よく知らないがちょっとだけ接点のある古典落語

古典落語の珍品についてたまに書いている。

現場で拾った珍しい古典落語(上)

それから、珍品とは言えないメジャーな噺のはずなのに、聴かない噺についても。

有名なのに聴かない噺

落語の演目って、無限にあるもんだなと最近つくづく感じるようになった。
ところで、マイナーな噺というもの、まるで知識を有していないわけでもない。中には、「珍しい」こと自体が有名な噺もあるからである。
あたま山なんてそうだろう。もっとも、やっと巡り合えたところでそんなに面白くはないと思うが。
そして、速記本を読んで存在を知っているものもある。
速記本だけの認識でいた「突落し」を現実の寄席で聴いたときは驚いた。扇遊師など日本の話芸で出したし。

過去に当ブログで取り上げた珍品は、高座で一応聴いているのである。おー、珍しいなと驚嘆しながら。
今日は、そこまでいかない、ちょっとだけ接点のある噺を集めてみた。
浅草お茶の間寄席で出ていたとか、子供の頃に聴いた記憶があったとか。
最初は「まったく聴いたことがないし、その存在もよく知らない」という噺を集めようかと思ったのだが、「今戸焼」とか「小烏丸」などという演題を見ても、イメージが湧かな過ぎ、取り上げようがないのでした。

うそつき村

これもあまりピンと来ないが。
上方落語の鉄砲勇助の前半が「弥次郎」で、後半が「うそつき村」だそうな。
そういえば鉄砲勇助というのもタイトルは有名だが、聴かないな。
桂梅團治師が「鉄道勇助」という新作をやってるのが気になる。と思ったらYou Tubeにあったので後で聴いてみます。

越後屋

これは歌丸師匠も掛けていたし、弟子の桂歌春師が浅草お茶の間寄席で出していた。
恋わずらいの噺。
サゲが「肥に上下の隔てはねえ」というしょーもないもの。まあ、落語のサゲ自体しょーもないのだが。

お七の十

これは偉大なる珍品噺家、柳家蝠丸師が浅草お茶の間寄席で出していた。
蝠丸師の得意な地噺である。
八百屋お七を扱った、唯一の落語だそうな。強情灸にも出てくるけど。
八百屋お七が火で死んで、小姓の吉三が身投げ(水)で死んで、お七の「ジュウ」。くだらない。

義眼

これは柳家一琴師が黒門亭で掛けたのを聴いている。だから「現場で拾った」ほうの噺だが。
ケツの穴から目が覗いているというしょーもない噺。
珍品ってのは、だいたいしょーもないのであった。
先代文治が得意にしてたらしい。トリなのに当たり前のように遅刻してきて、軽くこの一席で爆笑させて客を帰すのだと。

こり相撲

上方では「相撲場風景」になる。
子供の頃、演者が誰だったか覚えていないのだが、テレビで聴いて強烈な印象を持った。
相撲を観ている最中小便が我慢できなくなり、前列の酔っ払いが寝ている間に、酔っ払いが空にしたとっくりにいたしてしまう下品な噺。
酔っ払いが起きて、口を付けようとするので必死で止める。
酔っ払いがちゃんと教えてもらったことに感謝し、「寿司食いねえ、酒飲みねえ」。
三遊亭圓馬師が浅草お茶の間寄席で出していて、やっと演題がわかった次第。

猿後家

これはまだテレビで落語を披露していた頃の立川志の輔師で聴いた。
結構よくできた噺なのだけど、掛からない。女性の容姿をネタにする噺だから、現代では勇気がいる。
猿に似たおかみの前で「猿回し」の話をしてしまい、実は「皿回し」だったと釈明してなんとか取り繕うのに、最後にしくじる。
「けんげしゃ茶屋」などと同様、落語の黄金パターンであるが。

四宿の屁

中身はよく知らないのだが、六代目三遊亭圓生が寄席で逃げ噺として披露していたという知識だけ持っている。
四宿、つまり品川、千住、内藤新宿、板橋の遊女の屁のこき分け。なんのこっちゃ。

七面堂

八代目橘家圓蔵が、テレビで出していたのを子供の頃に聴いた。
本来のサゲが「そんな七面倒な」という、地口の最低のサゲなんだと。
それを振った後で、ちょっと戻ってもっと見事なサゲを振りなおすという荒業であった。
これを、演芸図鑑で桂文雀師が出していてちょっと感激した。
圓蔵に教わったのだと思うのだ。同じスタイルで。

土橋萬歳

上方落語の大ネタ。速記で読んではいるが、聴いたことはない。
夢ネタであり、その点貴重だと思う。
それで取り上げたくなったわけではない。
当ブログ、いつもいつも「土橋」でブログ内検索を掛けていく人がいるのである。気持ち悪いんですけど。
でも、「土橋萬歳」を検索してるのか「土橋亭里う馬」を検索してるのか、どっちなんだろう。
ああ、ついに検索が引っ掛かってしまう。

作成者: でっち定吉

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4件のコメント

  1. 重箱の隅をつつくようですみません
    お七の十以外にもお七というタイトルの演目があり、圓生の音源があります。直接八百屋お七が出るわけではないので、お七を扱っていると言っていいのかは微妙ですが
    定吉さんもお持ちかもしれませんが、青蛙房の落語事典に両方とも記載があります
    また、ちょっと調べて見たところ明治時代の五代目翁家さん馬の速記で八百屋お七恋廼緋鹿子というものもあるようで、歴史の中で埋もれたネタはもう少しありそうですね

    1. 情報ありがとうございます。
      落語事典は持ってません。研究者でもないので。
      歴史な埋もれたネタは私と接点がないため、どのみち扱いようがありません、喬太郎師が復刻してくだされば別ですが。

      1. 要らぬおせっかいでご気分を害してしまったのでしたらすみません。定吉さんのように影響力のある方の記事でしたので、気になり書き込ませていただきました
        私は研究者ではなくごく浅い落語オタクですが、落語事典は読み物としても面白いですし、寄席では聞かないようなネタがたくさん載っていて、珍ネタ好きの?定吉さんにはおすすめかと思います
        さらに余計な情報かもしれませんが、少し前に談笑師匠が八百屋お七を自作して演じていたようです

        1. 私が「お七の十」は落語で唯一八百屋お七を扱った噺だと言ったわけじゃないのですよ。
          蝠丸師匠がそうおっしゃっていて、そんなことないだろうと思いながらそのまま書いたわけです。
          別に気分を害してはおりませんのでお気遣いなく。

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