悲惨な土曜日の口直しで、予定していなかった月曜の亀戸梅屋敷寄席へ。
ああ、確定申告しなきゃ。
新聞記事 | 楽太 |
宮戸川 | 好好 |
辰巳の辻占 | 愛楽 |
(仲入り) | |
胡椒の悔やみ | 好一郎 |
四段目 | 萬橘 |
大満足でした。落語で受けたショックは落語でしか取り返せないですね。
この日からマスクフリー解禁だが、街行く人のマスク着用率は90%超えていた。
もちろん、自主判断の結果でありなんら問題はない。
末広亭は、引き続きマスク推奨だって。またよくわからない基準。
受付にいる前座の楽太さんに、円楽党のマスク基準訊いてみたが、「いやーわからないですよー」だって。
正直だね。言い方が噺家っぽい。
雨降りなのに、大盛況。
萬橘師もすっかり人を集める噺家になって。
それはそうと、高座の眺めがなんだか違う。
床一面が緋毛氈で覆われているのだ。そして、後ろは濃紺のカーテン。
なんだかドレスアップしている。
このホールで最近よく落語会をやっている関係なのだろうか。
開口一番、前座の楽太さんはなんだか一皮剥けた。
もともと上手い人だが、弾けている。
弾けていても、悪ふざけではなく、明るく楽しい。
前座さんが急速に上手くなるのを見るのはいいものだ。
三遊亭萬橘の二番目の弟子、楽太です。
萬の字も橘の字も入っていませんが、六代目円楽の弟子でした。
最後の弟子なんです。それがどうしたって話ですが。17歳で入門しました。
師匠に教わりました。刑法犯はダメだよ。
不倫はいいんだなって。
いい師匠でした。いえ、今の師匠もいいですよ。今日は円楽に教わった新聞記事を。
とにかく楽しそうに喋るので、客も一緒に楽しくなるのだ。
先日NYタイムズを見ていましたら・・・ここも師匠に教わった通りです。
と振って、ドライブ猿の小噺。
嫌味がなくて、この時点で師匠より楽しい。本当です。
楽太さんの新聞記事は半年前、円楽師没後に聴いた。
その際もよかったのだが、短期間でさらにパワーアップ。
前回、「逆上ってなんです?」のあたりだけ不自然に思ったと書き残している。
友達が死んで、普通に会話を交わすのは不自然。
だが、自力で不自然さを解決している。
一般的に考えられるやり方だと、友達が死んでショックを受けているはずの八っつぁんの心的状況を描写する。
例えば師匠・円楽の場合、泥棒が捕まったと聞いて手を合わす。
だが楽太さんの採った手法はベクトルが逆で、ナンセンス色を強くする。
そうして人の生き死にを軽く扱っておきつつ、よそでやってくるという八っつぁんに隠居が、「人の生き死にの話なんだからやめなさい」とたしなめる。
客の内心を置き去りにせず、噺のほうはしっかりナンセンス。
新聞記事における、ベストの解決法ではないか。
新聞記事の根本的な問題点は、「アゲられたんだよ」という劇中オチが特に面白いわけではないということ。
ここも、「まあ、こんな雰囲気になるな」と客をダシにして乗り切る。
これ、結構高度なワザだ。
下手な演者がやると、こうなる。
- 自分のウデが足りないのを、客のせいにして格好を付ける
- 落語好きの客が、ごく普通のネタとしてスルーしたギャグを、ことさらに掘り返す
- 予定調和のツッコミを入れて、演者がいい気になっている
こういう失敗例はいずれも、客が演者から否定された気になるのである。
楽太さんは、こんな落とし穴にはハマらない。客の状況をよく見ているからだと思うのだ。
八っつぁんのでたらめ小噺に、オリジナルギャグも加えアレンジ。
人間関係にさざ波が立たないのもいい。
再度、客席の空気をいじってスムーズに着地する。
前座としては、出色のウデ。
しばらく聴いてないが、けろよんさんというスーパー前座もいる円楽党、恐るべし。
高座に上がる機会が多いからと思う。
二ツ目昇進時の名前だが、「萬太郎」あるいは「萬楽」でどうでしょうか。
「チッ、でっち定吉が書いたから、候補に挙がってたけどやめよう」なんてことがないといいが。
二ツ目は好好さん。
「よしよしでもハオハオでもありません」
WBCについて。
ダルビッシュはすごいですね。何億も稼いで。そして私よりひとつ年下ですよ。
この(ツルッパゲ頭を撫でて)ビジュアルだけの違いだと思うんですが。
本編は宮戸川。
前座が良すぎたので、わかりやすく静かな客席であった。
好好さん、クスグリ、創作のセンスはなかなか高いのだ。放送作家的な才能はあるのだろうけど。
だが舌が回らないし、演技がやや凡庸。
あろうことか、濡れ場になって噛んでしまう。「長襦袢」が言えない。
それでも「私も興奮して喋れません」と入れたのは立派です。入れないと、救いようがなくなる。
まあ、グダグダだったわりには、意外と最後盛り上がったような印象。キャラはいい人なんだ。