五十歩百歩 その1(春風一刀謝罪会見…なんてね)

8月19日はさまざまな落語会があり、寄席のお盆興行もあり、どこ行くかちょっと悩んでいた。
神奈川県ではかながわPay実施中なので、できればそちら方面へ。
かながわPay絡みで考えたのが、上星川のこまむ亭。まだ行ったことがない。
この落語居酒屋自体、かながわPayで20%還元だ。ということは、木戸銭も。
結局神奈川でも、読売ランド前駅の棕櫚亭にしたが。
こまむ亭は柳亭こみち師でした。

ちなみにこの日は墨田区PayPay30%還元の初日でもある。
両国や亀戸(江東区だが、すぐ隣)に行きやすくはなるが、スーパーが対象外で。

この棕櫚(しゅろ)亭は二度目。古民家改造のカフェである。
昨年、柳家小せん師の独演会に来て以来。
まだ初夏だったので、散歩好きの私は帰り道、山をひとつ越えてたまプラーザへ出てみた。面白かったが、大変でした。
この日同じことしたら、命がない。

地元・柳亭市若さん主宰(になるのかな)の、落語協会二ツ目5人の会、「五十歩百歩」である。
二ツ目でも香盤はずいぶん上下にまたがっていて、一番下の市若さんが取り仕切る。
予約で1,800円。

棕櫚亭ではこの後9月6日は菊之丞独演会。11月1日は桃太郎独演会があります。

謝罪一刀
オープニングトーク
へっつい幽霊圭花
夏の医者小はぜ
(仲入り)
宿題三題噺(Wブッキング、五十歩百歩、こけし)市若
即席三題噺(新盆、パン、箱根の森)市若
恋する惑星一刀

初めて来たので、会の構成などまるで知らない。
時間になると、春風一刀さんが私服で登場する。
「申しわけありませんでした」
なんのこっちゃ。
なんでも一刀さんは前回のこの会「Wブッキングで」欠席した。
でも、実は幕張の音楽フェスに行っていたのだという。
前々から予定はしていて、会のほうが後から入ったんだって。そして会のほうを前日に思い出したのだと。
フェスは楽しかったですよ。
好きにしてくれ。

ちなみに今日の会は、兄弟子・朝之助が欠席ですとのこと。
朝之助アニさんはさっきまで会場にいたのだが、見るからに体調不良で、帰ってもらったそうで。
別にコロナでもインフルエンザでもありませんとのこと。そうだというならそうなんでしょう。
一朝一門、たるんでてすみません。
語らなかったが、弟弟子の朝枝さんのこともあるのだろう。
この会の真裏で、朝枝の会がある(赤坂会館)。
昨日エムズのサイト見てたら、この会も演者体調不良で順延されてる。
朝枝さんはコロナに二度なった人。

その後残り3人も登場。
柳家圭花さんだけ着替えている。
一刀さん以外は柳家。
柳家勢が言う。前回お客さんにはWブッキングだって説明してるのに、フェスの様子アップしちゃダメでしょ。
でも、小はぜアニさんは私がいなかったから初めてトリ取ったんですよね。ジャンケンに負けただけだから。そんな準備してないから。

市若さんが、レジ袋を持っている。
紙袋じゃないんですか。紙袋どっか行っちゃってさ。
今日の三題噺のお題をお客さんから集めたらしい。そんなのいつやってたの?

まず圭花さんが引いて、えーとこれは「あらぼん」です。
あらぼん? と皆にはてなマーク。
えーとにいぼんじゃないですか。アニさん明治でしょ、しっかりしてよなんて。
しかしお客さんから、「私長野(圭花さんと同郷)ですけど、あらぼんって言いますよ」と指摘があり、丸く収まる。
小はぜさんが引いたのは「パン」。好物らしい。
師匠に好きなものを訊かれた小はぜさん、「パンです」と答えて「馬鹿じゃねえの」と言われたらしい。
一刀さんが引いたのが、「箱根の森」。

というか、市若さんが三題噺をやる人だという認識をかろうじて持っているからついていけているだけで、よく考えたらなにを見せられているのやら。
市若さんの三題噺情報だって、昨年のここで聴いて知ってるだけだしな。
わちゃわちゃやってたが、楽しいトーク。

トップバッターは着替えていた圭花さん。
神田連雀亭に出ていないにもかかわらず、今日のメンバーではいちばんよく聴いている人。独演会も行ったからな。
マクラで「30分前開場って果たしてどうなんですかね」と不思議な話題を振る。
大ホールじゃないんで、10分前でもよくはないですかねと。
客の共感を得られなかったので、この話題はやめる。
実を言うと、私だけはちょっと共感した。黒門亭に並んで30分前に入場し、座布団の上でじっと開演を待っているのがイヤで嫌で。

なんだかいつも、マクラが客に合わない人。
客に合わないところまではいい。客の上を行く豊かな発想をぶつけて、驚かせれば勝ちと思う。
幽霊の小噺(夜は怖い)を振って、へっつい幽霊へ。
珍品好きの人にしてはノーマルな演目だと思ったら、このへっつい幽霊が、聴いたことのない構成。
へっつい幽霊は、若旦那の出てくるのと出てこないのと2種類あるが、どちらとも違う。
兄弟子の花いち師は若旦那のいないショートバージョンだったが、それとは違うのだ。自分で作ったのだと思う。

ばくちで懐をあったかにして帰り道、道具屋でへっついでも買おうとなるのだ。いったい今なんどきなんだいという疑問はあるが。
すると、いわくつきのへっついがあったので、タダでくれると言われて喜んでもらうという展開。
最初から主役が登場して非常にスピーディだが、噺の肝はまったくブレないという、実にいい構成。

そんな噺だから、100両取り出すのも実にスピーディ。とっととへっついを叩いて、中から取り出し、50両ずつ張って勝負となる。
いろいろやり方があるものだ。
手を上に向けられない幽霊のクスグリはあっさりしてていい。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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