三遊亭好楽、落語協会の定席に顔付け どういう意義があるか

三遊亭好楽、兄弟子の柳朝追善興行で40年ぶり落語協会定席に出演 木久扇も喜ぶ…浅草演芸ホール2月中 (スポーツ報知)

地味に見えてインパクトのあるニュースが出ている。
こういうの、報道前に気付いて当ブログが一番乗りだったらさらにナイスなんですけどね。
浅草演芸ホールの顔付けは出ていたわけだし。

地味なニュースに見えるのは、「円楽党の芸人が寄席に出る」こと自体はとうに珍しくなくなっているためである。
ただし、それは落語芸術協会のほう。
末広亭には円楽党交互枠があるし、浅草でも披露目の席などでは、落語の協会に加入していない色物芸人まで多数上がる。
好楽師だってたまに出ている。
好楽師、芸協に仕事をもらうこともあるようだ。亀戸のマクラで、そんな仕事で青森に行った話(宮治師との二人会)もしていたっけ。
広小路亭のしのばず寄席にもよく出ているが、これも永谷商事というより、芸協からの依頼なのかもしれない。

いっぽう、落語協会の寄席には、他団体の演者が出ることはめったにない。
もともと芸人が多く、よそから引っ張ってくる必要がないという前提はある。
鈴本演芸場など、他団体が出ることは皆無。ここは厳しくて、31日の余一会にすら出演禁止。
なので落語教育委員会を鈴本の余一会でやるときは、メンバーの三遊亭兼好師が出られない。

昔は露の五郎兵衛(当時、五郎)が落語協会の客員になっていたそうだが、この後は似た例すら知らぬ。
現在の落語協会では、直営の黒門亭にたまに上方落語家が出るぐらいかな。
そういえば、黒門亭をやってる落語協会2階の落語会には、芸協に移籍した春風亭かけ橋さんも出た。
落語協会としては、この程度は大したタブーでもないらしい。

先日亡くなった六代目円楽師が楽太郎時代に馬風会長を訪れ、円楽襲名を協会の寄席でやらせて欲しいと頼んだ。持参したのは牛肉。
食い物に弱い馬風師は思わずうんと言ってしまったが、理事会に掛けたところ拒絶されたという。
結局円楽襲名は、古巣の落語協会でなく芸術協会の寄席でやった。

そういう経緯を把握して読むと、今回のニュースはなかなかインパクト大なのである。
好楽師は、別に落語協会と喧嘩して離れたわけではない。
師匠・彦六の没後、五代目圓楽を頼ったのである。
すでに林家九蔵として真打になっていたので、師匠につく義務はなかった。義務はないが、わざわざ移籍したのだ。
好楽師が協会で人望が高かったため、弟子の兼好師は落語会で協会の師匠と一緒になったとき、ずいぶん得をしたという。
談志の弟子がみな嫌われた立川流とはそのあたりがまるで違うのだ。

これが、円楽師が唱えていた協会・団体の統一への筋道に乗っていると思う人も多いだろう。
好楽師にも、そういう考えはあるようだ。
私は全然そうは思わない。好楽師出演を機に、落語協会の寄席にも風穴が空くとは思う。でも、それはそれ。
落語協会に円楽党枠ができるとか、そういうことはないはず。

別に私は団体統合反対派ではありません。
協会員以外が寄席に出るのも大歓迎。
ただ、統合の労が多いわりに、得られるものが多くないなと思っているのです。そもそも、現在落語協会と芸術協会が闘っているわけでもないので、統合の必要性を欠いている。
むしろ、将来の統合というものをぼんやりしたフィクションととらえつつ、落語界が協調していくのがベストだと思っている。

浅草演芸ホールの顔付けを見てみる。
2月中席昼、「五代目春風亭柳朝三十三回忌追善興行」だ。
トリは当代柳朝。この人がトリを取るのも珍しい。
大きな一門であり、登場する人も多い。
落語初心者にはわかりにくいだろうが、林家木久扇、三遊亭好楽(林家九蔵)、春風亭一朝など亭号に関わらずみな一門。
橘家もいる。
紙切りの林家正楽師も。
それから、柳朝の師匠である彦六、つまり先代正蔵の縁で、当代林家正蔵師も顔付けされている。
海老名家にとっては先代正蔵は、名前を強引に持ってった人でもあるのだが、義理堅い正蔵はちゃんと亡くなる前に返しにきている。

好楽師は毎日出演。
これはもちろん暇だからではなく、かなり早い段階でスケジュール調整があったのに違いない。

好楽師は、仲入り休憩後のクイツキ翁家勝丸師匠の次の出番である。
面白いことに、その次の出番が、木久扇、正蔵の交互。
つまり、好楽師の後に正蔵師が上がる日が半分あるのだ。
ご承知の通り、弟子の好の助が真打になる際、「林家九蔵」の名を巡って闘った因縁の相手である。
あの闘いで、名を上げたのは好楽師のほうだったようだ。
まあ、少々名を下げても、正蔵師も充実一途であるが。

楽屋で何の話するんだろう。
別に日頃から敵対しているわけでもないとは思う。
なにしろ、笑点を石もて追われる三平に、最も優しい言葉を掛けていたのが好楽師だった。
落語界全方位外交に余念のない好楽師、常に穏やかだと思う。
どうせなら、三遊亭好楽・林家正蔵二人会でもやって欲しいものだが。海老名のおかみさんがいる限りはダメかね。

ヨネスケちゃんねるも来るんじゃないか。
馬風師も顔付けされてるし、ヨネスケ師が取材するぐらいは問題ないだろう。

 
 

作成者: でっち定吉

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4件のコメント

  1. 鈴本の芝居では数年前から上方の露の新治師がさん喬師が呼んで顔つけされてますね。

    1. ああ、毎年のさん権の芝居ですね。
      まったく頭にありませんでした。
      情報ありがとうございます。
      そういえば、講談協会の人(琴調先生以外)も出る芝居があったような。
      意外と鈴本も例外があるんですかね。

  2.  好楽一門の圓生襲名に半歩、近づいたかなという印象を持ちます。落語協会の「黙認」があってこそ襲名の道が開ける。

     将来、円楽一門会がおかしくなった時、圓楽の名は芸術協会にいったとしても、圓生は落語協会が取り戻したいんじゃないだろうか。六代目円楽は芸協に寄りすぎていた。それを好楽師匠が路線修正している。芸協の昇太会長の戦略に飲み込まれないためにも。そんな分析はどうでしょうか。

     いつも読んでいるだけの通りすがりの意見です。

    1. ご意見はいいのですが、「通りすがり」はおやめください。匿名と同じです。
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