神田明神「若手噺家を楽しむ落語の会」の桂鷹治(中・「堪忍袋」)

昨日の記事はアクセス多く、上々のすべり出しです。
100人以上入っていた座間の会のベテラン師匠より、つ離れそこそこの二ツ目さんの記事にアクセスが多いというのが、当ブログの読者の特徴らしい。
先週のかけ橋さんは話題の人だから多いのはわかるけど、どちらかというと通好みタイプの鷹治さんでこれ。

珍品の山号寺号を終え、実に自然にまた次のトークに移る。トークというか、もちろん次の話のマクラである。
コロナの第八波ですか。もはや名前も、ギリシャ神話からなんだか、わからないものがついてますね。
そのうち「い」型とか「は」型が出るんじゃないですか。
やがてコロナも、本当に風邪レベルになるといいですね。

また患者が増えたといっても、もう4桁ぐらいじゃ驚きませんね。皆さんそうでしょ。
これが始まった頃は、3桁でびっくりしてたわけですからね。随分世間も落ち着きました。
2年前は落語会も次々中止でした。私、最大で70連休というのがありました。
家内は外で働いていますから、日中は私ひとりです。
家内は帰ってくると、会社や上司の愚痴を言います。気に入らない上司はなぜか下の名前で呼びますね。
しかし家内は素人ですから、会社の話はオチもなく、まったく面白くありません。
でも家内が生活を支えてるのでちゃんと聞きます。合いの手がすっかりうまくなりました。
おかげで、会社を舞台にした小噺が結構できました。もっとも高座で披露する機会はありません。
家内が喜ぶだけです。

このあたりは聴いたことがある。2年前の堀之内寄席で。
ということは、三遊亭遊雀師から来た堪忍袋らしい。遊雀師に教えたのは、三遊亭竜楽師。
サゲを大胆に変えたスタイルである。

そしてコロナ禍にいろいろ家事をしたことで、鷹治さん、すっかり夫婦愛を語れるようになったらしいのだ。面白いことである。
結婚している二ツ目さんの場合、奥さんが支えているのはもう普通のこと。
でも鷹治さんぐらいの腕があったら、今後上々の未来が待っている。
受賞はないが、末広亭でクイツキに抜擢されていたから立派なもんだ。

また八五郎の家では夫婦喧嘩。金槌と鋸を出してきて闘っている。
大家が見咎め、話を聞く。
お互いわがままな夫婦のようだが、よく聞いてみるとそれぞれ事情はある。お前さんがたは仲が悪いんじゃない、良すぎるんだ。
なんでも堪忍袋というものがあるそうだよ。できるかわからないが、作ってみたらどうだ。
うまくできあがれば、不満はそこに吐き出したらいいだろう。

時事ネタを入れて遊んだりはしない、実にシンプルなつくりの堪忍袋。
シンプルだが実に面白かった。
なによりも古典落語なのに、それも人情噺でもなんでもないのに、目線が男の一方的なものでない。
脱線して語っていたとおり、梅干しを漬けるのは大変なんだという。コロナで実際にやってみたらしいが。
そんな生活の経験から、かみさんの気持ちがよくわかる作りになっている。
なかなか斬新。女性客は喜ぶだろう。
昔の噺家には絶対にできなそうな語りだ。まさに現代の古典落語。

かつて聴いたことのある遊雀師のスタイルのままだが、展開が同じなのにとても面白い。
まあ、それが古典落語というものだ。
珍品好きの鷹治さんも、教わった通りがいいと思えばそうするのだ。

できあがった堪忍袋に夫婦関係の愚痴を大声で叫んでいく夫婦。
なにしろ悪態をつくのだから、ここだけ切り取ったら不快感があっても別に構わないところ。
でも、悪態の段階から気持ちいいのが鷹治さんの個性である。家庭もきっと平和なのであろう。
堪忍袋を見立てているこの手拭いは、受付で売ってるものですって。

円楽師の話もしていたのを思い出した。
これは一席目のマクラだったかな。
鷹治さんは、最晩年の歌丸師の車椅子を押していたので、円楽師との接点は多かった。地方の「歌丸・円楽二人会」がよくあったから。
旅先でいつも、若手をみんな引き連れてご馳走してくれたという。オチが付いてたがあいにく忘れた。
まあ、オチのために渾身の力を込めて語るようなスタイルでないということである。

もう一席やりますねとそのまま次のマクラへ。相変わらず、実にナチュラルな語り。
続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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