国立演芸場の円楽一門会が行われ、関連するニュースが数多く出ている。
好楽師は、圓生と圓楽の名を何とかしたいということだ。
私が書いたとおりになってきたなとほくそ笑む。
すでに会長の座を降りている好楽師が任されているということは、そういうことではないかと。息子と弟子が。
さて、今日も新たに記事が出た。デイリー新潮。
円楽さんの急逝で一門が存亡の危機? 兄弟子・好楽は「アイツに怒られないようにしないと」
円楽師が亡くなったので客を呼べる人がもういない。円楽一門(円楽党)も潰れるのではという。
まあ、一理はある記事。
もっとも、両国寄席に通うファンが「円楽さんがいないとガラガラ」というのは脚色が過ぎる。
私など、ついに円楽師の高座には遭遇しなかったのだから。一度聴きにいったが札止めで。
だから、私には円楽師を抜いた前提で、円楽党の集客がどのぐらいなのか基準ができ上っているわけだ。
もっとも私も、本当に客の来ない円楽党の席というのは、それほどは経験がない。
先日も萬橘師を聴きにいったが、悪い入りではなかった。
好楽師はインタビューの中で、「若い人たちの中にもすごい子はいます」と語っているが、もちろん萬橘師は「すごい子」に含まれる。
43歳でも業界では「若い子」だと思うよ。
でも一方で、本当に客の来ない席がある事実は私も知っている。行かないけど。
神田連雀亭で二ツ目の落語を聴く際、つ離れしないことはしょっちゅう。
客が少ないときに出ている噺家は人気がない。これもまあ、おおむね事実。大雨で竹千代さんがトリなのに二人、なんていう日もあるにはあったが。
だが、客の少ない席が本当につまらないかというと、決してそうでもない。二ツ目さんはどんどん伸びていくから。
しかし、円楽党の両国・亀戸で人が来ない席は、真打主体だからな。正直、先は知れている。
そこに焦点を当てたとき、団体の今後に不安がいっぱいというのはわかるのだ。
円楽党の売れない真打も、聴いて腹が立つようなひどい人はそうそういない。
ただ、主役のいない席に放り込むと、自力ではどうにもならないのである。
新潮の記事に戻ると、歌丸・円楽間で「円楽一門が芸協に合流するという話も出ていたようです」という今さらな記述には笑ってしまう。
落語ファンなら、この議案が芸協の理事会で否決されたことぐらい、みんな知っている。
昇太師も反対したはず。
一時期は円楽師、世間を味方につけようと、笑点の挨拶でも合流をアピールしていたものだ。
芸術協会だって、協会の噺家をできる限り高座に上げなきゃいけない。そこにさらに人が増えるのは困るのだ。
だから理解はするけども、いっぽう芸協さんも視野がやや狭いなと思うところもある。
円楽党の客が呼べない噺家が芸協に合流したとする。その人たちは、どのみち芸協の寄席4場には、めったなことでは出られない。席亭が呼ばないから。
つまり、ライバルはさして増えないのだ。
原理主義みたいな統合論者だった円楽師が、具体的に寄席の顔付けをどう考えていたかはわからない。
冷静に考えると、芸協側にも、合流のメリットはあると私は思う。
どうなるかというと、一軍(新宿・浅草・池袋・国立)と、二軍(上野広小路・両国・亀戸)のそれぞれの強化となる。
兼好、萬橘、王楽、朝橘、好の助などは一軍入り。
他にも私の好きな人はいるが、好みだけで決めても仕方ないから、この程度にしておくか。
つまり、一軍はびっくりするほど多いわけではない。そしてそもそも、現在も芸協の寄席にゲスト枠で出ている人たち。
あとの円楽党出身者は、主に二軍の寄席に出ることになる。
逆に、芸協の人(二軍該当とは限らない)が、両国、亀戸に出るチャンスもある。
機会が増えていいのでは。
前座も、高座の機会が増えていい。
これはこれとして、芸術協会の昇太会長はなにを考えているか。
この人はなかなか策士だ。円楽師よりずっと。
昇太師が考えているのは、次のことと推測している。以前も書いたけど。
- 円楽党、立川流の二次団体固定化
- 相互の独立は保つ(芸協イズムの保守)
- 二次団体を用いた、落語協会との勢力均衡
結構、思う通りになっているのでは。
ただ、足りない部分がある。
芸協メンバーを、もっと両国に送り込まないと。
自分の一門から出してもいいのでは。すなわち、昇々、昇也である。
昇吉は自分の仕事で忙しいだろうからいいとして。
兄弟子の一門でも、今一つブレイクしていない芸人がいて、チャンス与えるにいいと思うのだが。
ちなみに、こんな記事が出ると「立川流はまだましだ」と思う人もいるのでしょうな。
立川流はすでに実質フリーの人と、二軍とに二極化していて、もはや二軍に対しては誰も手を差しのべない状況になっていると思う。つまり、もっと悪い。
定吉さん、こんにちは!
