浅草演芸ホール4 その3(古今亭今輔「雑学刑事」)

ボンボンブラザースを挟んで昼席のトリは古今亭今輔師。
夜トリが多かったが、出世して昼トリも務めている。別に昼のほうが偉いわけじゃないけど、芸協はそういうところがある。

私も52歳になりまして、というと必ず変な空気になりますが。
大学を一浪し一年落第し、中退した3冠王です。
東海大学の名はいつも出さないね。昇太師の後輩で、柳雀師の先輩なのに。
オチケン勧誘の話。
それからアタック25に出て準優勝した話と、もう一度オーディションに出て落とされた話。ここまではよく聴く。
しろうと時代、クイズミリオネアのオーディションに直前で落とされた話。これは初めて聴いた。
賞金の使いみちが劇的でなかったからだって。

本編は雑学刑事。
以前浅草お茶の間寄席で出していた録画は繰り返し聴いた。
中身はほぼ一緒だが、変わらず面白い。

みずほ銀行に立てこもった強盗犯を、伝説の雑学デカが確保するバカ落語。
強盗に、「初めて銀行強盗をした人は誰でしょう」など難しいクイズを出して追い詰める。

古典落語も、ちょっとした教養が含まれていることで厚みが増す。こんなことは当ブログでも繰り返し書いている。
そして新作落語も、教養(というよりトリビア)が入ると楽しくなる。
目出し帽を「バラクラバ」というとか。クリミア戦争で生まれたグッズ。
南大西洋に浮かぶ、最も他の陸地から遠い孤島の名は「トリスタン・ダ・クーニャ島」。

今輔ファンの私にはとても楽しかったが、この日の客にはそれほどハマらなかった様子。
トリの師匠に合わせてやってくるのが、寄席の一般常識と思うのだけど、浅草の場合は「たまたま来たらこの人だった」みたいだ。
今輔師は新作を求める客の来る、落語会で聴きたいなと。

夜席が始まるまでに、ブログに用意しておいたネタ帳を埋める。
初めてこんなことしてみた。
夜席の仲入り休憩中にも埋めております。

夜席の前座は桂れん児さん。
NHKのドキュメンタリーで取り上げられていたので顔と名前は知っている。歌助師の弟子で、前座香盤では下から3人目。
れん児の「児」の字は歌丸一門に伝わる前座の名。「れん」は本名の一部だろうか。

権助小噺の「お山は火事だんべ」を振ってから子ほめへ。
一応世辞愛嬌でつながってるけど、こんな入り初めて見た。芸協にはあるのかな。
基本に忠実な、まるで突出したところのない高座であった。
マイナス点がないが、プラス点もなくて、将来性が現時点ではまったく予想できない。
意外とこんな人はいない。
まあ、ウケたがって余計なことをしない点、ややプラスではないか。

二ツ目は袴姿の桂竹千代さん。
今年5席目。よく聴いている。
そういえば、今年一番聴いたのは誰だろう。好楽師も数えたら5席だった。
このあたりがトップタイみたい。最近あんまり特定の人に集中してないようだ。

昼席に出た人に入れ替わりで聴いたところ、昼はそこそこお客さんが重かったということでした。
たぶん今輔師から聞いたのだろう。
昼から残っている方どのぐらいいます? まあまあいますね。
でもちょっとまだ重いですね。

前座がほぐしていないのでそんなもんだろう。
コロナ禍の、少ないお客の話。
たったひとりのお客さんが、1列目の隅に座っている。やりづらい。
カミシモ振って反対側向いてる間に逃げられてしまうかも。

このマクラは連雀亭で聴いた、
私も経験した、客2人の席では使わなかった気がする。生々しいからね。

重い客を爆発させようと考えたらしく、新作落語。
昨年連雀亭で聴いた「サオリ9号」。
サオリにフラレて指輪がムダになったので、サオリと付き合おうとするバカ男の噺。
東京新作に欠かせない、飛躍もちゃんとある。
楽しい噺なのだけど、客が盛り上がったかどうかはよくわからない。

夜席最初の色物は「まつトミ」。
名前も当日知ったばかりの女性漫才コンビ。東北で活躍中のベテラン。
今年吉本を辞めたらしい。
赤と青のスパンコールで登場。ツカミはいいがコケたら取り返しつかないわけで、すごい度胸。
青が東北弁丸出しのまっちゃん、赤がちょっと綺麗な感じのトミちゃん。
ボケとツッコミが明確に分かれていないタイプの漫才。
ふたり合わせて120歳。

芸協の色物香盤に名前はないのに、この席には顔付けされている。
だが3日目のこの日が初日。法事だとか言ってたけど。
浅草演芸ホールはまったく初めてなんだそうで。しかし気負ったりしない。

二人揃って「プンプン」とさとう珠緒みたいなブリッコをするギャグがある。
ネタはなんだったか忘れたけども、緩くて寄席向けだし、なんだかいい感じ。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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