現場で拾った珍しい古典落語(上)

笑点一之輔景気が流れ込んで賑やかな当ブログですが、ネタなんてすぐ切れる。
今日もない知恵を絞り出し、更新してまいりましょう。

ブログ始めたころ書いたもの。
珍しい噺

今でもアクセスがある。
その際取り上げたのはこんな噺。
聴いた演者もカッコ内に書いておきます。

  • 麻のれん(入船亭扇辰)
  • 言訳座頭(柳家小里ん)
  • あたま山(立川笑二ただし改作)
  • てれすこ(TVで笑福亭松喬)
  • きゃいのう(古今亭志ん丸)
  • 武助馬(瀧川鯉昇)
  • 脛かじり(立川談幸)
  • 幽霊の辻(柳家権太楼、桂文治、柳家権之助)
  • 頓馬の使者(柳家喬太郎)
  • 真二つ
  • 目玉
  • 汲みたて(三遊亭金八)
  • さじ加減(入船亭扇辰)
  • ぼんぼん唄(立川談四楼)
  • めがね泥(TVで春風亭一之輔)
  • せむし茶屋(快楽亭ブラック)
  • 徳ちゃん(柳家さん喬)
  • 春雨宿(昔昔亭桃太郎)
  • 五目講釈(柳家さん福)

なかなかのラインナップ。だが、まだまだ珍品はある。
6年後のいま、こちらに付け加えてみようと思います。
寄席に行くと、いつも同じ前座噺を聴くなと思ったりもするのだが、いっぽうで珍しい噺もちゃんとあります。
といっても、誰もやらない噺は取り上げない。

珍品を当ブログの「タグ」で遡って調べてみたが、結構あって驚いた。
「珍品がいっぱいある」という不思議。
「いつも同じ噺ばかり」という感想を持つ人は、間違っているということになりますね。

おすわどん

これは昨年末に聴いた。林家正蔵師から。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」がテーマ。
怖い怖いと思っていると、ただの物売りの声が幽霊に聞こえる。なかなか深い。
桂歌丸師の得意ネタだったが、今、他に誰がやってるだろう。
立川寸志さんが、Zabu-1グランプリに出してたが。

今戸の狐

王子の狐、紋三郎稲荷、七度狐以外に存在する狐の噺。
もっとも動物は出てこない。
「二ツ目の噺家が、師匠に内緒の内職がバレた」と思ったら、相手の男はバクチの噺をしている。
ぶっつけ落ち」のいい事例なのだが、まあ、今後も珍品のままでしょう。
金原亭の噺で、馬太郎さんから聴けた。

万病円

これはかなりの珍品。昔は出たのかもしれないが。
柳家花飛さんと春風亭昇輔さんから聴いた。
ワル侍を、商人たちが撃退する噺。といっても、落語だからそんなドラマチックなものではない。
こんな噺から、「反権力」をかぎ取りたい人もいそう。

そばの殿様

珍品専門の柳家圭花さんから聴いた。
とにかく珍しい噺を聴きたいという人は、柳家圭花、それから兄弟子の花飛など追いかけるとたくさん聴けるはず。
あと、芸協の桂鷹治さんなど。
そばの殿様は、上司のムチャクチャに部下が振り回される、身につまされる(かもしれない)噺。
お殿様がメチャクチャなそばを打ち出すのだが、それを食わされるものときたら。
時そばと違い、食欲は湧きません。

四人癖

圭花さんの兄弟子、柳家緑也師も珍しいものを持っている。金翁(先代金馬)譲りだそうで。
今では癖の噺というとほぼ「のめる」。
「のめる」の癖は「つまらねえ」と「一杯飲める」だけだが、四人癖の場合はビジュアル。
それぞれ「けばをむしる」「目をこする」「羽織の袖を引く」「手を打つ」。
目で観る落語なので、ラジオではできません。

八九升

円楽党の前座だけで聴いた。
スウェーデン人のじゅうべえ(現・好青年)さんと、けろよんさん。
耳の遠くなった旦那に、番頭がニコニコしながら「くたばりぞこない」とかひどいことをつぶやく噺。
噺家の修業のためには価値があるらしい。

伽羅の下駄

三遊亭好楽師から聴いた珍品中の珍品。
珍品も、頭のどこかに演題が引っ掛かっていることが多いのだが、これは知らなかった。
仙台公と高尾花魁のエピソードが下敷きになっている。
「真面目に働くといいことがある」というテーマが隠れていそうで、落語だから適当。
適当な好楽師にぴったりの噺だった。

にゅう

これはTVだけ。柳家喬太郎師と三遊亭天どん師で聴いた。
成金からの頼みを断るため、道具屋の主人が与太郎な奉公人を代わりに送り出す。
「にゅう」は漢字では「入」。陶磁器に入った細かいキズのこと。

一分茶番(権助芝居)

今年のお軽はオスだんべ。
一分茶番が珍品? と思われますか。
でも、聴かない。
もともと芝居噺自体がそんなに掛からない。
「七段目」や「四段目」は出るほうだが、蛙茶番も意外と出ない。
一分茶番は二ツ目時代の林家はな平師から聴いた。
飯炊きの権助の得意な人ならいいと思うけど。

半分垢

両国寄席を抱える円楽党では、割と相撲の噺は出る。
半分垢は、そこでしか聴いたことのない噺。
面白いのだけどなあ。上方で修業して帰ってきた相撲取りのかみさんが、贔屓衆に、関取がいかに大きく立派になったか語り、当の関取を赤面させてしまう。
道中で会ったおなご衆に対し、関取が地元にそびえたつ富士の山を褒めたところ、「なあに立派と言っても半分は雪でございます」。
これを見習えとかみさんをたしなめる。
この噺が非常に好きなのは、落語には珍しく「アホな女」を扱っていることである。
女流落語家が増えた今、鮑のしや熊の皮のごとくしっかりしたかみさんだけではダメでしょう。アホな女も必要だ。
新作にはたくさんあるけど、古典落語に出てくるアホな女は実に少ない。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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