2022M-1グランプリ(上・閉塞感からの解放とツッコミのボケ化促進)

落語のブログ、でっち定吉落語日常&非日常です。
毎年恒例、M-1グランプリについて。
毎年これだけ見にきてくださる方も歓迎です。

今年はウエストランドの圧勝で決着だった。
またしても外した。
決戦で私が自信をもって推したロングコートダディには、なんと1票も入らないのであった。
すごく面白かったのになあ。

さて、今回感じたテーマが4つ。

  • 人を傷つけない時代を破壊する象徴としてのウエストランド
  • ツッコミのボケ化進行
  • (キングオブコント記事で触れた)混乱を拡大する芸の時代
  • コントが漫才の上位に立ちつつある

ウエストランドを審査員が圧勝させたその意味は理解している。
笑いのプロからすると、閉塞感漂うこの世の中に、彼らが風穴を開けてくれるとそう感じたのだろう。
私なんか、いつも書いているのだが現代は閉塞感でいっぱいとは思っていないし、ウエストランドが突破口を開けるとも思わないのだけど。

ちなみに今年も吉本芸人優勝ではないが、吉本興業としてはまるで気にしていないだろう。
むしろ、吉本と最も遠いタイタン(なにしろ爆笑問題の会社だ)にまで、吉本の息の掛かった芸人が生まれたわけで、むしろウハウハではないかなと。
吉本は今、あらゆる番組に息の掛かった他社芸人を抱えている。また一組増えたのだ。
これは嫌味でもなんでもありません。

もうひとつ感じたテーマが、最近落語にも確実に流れてきているのを感じるのだが、ツッコミのボケ化。
以前からボケと同じ方向を向くツッコミというものはあったのだが、少々特殊な漫才だという感があった。
最近は、むしろボケを激しく否定せず、一緒にボケて終わるツッコミのほうが主流である。
この大会で、1stラウンドをトップ通過したさや香が唯一、従来のツッコミらしいツッコミ。実際にはだいぶ変種だったのだが、他と比較すると普通のツッコミに見える。

ここに、ウエストランド優勝という事実と、真逆のベクトルをみるのは私だけであろうか。
漫才は、ボケをツッコミがアシストするようになっているのである。つまり、コンビ間の対立要素を極力持ち込まないようにするのが、客にとって快なのだ。
時代が調和を重視するようになっていることが漫才のスタイルにも表れているのに、なぜか漫才のテーマについてだけ、審査員は調和を打ち破るネタを期待している。
矛盾してない?

それどころかもっと深刻な矛盾もある。
ウエストランド自体が、ツッコミがボケを邪魔しないスタイルの最右翼なのである。
ツッコミ河本は、井口をほぼ否定しない。悪口言いたいだけでしょとは言うものの、悪口の内容自体はほぼ否定していない。協力しているのである。

(※河本は一応、ボケですね。ちょいちょいわからなくなる)

いや、なにもそんな裏傾向まで考えたうえで、最も調和に満ちたロングコートダディを勝たせるべきだったなんて言いませんよ。
大会の審査そのものにケチを付けないのが私の信念。思うところがあっても。

続いてみっつ目のテーマを掛け合わせると、ロングコートダディが優勝できない理由は腑に落ちる。
キングオブコントで感じたとおり、「混乱を拡大させていくコンビが強い」ということ。
落語のように、回収はしていかないのだ。
もっとも落語も、今年のNHK新人落語大賞を獲った立川吉笑さんの「ぷるぷる」や、昨日書いた弟弟子笑二さんの「あたま山」のように、回収をしていかないネタの時代になっていくのかもしれない。
キングオブコント優勝のビスケットブラザーズには少々納得がいかなかったが、今回私も全体で2位の評価をしたヨネダ2000のような、回収を一切狙わないネタは楽しく観ることができた。
回収しようがしまいが、その中での好き嫌いはあるわけである。

最後のテーマは、キングオブコント芸人のM-1浸食。
これは数年前からすでにその萌芽が見られたのだが、今回ロングコートダディが通過し、男性ブランコが4位であったことで顕著になった気がする。
コント芸人のほうが、レベルはすでに高くなっている。
もっとも、ロングコートダディが敗れたように、審査の側にコント的漫才をよしとしない感覚がまだある。
まだまだこの点仕方ない気はする。

キングオブコントは一杯やりながら見ているのだが、M-1ではアルコールを控えている。
この記事を書いている今、一杯やってますけどね。
センスのない私の点数です。

 

カベポスター 92
真空ジェシカ 93
オズワルド 91
ロングコートダディ 92
さや香 94
男性ブランコ 97
ダイヤモンド 88
ヨネダ2000 96
キュウ 90
ウエストランド 91
決戦 ロングコートダディ

私が今回、最も推した男性ブランコは4位でした。これは面白かった。
昨年のロングコートダディと同じ順位。

断っておくが、好き嫌いは廃して採点しております。
大好きなロングコートダディだって、1stラウンドでの点数は高くしていない。
逆に「さや香」は94点と高めだが、特に好きになってはいない。
ウエストランドの91点というのは、別にマイナス評価というほどでもなく。こんなもんだということ。

続きます。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 更新ご苦労様です。うゑ村です

    私も男性ブランコが個人的には高得点でした。安易に一緒にするものではないのかも知れませんが見えないもの(音符)をそこにあるかのように演じるのは落語の蕎麦を食べる仕草みたいだなとも感じました。

    あと、話題になっていた新審査員の山田邦子に関してはトップバッターのカベポスターが84点とあまりにも低すぎたこと、その84点に対して何が悪かったのかという説明が不十分だったことが若干納得行かなかったのですが初回ということで妥協することにしました。そのあたりのことについても後編で書かれると思っているので期待しています。

    1. いらっしゃいませ。
      お目が高い。まさに音符運びについては落語を連想しましたよ。
      もちろん書きます。そして、見えないものを見せている芸を「漫才じゃない」論争に巻き込むとしたらおかしいことも。
      邦ちゃんについては同意見です。
      ちょっとどうかなと思いつつ、でも仕方ないよなと。
      これも明日出します。

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