プーク新作落語寄席 その1(三遊亭東村山「CM家族」)

深夜の更新、でっち定吉です。

新作落語をこよなく愛する私だが、最近聴く頻度が落ちてやしないだろうか。
林家きく麿師を最近続けて聴いたが、当該記事のアクセス多いこと。新作の需要は間違いなく高いのだった。
頻度を修正しに、夏の名物、プーク人形劇場へ。
といっても、初めて参加するんですが。
喬太郎、白鳥両師の日はすでに完売だったが、初日木曜の小ゑん師の席があった。
二ツ目から若手、中堅残らず好きなメンバーで、この日で満足です。

暑すぎて、肝臓が弱ってるなど自覚はあったが、この日はついに、朝から脳ミソにモヤが掛かったまま。
昼寝してなんとか夕方生き返り、外出。

午後2時から整理券を配るとあるが、開場後に到着。
前の列に座りたい人以外は、整理券は不要では。
子供用の小さいベンチなので、実に狭い。前との間隔も近い。
慣れてしまえばどうということもない。

スマホの電波が入りづらいので、早々断念。ちなみに開演中は通信スクランブルが掛かっている。
ほどなく開演。

CM家族東村山
スクキャットごはんつぶ
土底の英雄(どていのヒーロー)ぐんま
二人の魔王今輔
折衷案天どん
(仲入り)
楽しい山手線駒治
長い夜小ゑん

三遊亭東村山「CM家族」

前座は三遊亭東村山さん。初めて。
プークは見習いの頃から上げてもらってますとのこと。
鼻筋通ったいい男で、声もいい。なぜ古典落語の一門じゃないのだろう、なんて言ってはいけない。
いつも師匠・白鳥の話題をマクラにしてます。
今日は考えずに出てきましたがと言いつつ、やっぱり師匠ネタ。
師匠は、弟子に興味がありません。
地方のお仕事いただいたりすることがあって、普通は当然師匠に報告するわけですが、そういうのはいいと。
末広亭の前座に入っていたら、師匠が代演に来ました。
師匠、着物忘れて来たんですね。弟子がいるんだから借りればいいのに、師匠そこにいた小きちさんを捕まえて、お前の着物貸してくれって言ってるんです。
着替えさせてもらったあと、師匠ふと私の名札を見て、「あ、東村山お前いたのか」。
顔見てじゃないんです。

8月26日に私の勉強会あるのでよかったらどうぞ。
前座なんで宣伝しづらいですけど、ツイッターに載ってます。

こんな会なので前座も当然新作。
いや、見事な一席で驚いた。創作力が高く、そして喋りが手慣れている。
どういう経歴なのか知らないが、早くから舞台度胸が据わっている。
客を手玉に取れるのだ。
白鳥師の弟子は精鋭揃いである。

広告の話題から。
夫婦の会話。
お前朝からどこ行ってたの。お医者さんよ。どこが悪いの。
口ごもる妻。
夫が、俺が悪いのは痔ぐらいだ。
すると妻、「♪痔にはボラギノール」。
夫がクレジットカードを見せる。これだけなら大丈夫なのだが、夫が「楽天カード」と言うワードを出したら最後。
「♪楽天カードマ〜ン」
妻はテレビの見過ぎで、ワードを耳にするとCMソングを歌わずにはいられない病を発症したのだ。
さらに医者によると、この病は感染することがあるという。
おまけに、日本では症例はないが架空のCMを歌い出すこともあるという。

落語の作り方がつくづく上手いなと感心した部分がある。
CMを歌い出す病気を発症した家族のもとに、セールスの訪問がある。
やって来たのは城本クリニック。
夫は自分で対応しようとするが、妻が出てきてしまい、座布団の上を転がりながら城本クリニックのCMソングを歌う。

座布団の上を転がるのは、白鳥イズムで今では格別目新しいとまではいえないが、その後。
「なんで城本クリニックのセールスが来るんだ」と夫がつぶやいている。ここ。
確かにそんなセールスはない。
練られた古典落語と違い、新作落語の場合、ご都合主義が抜けない部分がある。噺の進行のための無理な展開になりがちだ。
東村山さんも強引な展開を持ってきているのだが、「それがなにか」という作り方。
ひとことご都合主義に触れておくだけで、すんなり噺が進む。実に高度なテクニック。
こういうテクが地味に溢れている。

ちなみに座布団を転がっている際、袖にいたごはんつぶさんと目がしっかり合ったそうな。ごはんつぶさんが語っていた。

夫には妻の病気が感染し、娘にはもっと重篤な「架空のCMを歌う」病気が感染る。
娘は造幣局のCMを歌い、落語協会のCMを勝手に歌う。

いや、大したものだ。
前座から爆発のプーク。続きます

 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

2件のコメント

  1. 文章読んでるだけで笑えました。実際生で見るともっと面白いんでしょうな。

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