みずほ寄席(上・瑞穂町への旅プロローグ)

前日の土曜に出かけたばかりなので仕事しようと思うのだが、早くから出かけるはずの息子が朝寝ている。昨日も出かけていたため、ギブアップだそうな。
なので、息子の使うはずだった青春18きっぷ(残り1日)をムダにしないよう、私が遠征することにする。
最初から出かける予定でいたら、土曜は仕事したのだけど。

東京の外れも外れにある、瑞穂ビューパーク競技場。併設建物内にあるスカイホールの「みずほ寄席」は、入船亭扇辰・古今亭菊之丞の二人会。
料金は千円。

この9日は本来、東中野で笑福亭松喬師を聴きたかった(完売)のだが、このみずほ寄席も一旦は候補だったのだ。
18きっぷが余るのを想定し、こちらか、北柏の柏落語会のどちらかを考えていた。

ちなみに、昨年もまったく同じことを考えていた。

遠くへ行きたい:落語会編

瑞穂と柏で迷うのも、昨年と一緒。
さらに今年は、藤沢も気になる。「藤沢さかなや落語二人会」は、三遊亭歌彦・春風亭かけ橋二人会。
藤沢の会もよく見かけるが、電車賃は決して安くない。
チャンスと言えるが、この会は前売料金設定があるので、当日決行する意欲はなくす。

というわけで計画から一年越しの瑞穂へ。
ちなみに柏のほうは、文菊・柳朝・一花。
柏は2,000円であり、この差が意思決定に大きく響くのだった。

みずほ寄席のようにたびたび会をやっていて、しかも安い地域は、客の質がいいはず。
座間でもって立証されている仮説。

拝島から八高線に乗り、箱根ヶ崎駅からスカイホールまで徒歩15分。
瑞穂町役場の前の街路樹がモクレンで、ちょうど今満開。
紅白2色のモクレンはいいものだ。
あと、この街にはソメイヨシノがないようで、陸上競技場につながるスロープの八重桜が満開。
スロープと別に石段が。どうやらこちらからもスカイホールに行けるらしい。
なるほど、スカイホールの名の由来がわかった。丘の上の天空のホールなのだ。
そんな知識もまったくなくやってきた私。クルマのない年寄りにはキツそうなロケーション。
いかにも神社が待っていそうな石段のてっぺんにあるのは、平和記念碑。
そこからさらに奥に進むと、狭山丘陵を削ったらしい陸上競技場。
といってもただのグラウンドだけど、賑わうときは賑わうのだろう。
ホールは立派。人口3万の「町」なのに。
さらにでかい大ホールまであるのだ。
どこから人が集まるのか、賑わっているではないか。

場内で配ってるチラシには、飯能の会のものも。
東飯能まで2駅とはいえ、地図を見る限り決して近くとも思わないが、日頃から行ったり来たりがあるらしい。
埼玉のお客も多いのだろう。

千円なのに2席ずつだったので、ちょっと感激。
安くて長くて、座間に似ている。
もっとも、客の質は座間が上だ。瑞穂は携帯がやたら鳴ってた。
これはいい悪いじゃないが、扇辰師の入れた「拙者、郡山剛蔵と申す」への反応が皆無。誰も知らないんだ。

それでも高座の質も高く、再訪してもいいなと思いましたね。
普通に交通費払うと大変だけど。
次回は8月13日で、三遊亭兼好独演会だって。
また息子の18きっぷの余りで来るか。
兼好師、「埼玉だと思ったら東京なんですね」とか「入間のほうが栄えてますよね」とか「西多摩郡なんですってねえ」など毒を放って地元客に喜ばれるのかしら。

十徳 辰ぢろ
たいこ腹 菊之丞
竹の水仙 扇辰
(仲入り)
蕎麦の隠居 扇辰
妾馬 菊之丞

世話人の挨拶があり、「今日も有名な師匠が出てくれます」とアピール。
今回のチラシ(簡単なもの)にも、「笑点新メンバーに春風亭一之輔師匠加入!」とか、「女性だけの寄席を主催した蝶花楼桃花師匠の模様が新聞に出た」などと、とても嬉しそうに、誇らしげに書いてある。
二人とも、過去何度もみずほ寄席に出てくれてるんだそうだ。
要は地方の会なんですよね。

前座はよく遭遇する辰ぢろさん。
落語協会では、「十徳」は珍しい。
つるや千早ふるなどと同様の、インチキ知識披露ものだが、十徳の隠居は一度も八っつぁんを騙そうとはしていない。
知らないことを知らないと言っているのに、八っつぁんが隠居に無茶振りするから、やむなく適当に考えたものだと断って「衣のごとく、羽織のごとくで十徳だ」と教えてやるのだ。
ただ、隠居は十石橋のいわれはちゃんと教えてやる。

このあたりの噺の構造がしっかりしている。
落語協会ではなく、好楽師や兼好師にでも教わったんじゃないかと。

またも辰ぢろさんに感心するが、遠くから遠征し、歩きもしたので寝てしまう。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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