正蔵喬太郎ガチンコ二人会 その4(柳家喬太郎「カマ手本忠臣蔵」とそちらのマクラ)

二席目の喬太郎師は、「古典落語やろうと思ってたのに」などと叫んでいたが、すでに早いうちにネタは決めていたらしい。
「カマ手本忠臣蔵」である。
一応、時季はドンピシャなのだ。
忠臣蔵ネタでは「白日の約束」という噺もあるが、ホワイトデーの時季。
カマ手本忠臣蔵を掛けるために喬太郎師、ゲイ界隈の話と、芝居の話をそれぞれ出していた。
扱う題材的には笑っていいか微妙に思えるが、大丈夫だと思う。差別要素はないので。
ちなみに昨夏、師の「芝カマ」を聴いた。
こちらは、魂の震える人情噺で、もっともっとメッセージ性も強い。
師の番組でかつて聴いたカマ手本忠臣蔵だが、正直、大した噺だとは思っていなかった。
だが、やはりライブにおいては、客席の空気というものがデキを大きく左右する。
喬太郎師が行けると判断した空気。
空気にあおられ、とても楽しかった。

毎年来てる鶴川ですが、私実は、今年通ってましてと喬太郎師。
緑山スタジオにここから向かっていたんです。今年お話をいただき、ドラマに出たんですね。
「妻、小学生になる」というドラマで。喫茶店のマスター役です。
観ていらした方にはおおむね評判良かったんですが、数字は伸びませんでした。
どうもタイトルから、ロリコンものと思い、絶対見たくないと思った方もいたようです。
でも、日本語よく考えてみてくださいね。「小学生、妻になる」だったら真のロリコンものですけども。
石田ゆり子さんは本当に綺麗な方でした。

前半はまだまだ、本編がどこへ転んでもおかしくない内容。
街にはなくてはならないものがありますね。
池袋よりはみなさん、新宿のほうがピンときますよね。新宿でなくなってほしくないのは、アルタですね。
それからアルタの近所にある八百屋。一度も買ったことないんですけど、大都会の真ん中の八百屋、なくなって欲しくないです。
それから歌舞伎町ですね。

思い出したけど、1本目のマクラでもって池袋西武がヨドバシになるらしい嘆きや、昔あった三越のライオンの行方を知ってる弟弟子がいますなんてのも語っていた。
2本目も、マクラがつながっているのである。

ここからどうゲイ界隈に持っていったのだったか。
鈴本のそばにあるピンク映画館の話。
芸協の後輩で、誰とは言わないがピンク映画に出演していた人がいると。
あるとき鈴本の楽屋口付近で、瀧川鯉朝ほか芸協の仲間に会った。なんでも、その仲間の出ているピンク映画を今から観にいくそうだ。
そのやり取りを見ていたのが、太神楽の柳貴家小雪さん。楽屋で喬太郎師に尋ねる。「どこのオチケンの人たちですか」。

私は今ピンク映画を観ることはありませんがと喬太郎師、ひとつ観たいタイトルの映画がありました。
「むっちり討ち入り 桃色忠臣蔵」ってこれ、観たくないですか。
神田伯山に会ったとき教えておきました。

この映画を検索してみたら、さらに楽しいタイトルのピンク映画が多数出てきた。
当ブログの品位を維持するため、取り上げるのは断念する。

映画館は、ハッテン場でもある。
海外でそんなところに迷い込んでしまい、他の客に手を握られる五代目圓楽小噺。これはフィクションらしいと注釈付きで。
サウナもハッテン場になる。
白鳥、彦いちのサウナ好き2名が、そんなサウナに行ってしまう。
ふたりが和気あいあいとしていたら、通りすがりのオッチャンが、「おっ、いい雰囲気だな」と言ったという。

私喬太郎なんかは、そんな世界に無縁と思われるかもしれませんが、こう見えて、こんな白髪頭の男がいいという人もいるわけです。
フケ専ですね。

芝居のほうの話。
落語協会の鹿芝居でかつて忠臣蔵を演った。前座時分にお手伝いに行った喬太郎師。
塩冶判官は五街道雲助師。
四段目切腹の場で、あろうことか刀がポキっと折れてしまった。
雲助師楽屋を向いて、「折れちゃったよ」。
鈴々舎馬桜師が袖から「知らねーよ」。

落語家で忠臣蔵やったらどんなキャストがいいですかね。
今の会長柳亭市馬は押し出し強く大石なんかいいんですが、ただすぐ歌いたがる癖がありまして。
内匠頭は柳家花緑なんていいですね。
吉良は悪い人で、談春ですね。
あと、志らくの名も出てた。
喬太郎師ご本人は、誰の役がいいって言ってたかな。

マクラは非常に濃く長いもので、正直ちょっと疲れ気味になってきた頃ようやく本編へ。
長くてもやらないわけにもいかないようで、どうも大変な噺である。

ねえねえ吉良どの、と甘えかかる浅野内匠頭。
吉良のほうは、酔ってこの男を抱いてしまったのを後悔している。
痴情のもつれ、とも違うけどもとにかく鮒ざむらいから松の廊下の刃傷沙汰が起こる。

「これが松の廊下の真相でございます」

そして赤穂浪士も主君に「LOVE」の忠誠を誓う輩ばかり。
討ち入りではなく心中であり、みな返り討ちにあって全滅。
しかしその後の歴史はちゃんとつながるのであった。

「これが討ち入りの真相でございます」

なんだか、今日のブログ記事は構成からなにから、大失敗した気がします。
喬太郎師のバカ噺に挑もうとした私こそ、切腹すべきなのです。

楽しすぎるぐらい楽しい会でした。
おかげで、しばらくどこに行く気にもなりません。

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作成者: でっち定吉

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