三遊亭とむ「錦笑亭満堂」で来年真打昇進(抜擢)

落語会の模様をいいところで中断しまして、最新のニュースを。

円楽党の二ツ目、三遊亭とむさんが2023年7月真打昇進とのこと。
兄弟子の好一郎師に続き、また好楽一門である。
実際問題、現在の円楽党はこの一門で持っているのである。

円楽党は全般的に真打昇進が早い。
とはいえ好一郎師の昇進がデビュー13年で、両協会よりは若干早めとはいえ、このところだいぶ揃ってきてはいたのだ。
なのにとむさんは11年。
また昔のような最速昇進に戻ったのかと思うと、さにあらず。
どのニュースにも書いてないが、実は抜擢である。

何人抜きかというと、「1人抜き」。

兄弟子の鯛好さんが抜かれる。この人はデビュー13年。
53歳のおじさんなのだが、無慈悲にも抜かされる。まあ、仕方ないかな。
ちなみに鯛好さんの高座では、漫談がいちばん面白かった。
抜かされたあとで1人昇進かというと、あくまでも予想だが、3年後輩の楽天(円楽門下)と同時じゃないかと思う。
鯛好の鯛はたい平のタイ。
たい平門下の見習いだったのだが、前座になろうというとき、無慈悲にも落語協会に年齢制限ができて、やむなくたい平師の紹介で好楽門下になったのだ。
では、なぜ年齢制限ができたかというと、高齢ポンコツ前座が増え、楽屋仕事に支障をきたすようになったから。
結局、落語協会は正しかったのかもしれない。

抜かされるほうの話はいいや。

円楽党で、年功序列以外の要素で真打昇進時期が前後するのは、珍しい。
王楽師が数人抜いてるが、NHKを受賞した後なので、納得はしやすかろう。
とむさんはというと、なにも獲ってない。
まあ、それでもスター性は誰しも認めるところ。
なにしろ武道館で披露目をやるんだから。

関係者の間では、昇進は数年前から準備していたに違いない。
最近、笑点特大号の出演がやたら増えたのは、そういうことかと納得。
二ツ目になったあたりはよく出ていたのだ。落語も披露していた。
だからいったんどこかで、制作側のお眼鏡にかなわなくなった時期があったはずだ。
珍しいことではない。このたびNHKを獲った立川吉笑さんだって、頑張ったのに呼んでもらえなくなったそうで。

外で頑張って、笑点に戻ってきたわけだ。
なにで実績を上げたのか、私にはよくわからないのだけど。
大阪のラジオ(MBSヤングタウン)でパーソナリティを務めているのは知ってるが、聴いたことないんだよな。
radikoプレミアムを今月復活させたので、このニュースを取り上げる今度の日曜日は聴いてみる。

私には、とむさんの本業のほうがピンとくる。
副業よりは知っている程度だけど。
亀戸でたまに聴いている。
新作落語に定評のある人。1年半前に聴いた「落語免許センター」は面白かった。
他には、「よいしょ太郎」「祝ハンカチ」「おじさんカフェ」など聴いている。
古典では、都々逸親子が面白い。
ちなみにとむさんのWikipediaには、こう書いてある。

「持ちネタの中では、都々逸を得意とし、『都々逸親子』と題した噺などがある」

「と題した」って・・・
あるんだよ。そういう噺が。
新作落語メインなのに、そちらにはまったく触れていない。

さて、昇進後の改名が盛り上がっている。
錦笑亭満堂(きんしょうていまんどう)だって。
春風亭小朝師が付けたと聞けば、なるほどねと。
もっとも、小朝門下の「橘家圓太郎」「五明楼玉の輔」「蝶花楼(桃花)」は、いずれももともとある名前。
桃花だけオリジナルだが、蝶花楼は「馬楽」という名跡とともにもともとある。
最近芸協で二ツ目に昇進した桂蝶の治さんの「蝶」は、見習時代に師事していた馬楽(故人)に由来している。

錦笑亭満堂は、亭号も名前もオリジナルだ。
オリジナル亭号の誕生は、弁財亭(和泉)以来。
その前のオリジナル亭号って、(外で勝手にやってる人は除き)よくわからないのだが「いなせ家」じゃないのかな。
いなせ家半七師も小朝門下。

円楽党に三遊亭以外がついに登場するわけだ。
もともと好の助師が昇進時、林家九蔵になる予定だった。
これについて正蔵師、というより海老名香葉子から苦情が出て、ポシャったのはご承知のとおり。
元海老名の婿である小朝師によって、前例が破られるわけだ。
それがどうしたかというと、どうもないけど。

小朝師は、林家九蔵であった好楽師にとっては甥の筋に当たり、一門の後輩としてよく好楽師のマクラにも登場している。
とむさんにとっても、好楽師に紹介してくれた恩人のため、小朝師について語ったマクラを何度か聴いた。

末高斗夢時代も覚えている。
面白い芸人だったが、あの頃噺家が向いてるなんてつゆほども思わず。
思った人もいなかろうが。
ちなみに「いい芸人だったから噺家になって当然成功」ということはない。今芸人上がりなんてもう、すごい数いるもんな。
それより、前座のこうもり時代を亀戸や両国で見ておきたかったなと今にしてちょっと思う。

(追記)

「満堂師匠 弟子を取ったら 小満堂」

作成者: でっち定吉

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6件のコメント

  1. とむさんが抜擢真打とみなされるなら、
    芸協の柳雀〜明楽さんまでも抜擢真打にカウントされてしまいますね..
    風子さんはまだ師匠が昇進に同意してないからだそうで。
    王楽さんが抜擢だったのは初知りでした。
    五代目円楽さんが長くないということもあったのでしょうか。

  2. お初にお目にかかります。圓楽党は好楽師匠のところも勿論多大な尽力をなさってますが、圓橘師匠の御一門を忘れてはいけないと思います。揚げ足取りだと思われなたら、お詫び申し上げます

    1. 忘れてはおりません。
      圓橘師は一度しか聴いてませんが、萬橘師は目当てにしてますよ。
      朝橘師も、亀戸の楽しみにしてますし。
      まあ、このところ確かに好楽師ばかり聴いていて、バランス崩れている自覚はありますが。

  3. 最近落語にはまった60ジジイの初コメントです。ヨネスケチャンネル(開始4:30〜)で、(https://www.youtube.com/watch?v=7nbmCCIj8MY)鯛好さんは「真打は2年半延ばしてもらってもらって実力を・・」)とのことでした。その意味では単に抜かれた、では無いようにも感じます。とむさんの件とは若干ずれたコメントではありますが。

    1. いらっしゃいませ。
      私もすでに観ていますよ。
      でも、内容を修正する必要は感じませんでした。
      香盤が抜かれるのは事実です。
      当ブログの読者の皆さまの多くもご覧になってるんじゃないですか。
      そして私が、鯛好さんが次の楽天さんと一緒の昇進だと当てたことはスルーですか。

      たまたま知った情報をもって、人に「どうだ知らなかっただろう」と言う場合、よほど気を付けたほうがいいんではないかと。

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