生活スタイル上夜席に行きづらい私であるが、平日昼間ならこっちのもんだ。
東京かわら版で「大吉原落語まつり」を知る。
同時にいろいろな会が開催されるが、この中に「柳家喬太郎・入船亭扇辰・三遊亭兼好三人会」がある。
オフィスマツバにメールしたら、まだあった。
会場は西徳寺。定員100人。
喬太郎師、鈴本でトリを取っている。「オモクラ喬太郎」。
これは中身的に夜席である必要がある。喬太郎師の重暗い噺、それはそれは好きで。行きたいけどなあ。
「今日は吉原に行ってくる」と宣言して家を出る。
「外に出ちゃいけません」と言われる日に、鶯谷駅からひたすら歩く。
駅前ですれ違ったお姉ちゃんが、「あ〜夏イラネ」だって。
好き嫌いではなく、要る要らないの発想は私にはなかった。
入谷の鬼子母神は、あさがお市で大盛況。
初めて見た。正楽師匠がリクエストで切ってる印象がある。
会場の近所に、立ち寄りたいスポットが一つあった。「太郎稲荷」という。
三遊亭好楽師が「ぞろぞろ」に登場させていたお社である。
どういったいわれがあって、ぞろぞろに出てくるのかはわからない。
好楽師以外に、実在の神社でぞろぞろやってる人も知らないし。
行ってみたら、民家に囲まれた実に平凡なお社でした。
お参りしてきた。
スマホが熱中症になり、地図の現在地が表示されなくなる。
でもなんとかお寺に着いた。
なにせ暑い日で、吉原の風情を探す気力もない。
会場の西徳寺は立派なお寺。
ここは中村勘三郎の墓所らしいが、一般公開はしていない。
面白いことに、本堂の下部も室内墓地になっている。
客はお墓の上で落語を聴くわけだ。
座敷かと思ったら、土足の椅子席。
外は赤道直下だが、指定された席は真冬の八甲田山。
後ろからは冷房がダイレクトに首スジに、そして大型扇風機がエアコンの風を拾い、首振りながら私の顔に冷たい風を吹きかけていく。
でも、寒いのはまあ我慢するさ。
扇風機の風を切る音で、演者のセリフが聞き取りづらい箇所があって困った。オフィスマツバさん、お金半分返してください。
でも、兼好師だけは残らず聞き取れる。
なんか、すげえ。
道灌 | 辰ぢろ |
湯屋番 | 兼好 |
麻のれん | 扇辰 |
(仲入り) | |
首ったけ | 喬太郎 |
前座は扇辰師の弟子、辰ぢろさん。
やたら遭遇する人で、6席目。
師匠の出る会で聴くのが4席目。
そして扇辰師が出るときの、辰ぢろさんでの睡眠率10割。
この日も寝た。上手いのに、申しわけない。なにせ来るまでに疲れましてね。
非常に寝やすい高座だというのは、褒め言葉になると思うけど。
落語会なので、辰ぢろさんは自分のマクラを振る。
おかみさんは最初の頃は辰ぢろと呼んでくれてましたが、だんだん省略されて、今は「ジロ」です。弟子全員辰の字がつくもので。
コロナで仕事のないとき、師匠と散歩に行きました。
師匠が言います。「ジロ、散歩行くぞ」。
ああ、ぼくは犬なんだなと。
本編、道灌は以前も聴いたと思ったが、前回のはよく考えたら導入の同じ十徳だった。
いずれにしても寝てしまう。
この日の会は香盤順なのか、兼好師から登場。
出囃子がそういえば、さんげさんげじゃなかった気がするな。
先日の両国では、他の客のせいでひどい目に遭った。改めて兼好師が聴けて嬉しい。
暑い中ありがとうございます。
また、駅から遠いのに、よくお越しいただきました。
平日昼間なので、お年を召した方が多いかなと想像していましたが、お若い方も多いですね。
毒舌家の兼好師だが、私の許せない「ヒルハラ」はしない。
前から不思議でならないのだが、次の客のうち、「皆さんお仕事はどうされたんですかね」と言われて、愉快に感じる人はいったい誰?
- 年金生活者
- 有休取得の給与所得者
- 定休日の勤め人
- 現代ビジネスの執筆者である一流コラムニスト
- ブログだけ人気の泡沫ライター
どなたか、愉快ですか?
思い出し怒りのあまり話がそれた。兼好師に罪はありません。
くたびれた格好の、へんな帽子をかぶった小汚いおじさんも暑い中なんとかやってきましたとのこと。
お寺はいいですね。もともと説法だけじゃ人が来ないので、面白い話もしていたのが、私らのほうに来たわけです。
お坊さんも我々も、似たようなものですよ。シルエットは一緒だしね。
扱うものが生きてるか死んでるかの違いぐらいです。
お寺はいいんですが、教会はやりにくいですね。
音響が良すぎるんですよ。あそこは説法を聴かせるというより、みんなで歌ってトリップするところでしょ。
「よく来たね八っつぁんつぁんつぁん… まあまあお上がりおあがりおあがり…」
になっちゃうんですよね。
後ろでは、キリスト様がこんな(身振り)姿でいますしね。
でも、一度教会でもいい思いをしました。
「花子とアン」でおなじみの方の創設されたか出たかされた学校で、学校寄席に呼ばれんです。
えらくテキトーな説明なので調べて補足すると、村岡花子の出た東洋英和女学院のこと。学校のチャペルで落語をしたということなんでしょう。
ここで女子学生の前でやったら、それはそれはウケて嬉しかったそうで。
いっぽう、お寺でもウケないこともあります。
お坊さんを集めた会でしたが、誰も笑いません。後で聞いたら、平常心を保つ修行だそうで。
地方の小さなお寺は跡継ぎ問題がありますね。
私5人の弟子がいますが、全員お坊さんにして、地方のお寺を継がせようかと。かけもちで。
噺家だからつまんないって言われますが、お坊さんだったらかなり面白い人だって言われますよ。
跡取りの若旦那に話を持っていって、本編は湯屋番だった。
続きます。