいえ、現に最近クビになった佑輔を拾っているこの師匠を、ポジティブに感じる人も多いだろう。
茶化したりはしない。しかも内容は、圓歌と協会批判だし。

いっぽう、ツイッターに天歌批判を載せ、しかも情勢が悪いと見るや慌てて消したのが一門の先輩、三遊亭志う歌。
「この披露目の時期にぶつけやがって」ということである。「そういうとこなんだよ」だって。
視野が狭すぎる。この人にはつくづく失望した。
自分の兄弟弟子の披露目で怒るならまだしも。
NHK新人落語大賞獲ったわりに、その後パッとしない噺家。今年は池袋下席のトリは取ったけど。
天歌さんのYou Tubeでは、名指しはしなかったがこの志う歌のカミツキに対し、精一杯アンサーをしていた。
三代目圓歌一門揃ってダメダメ。腐臭を放ちつつある。

その三遊亭天歌さんのYou Tube、すぐには聴きたくなかった。
自分でもよくわからないが、一介の落語ファンとして、態度を迫られるからであろう。
私でっち定吉だって、矛盾したことを無責任に書きなぐってるわけじゃないのです。
今のところは、当初推測した事実も含めて、全面的に天歌さん寄りだ。だが、いつまでもそうだとは限らない。
さすがに師匠の側に寝返ることはあり得ない。だが今後の出来事次第では、9割5分天歌支持なのが、2割減になる可能性はある。
それでもまあ、いつまでも先延ばしにできないので聴いてみた。

聴いて思ったところ。

  1. 師匠・三遊亭圓歌は、刑事で罰金刑、民事で損害賠償必至
  2. 落語協会会長(柳亭市馬)のトラブル解決能力に絶望
  3. 天歌さんのやりたいことにアンビバレンスを感じる(「落語界は間違っている」と「次の活動のために破門届が必要」との分裂)
  4. 落語の活動と、告発活動とに優先順位を付けたほうがいい

1はもう、あっという間にこうなる。
ただ問題は、これ自体が圓歌の大きなダメージになるとは限らないということである。
ましてや、廃業したりなんてまずなかろう。これはこれということ。

2はもう、本当にダメ。
市馬会長、引責辞任してもらっていい。もっとも今季限りという話も漏れ聞こえていたが。
任期満了退任の際は、反省の弁を述べてもらいたい。
こういうトラブル時は、馬風師のような、強引な人がまとめてきたのが落語協会なのだ。そのほうがいいなんてわけじゃないけど。
ただ、三遊亭遊雀師の芸協移籍は、馬風師だから実現できたところとも思う。
もっとも、先日亡くなった円楽師から牛肉もらって安請け合いしたのに、落語協会での襲名披露はできなかったのだけど。

市馬会長、協会を(短期的・短絡的に)守るため、対立構造に持ち込もうとしたところまでは、認めないが理解はする。
ただ、弁護士の前で言質を取られ(圓歌に指導する、従わなかったら理事クビ)てるところは情けない。
なら最初から、言葉は悪いがトカゲのしっぽとして、弟子でなく師匠を選んでもよかったのでは。
いい悪いは別次元として、なんの戦略もないではないか。

3は、天歌さんにほんのちょっと疑問を持った部分である。
法律上、伝統芸能の世界を崩しづらいのはその通り。
実際には、世間で「訴えてやる!」という行動の「1」に関しては法律が余裕で働くので、正確ではないのだけど。
師匠から破門届を受け取ることにこだわるのは、戦略としてちょっとおかしいのではないかな。
法律で闘いづらい部分に、法律を無理に持ち込む危うさを感じるのである。

もう40歳になっているのに、破門通知を受ければ他で活動できる自信があるみたい。
これはどういうことだろう。
年齢オーバーをものともせず芸協に潜り込む策があるのか(立川吉幸方式で、前座を1年務めるなど考えられる)。
あるいは年齢制限のない立川流か円楽党と、話がついているのか。
だとするなら、落語協会との関係性を、法律論的に解決する必要なんかないのである。
身分不安定なまま世間に異常な状態が知らしめられたことをもって、他の団体が受け入れても、どうということはないはずなのだ。
それが、「法律論とは異なる」ということである。もちろん行政手続とも異なる。
関係者が納得していれば、それでいいのだ。そしてもはや、圓歌にはそこまで妨害するすべなど残っていないわけで。

最後に4。
「落語界を変えたい」という怒りが強ければ強いほど、今後の噺家としての活動が歪む恐れがある。
「師匠をなにがなんでも破滅に追い込みたい」なら、仕方ない。だが方向性が1かゼロかだと、さすがに普通の噺家としての活動の余地はなくなりそう。
まあ、色のついた噺家として生きていく道もある。
かつて遊雀師の活動を絶対許さないと吠えた立川談四楼が、落語界のパワハラ体質に疑問を抱いたがゆえ、その象徴である天歌さんを門下に加えるという話でもあるかなと。100%想像ですよ。
受け入れる師匠が矛盾でないといえば、矛盾ではない
嫌なような、それが着地点ならこの際それでもいいような。

(2022/10/20)

志ん輔師については珍しくまっとうだなと思ったのだが、ブログの続きを読むと、ただの自己責任論に終始している。
やっぱりダメな人だねと、自分の評価に変わらない自信が持て、私は嬉しくなりました。
しょせん立ち位置は圓歌と一緒。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. いつも更新ご苦労様です

    市馬会長の対応に関しては会長の仕事に加えて寄席の仕事もやる大変さもありますし、他の師匠が会長だったらこうなっていたのではというたらればを考えても仕方ないので過剰に叩いても仕方ないとは思っています。ですが次の会長になる人にはパワハラの起きにくい環境整備をお願いしたいですよね。

    それにしても仮に会長が変わるとして誰になるんでしょうかね。花緑師匠が金馬師匠みたいに小さんの名前を叔父の当代小さん師匠から生前贈与して柳家小さん新会長…などと素人なりに考えはしたものの分かりませんね。

    1. いらっしゃいませ。
      市馬会長には、通常のビジネスセンスの部分においてつくづく失望しました。
      まるで素人です。
      最初から天歌さんの側に絶対的な正義を置き、それに沿った対応ができていないことで会長を批判する人も多いでしょうが、私はそういう見解ではありません。
      ただ会長の器じゃなかったなと。

      以前も書いたのですが、私は「たい平会長」に期待しております。
      正蔵師だと、落語界に混乱が起きるので。

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