柳家圭花の会(上・「開帳の雪隠」)

いろいろ気になる会のある中、日曜は珍品専門の二ツ目、柳家圭花さんの会へ。
落語協会の2階で千円。
三遊亭わん丈さんに、来年抜かれるひとりである。
私は、抜かれる側にももっと着目しようと思っている。遊京、馬久とこの人。
それから、つる子、わん丈の二人に抜かれる、圭花さんの兄弟子の花飛、吉緑。
抜かれる全員に着目するわけではなくて、どうでもいい人もいるわけです。

珍品だから価値が高いなんてことはない。珍品が珍品であり続ける理由は、つまらなくて儲からないから。
でも、そんなものを聴きたくなる日もあります。

圭花さんは神田連雀亭には出ていないが、らくごカフェの花緑弟子の会でたまに聴いている。
独演会に行くのは初めてだ。
ちなみに、黒門亭以外でこの落語協会の2階の会に参加するのも初めて。

午後6時開演なので、夜席にあまり行かない私にも参加しやすい。
つ離れしたのかな。そのぐらいの、予想通りの人数。
前座もなく、圭花さんひとりで運営する。

開帳の雪隠
世界のことわざ紹介
猫久
御神酒徳利

猫久に入る前、仲入り休憩入れるかどうか終えてから考えますとのことでした。
結局、勢いで御神酒徳利まで続ける。

御神酒徳利ってのは別に珍品じゃないよな。
珍しめではあるが、トリネタだから当たり前。
よく考えたら圭花さんのことを「珍品専門」と呼ぶのは兄弟子たちであり、ご本人ではない。
猫久は、実はらくごカフェで聴いたことがあった。
当時あまりいいデキではなかった印象だが、今日はグッとよくなってました。そのため、「誰かから聴いたけど誰だっけ」と聴きながら考えていた。
こちらは、嘘偽りない珍品。私は好きな噺ですがね。

圭花さんは、声もいい(美声というのではないが、落語らしい)し、演じ分けもいいし、客を引かせる余計なことをやらず入れず、上手い人。
もっと面白ければ言うことない。
といって、別につまらないわけではないけど。
もっと面白くなるのは実は簡単ではないかと思った。噺の編集がさらに上手くなると、客が高揚してきて勝手に面白くなる。
・・・簡単じゃないな。

今日はいつもと違うんですよ。
2ミリのバリカンを、今日は1.5ミリにしてきました。

最初のマクラは、師匠・花緑に付いていった九州遠征の話。3泊4日で、福岡と久留米。
師匠と別のホテルだったので最高だった。朝食も一緒に摂らなくていいし。
久留米でタクシーに乗り、ホールを告げると運転手が言う。「今日、誰か来るんですか」。
これは噺家あるあるですとのこと。
柳家花緑ですよと圭花さんが師匠の前で答えると、「知らないね」。
運転手「鶴瓶さんは来ませんか」。来ませんね。
続けて、「あの人出ませんか、あの、プレバトに出てる人。昇吉さん」
笑点基準で噺家を格付けするのはよくあるが、最近はプレバト基準なんだなあと圭花さん。
ちなみにこの一門からは、しばしば昇吉disが聴ける。私が聴きたいからそう聴こえてくるのかもしれないけど。
圭花さんは別に、直接昇吉師をdisってはいなかったが。

ホールに着いて、運転手は言う。
「圭花さん、プレバトに出られるように頑張って」。
ああ、プレバト好きだから五七五になってるんだなと圭花さん。
師匠のことも五七五で言ってたが、忘れた。「テレビに出られるように頑張って」だったかな。これだと合わないな。

この前に振っていた、福岡・天神の屋台の話はオチもなくてイマイチ。でも喋りたかったらしい。

一席目は、珍品中の珍品で、開帳の雪隠。
初めて聴くのだが、米朝の速記で読んだことがあるので知ってはいる。
その前に、聴いたことのない観音様などの小噺を振る。

参道にある菓子屋。通る客が増え、便所を借りる客も増えた。
なので8文取って気兼ねなく使ってもらうことにする。
だが、向かいに同じ値段でもっと立派な有料便所ができて、客を取られる。
そこで一計を案じ、という。まあ、小噺みたいなものだ。

私はサゲを知っているのだが、もちろん落語である。知っていてつまらないなんてものではない。
隠すほどのものじゃないが、書かない。

短い一席を終え、次はこの会ではいつもやっている、好きなことを喋るコーナーらしい。
ここに来て外国人観光客が増えた。
先日、スマホを持ってお店を訪ねてきた南米(と思われる)人たちを店の前まで案内してあげた圭花さん。
「グラシアス」と礼を言われたそうで。

海外のことわざについて。海外のことわざも、意外と日本で通じるんですよと。
これは覚えていないようで、紙を読み上げる。
次々紹介されることわざ、さすがに私も覚えていない。
ドイツのことわざで「ズボンもシャツも一緒」だったか、そんなのがあった。
我々もよく、同じ色の羽織と着物だと思って持ってくると、両方着物だったりするんですよと。
私はやったことないんですけどねと圭花さん。こう見えてしっかりしてるんで。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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4件のコメント

  1. 開帳の雪隠・・・一度だけ梅屋敷だったかな?で萬橘師の噺で聴いたことがありました。初めて聴くなぁとは思ってたんですが、珍品だったんですね。地方在住だと中々、生で噺を聴く機会がないので特に珍品は楽しいです。

    1. 珍品は楽しいですね。
      「珍しいだけ」の場合もあったりはするものの。
      珍品が聴きたければ、圭花さんはいいですよ。

  2. 出遅れのコメントになりますが、開帳の雪隠は確かに最近聞かなくなりましたが、昭和50年くらいまでの寄席では、2日に1回くらい誰かしらやっていたように記憶してます。本膳な権兵衛狸くらいの頻度だったかなと。
    時代を感じます。

    1. いらっしゃいませ。
      開帳の雪隠、かつてはメジャーだったのですか。知りませんでした。
      やはり便所が現代人の感性に合わないんでしょうか。
      本膳や権兵衛狸が掛からない理由にはならないですけど。

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