楽屋の中のハナシカ
3コマ続けて催しに参加する。
教室の2階でおこなわれるイベントだが、列が3階まで伸びている。
桂文治師をはじめとする、なんだか楽しそうな顔付けなので参加してみたが、なにをやるのかは知らない。この点、他のイベントも同様。
蓋を開ければこの日一番面白い、爆笑の催しだった。
噺家さんたちが、年2回、夏の寄り合いと暮れの納会のときに、プロの目の前で披露する楽屋芸をファンに公開するという内容。
プロを笑わせるものなので、素人さんが見てもなにがなんだかわからないものがあると思うが、そういうものだと思ってくださいとのこと。
会場に入って前のほうで出番を待つ文治師、女性客に顔でサービス。特になにかするわけではないのに、客も大喜び。
不思議な人である。
出演者
- 桂文治(お目付け)
- 春風亭昇也(司会)
- 桂夏丸
- 桂竹千代
- 三遊亭吉馬
- 瀧川あまぐ鯉(前座)
お目付け役の文治師も、司会の昇也さんも、普通にどしどし物まねに参加。
小さな、乗るのがやっとの簡易高座が設えられており、出から挨拶、マクラ本編の一部まで演じて見せる。生お囃子付き。
夏丸師は末広亭の出番を終えて駆け付けた。昨夏真打に昇進したこの人は、初めてお見かけする。
いきなり米丸師の物まね(そっくり)で登場して爆笑。「歌丸さんは死んだのかい」で締める。
実に達者である。
あまりにも器用な夏丸師、いずれ本業でも売れてくるに違いない。
大所帯、瀧川鯉昇一門初の孫弟子あまぐ鯉さんは、さわやかイケメンで今後人気が出るものと思われる。
鯉朝師の弟子。
ホワイトボードに噺家や色物の先生の名前が多数書かれている。
芸協だけでなく、落語協会の人も多数。
リクエストに応えてなんでも物まねするとのこと。
リクエストはいきなり円丈師、権太楼師など、落語協会の人からスタート。
芸協まつりだってのとぼやきながら、この二人の爆笑物まねを演じる文治師。
リクエスト以外も噺家さんたち、思いついてどんどん掛ける。
前座のあまぐ鯉さんもあまり遠慮しない。
「もしも」シリーズも多い。「もしも、ボンボンブラザースが卓球をしたら」とか。
そして、袖の姿の物まねが多い。つまり客が日頃見ていない状態からスタートするのである。
古今亭志ん輔師の物まねで、袖で何度も手の平に「人」を書いて飲み込む夏丸師。
そして竹千代さんがいきなりズボンを脱いで、噺家さんの楽屋のズボンの畳み方、脱ぎ方を実演。
ヨネスケ師の脱ぎ方は、極めて乱暴。
鯉昇師のズボンの畳み方は結構丁寧。
同じく竹千代さんのネタ、「師匠たちにお茶を出したときの反応」も面白い。
素人にはわからない楽屋の世界なのに、なぜか落語ファンとの間にブリッジが架かるのである。
こういうのを見ていると、楽屋仕事がいかにネタに満ち溢れているかよくわかる。
一生懸命働きながら、前座さんは実にさまざまな芸人の様子を観察しているものだ。
そう思うと爆笑の続く中で、伝統芸の美学に対し、ちょっとこみ上げるものがあったりする。いやほんと。
そしてハイライトは夏丸師の、亡くなった都家歌六師の「のこぎり演奏」。
エアーのこぎりの音を口で出す、凄い技。
どうして若いのにこんなの知ってるんだろう。私も知らない。
昇也さんのやってた、「機嫌のいいとき」「普通」「悪いとき」それぞれの師匠・昇太の楽屋を後にする際の挨拶も爆笑でした。