件の円楽一門の記事、私も読みました。
芸協との合併話がおじゃんになった昔話については、ヤフコメ欄でも結構突っ込んでいる人がいましたね。それに、「鳳楽に加えて好楽、円橘、それに六代目円楽の“四天王”が一門を支えてきました」ってのはいいとして、それこそ兼好、萬橘、王楽さんら若手(かな?)の名前が全然出てこないところも記事としてどうなんだろうと思ったりもしました。
それにしてもこのデイリー新潮の記事だけでなく、円楽一門関連、円生、円楽襲名関連の記事が近頃複数のメディアで散見されるようになったのはちょっと驚きです。平生落語の話題なんて芸能記事の片隅にすら載らないのに、やはり「人事」とか「組織」の話になると、世のサラリーマンの関心事がそうであるように、世間の耳目を集めるようですね。
全然話は変わりますが、今週は鈴本の夜の部(キョンまつり)、北とぴあの白鳥・三三二人会、かめありリリオホールの喬太郎・彦いち・白鳥三人会と、週に3回も落語(しかもほぼ新作)に行ってしまったのですが、北とぴあのトークでは、三三師匠の小三治襲名とか、白鳥師匠の圓朝襲名とか、客が期待する与太話が出て来て面白かったです。
私も円生は兼好師匠が、円楽は王楽師匠が襲名するというのは順当だなと思いましたが、今週3回も白鳥師匠を聴いて白鳥漬けになった私としては、エンチョウは白鳥師匠が襲名するのが良いのではと思ったところです。勿論「圓鳥」ですけど。
いらっしゃいませ。
そうですね。よく考えたら、笑点メンバー予想以外でこれだけ盛り上がっているというのも、いつにないことですね。
寄席に客を呼べるニュースではないんでしょうけど。
三三師の小三治襲名が出てましたか。私の予想では談州楼燕枝なんですけど。
圓朝は、遊雀師が「白鳥さんか喬太郎さん」と言っていたのが頭に残ってます。軽い話にこそ真理が宿るという。
つまりは、「創作力に長けた人が継ぐべき」ということなんだと理解しています。
円楽党について、今回のニュースなどを見て、いかに知られていなかったのかと再認識しましたが、逆に言えば好楽師、円楽師と二人も笑点のメンバーにいながら、記者たちは何も見えてなかったのかとも。
その中で、定吉さんの記事にあった、一軍二軍のくだりは極めて腑に落ちました。さらには立川流のところも。そういう目線で個人個人を見ていくのもありかと感じました。
いらっしゃいませ。
円楽党は立川流と違い、売れっ子も両国亀戸に出る組織です。
だから一軍二軍は明確ではなかったのですが、統合を言い出すと避けて通れなくなります。
二軍の人も、適切な出番に出せばいい仕事をすると思うのですけども。
ただ、二軍チームを組むと地獄になったりして。