神田連雀亭昼席5(上・昔昔亭喜太郎「もう半分」開口一番なのに)

締め切りを終えたのでちょっと出掛ける。
現場の記事とは別に、朝から1本ブログのネタ書いてたのだけど、なんと仕上がりませんでした。
時事ネタなので、連雀亭の連載の途中で割り込むかもしれません。

 

もう半分 喜太郎
千早ふる 萬丸
鈴ヶ森 一刀
真田小僧(通し) 小もん

今日も神田連雀亭の昼席に出掛ける。
トリが2019年以来になる春風一刀さん。
2018年に黒門亭で聴いて激賞した。
出世間違いなしと思ったのだが、その後そんな評判は聞いていない。
2019年にここ連雀亭で聴いた一席は普通だった印象。
さてどうでしょうか。

前説は三遊亭萬丸さん。
ちょっと面白いこと言ってた記憶があるが忘れた。
今日ちょっと変更がありましてと言って、「小もん」が出ているメクリを返す。
小もんさんはトリで出ますとのこと。トップバッターは昔昔亭喜太郎さん。

喜太郎さん、今小もんさんも一生懸命こちらに向かっていますからとのこと。
遅刻なんだ。
遅刻はいけないが、連雀亭ではしばしば「まだ○○さんが来てません」を見る。
私はすでに、3回目の遭遇。でも朝のワンコインならまだわかるけど、昼席でかよ。

喜太郎さん、とっとと本編に入る。
永代橋のたもとに小さな居酒屋がありまして、と。
え、なんの噺だろう。まさか開口一番で「もう半分」のわけないよなと思ったら、本当だった。

なにを考えてるんですか!
しかし実に結構な一席だった。
どうせトップバッターではまだ客席も温まってないんだから、こんな噺のほうがいいのかも。
本来の二番手だったらできる噺というわけでは、もちろんない。

ちなみに日本の話芸やTBS落語研究会ではたまに出るけども、現場では初めて聴いた。二ツ目からとは。
もちろん大ネタである。

いかにも爆笑ネタを掛ける顔をしている喜太郎さんだが、もう半分をふざけずじっくり語り込む。
誰に教わったんでしょう。
赤ん坊は女の子だった。女の子なのに、死んだ爺いそっくり。
このほうがより怖いかも。

クスグリは地に返っての、「女の人は怖いですね。(女性客に)あ、ごめんなさい。怖い女の人がいますねということです」ぐらいかな。

50両盗られた爺いは、極めて腰の低い人物。
この造形は、この人しか描けないと思う。
そして身投げの際、居酒屋の亭主夫妻を恨むだけでなく、酒グセがよくないのにふらふら入ってしまった自分自身を強く憎む。
居酒屋夫婦のほうは、長年の夢が50両で叶うと思って、つい魔が刺したという感じ。特に亭主のほうは。

実にシンプルな作りだが、そこがいい。力作だった。

二番手は三遊亭萬丸さん。
最近よく遭遇する。
そんなにいい高座でもないのだが、ただこの人を聴いて嫌な気分にはならない。嫌な気分にするような人は避けるけど。
あるとき突然バーンと突き抜けそうな気はしている。
登場人物のハネっぷりが、ちょっとだけ大きいかもしれない。
大きいアクションが合う人もいるけど、もっと地味にやることで、ご本人の明るさがフルに活きそうな気がするのだが。

こういうの、決してご本人に向けて書いてるわけじゃないです。
そう感じたという、私基準の話である。
先日ある前座のビフォーアフターをきっかけに、当ブログから、「演者を導いてやろう」という意識の一掃を決意した。
明日出すかもしれない書き掛けの記事とも関係している。

生まれ故郷の鴻巣は、埼玉全土から免許更新に人が集まるところ。
上毛かるたにならった埼玉の郷土かるたの話から、百人一首へ。

千早ふるなのだが、手を入れている。
「百人一緒」だと思っている知ったかぶり隠居なのだが、まるで無知でもない。
在原業平の名も、その歌も知っている。だが、わけは知らない。
なんでも知ってる隠居なのだが、古い知識は脳からお腹のほうに移っているので、取り出すのに3日掛かるんだそうだ。
これを無理矢理取り出して八っつぁんに披露する。

竜田川からは一緒。
一瞬、隠居が正しい歌のわけを教えてくれるんじゃないか、そう期待したのだが。
そこまでやるわけじゃないんだ。

ただ、「とは」から千早の戒名なんかではなく、オリジナル解釈に入る。
「とは」は詠嘆だという。つまり本来の意味を隠居が解説している。
しかし八っつぁんは疑問に突き当たる。
「からくれない『で』水くぐるとは」になるんじゃねえんですかと。

改作は難しいね。
拍手はパラパラでした。そんなに悪かったわけでもないけど、なんだかしっくり来ない他の客の気持ちもわかる。

(別のネタを挟んで)続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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