立川流の寄席がふたつも追加

巣鴨スタジオフォーと梶原いろは亭は、いまやすっかり都内の落語を下支えしている存在。
その2館で、新しい寄席だって。
「立川流すがも亭昼席」と「立川流いろは亭昼席」とのこと。

立川流は、五代目圓楽一門会(円楽党)と並んで、落語界では長きにわたって土手組(差別用語)扱いされてきた。
いい言葉を探すとインディーズ。
いっぽうでこの2団体、実力の面では長いこと、立川流の評価のほうが上だった。今でもそう信じている人はざらにいるはず。
だが、5年ほど前に完全に逆転した。そう私は考えている。
三遊亭兼好師の力は大きいが、それだけではない。いつも書いてるが、円楽党には明らかな底上げが見られる。
いっぽうで、なんだかなという人も依然見受けられる。一般の寄席のような選抜が働かないからだが。

円楽党はなにしろ、寄席の開催日数が多い。
かつては月15日の両国だけだったのだが、亀戸梅屋敷寄席がすっかり定着したのが大きいと思う。
亀戸はもともと故・六代目円楽の元に持ち込まれた話だったようだが、今では円楽党公式の寄席になっている。
亀戸は前座含めて5人しか出ない寄席だが、月14日ほど開催している。
昼の亀戸・夜の両国W開催の日も多い。前座さんも忙しい。
「円楽党はジプシーで、寄席がない」といまだに思っている人がいたら、これは完全なる間違いである。
まあ、「上野浅草新宿池袋だけが寄席」という定義も確かにあるけれど。

いっぽうで、自前でやってる寄席の数が本当に少ないのが立川流。
日暮里と、上野広小路と、日本橋。全部合わせても、円楽党の半分程度。規模は同一なのに。
しかしながら、それでよしとしてきたのだと思うのだ。
なにしろ立川流は、寄席の否定という壮大な実験から生まれた団体。
その中から、立川流四天王(志の輔、談春、志らく、談笑、さらに生志)が生まれてきた。
四天王は寄席には出ず(なかったし)出世して、そのまま今に至る。
だから志らくなど、今でも平気で寄席を軽視する発言を繰り返す。

立川流のひっそりやっている寄席には、四天王は出ない。
さらに、「しのばず寄席」のような各派混合寄席にも出ないが、そんな席に好楽・兼好師弟は普通に出てきて集客する。
芸協の芝居にも多数呼ばれる円楽党のほうが、すっかり目立つ格好になっている。
それでも、四天王を主軸に捉え続ける人は、立川流のほうが上だと信じ続けることはできるだろう。

四天王は果たして立川流なのであろうか? 20年前から、実質フリーなのではないだろうか。
弟子たちは寄席に出ているけども。
四天王を除いた結果、立川流の寄席にはいまだに談四楼師が出づっぱり。
そんな席で「政府批判ギャグをマクラで喋ったらよくウケた」とXにポストされるのはイヤなので、足が向かない。
ともかく、四天王の上の、落語協会時代の寄席を知るメンバー、そして自分で集客できないメンバーが立川流の寄席には集まっている。

寄席を否定していた団体の寄席が一気に二つも登場。
関係者の間に、問題意識が煮詰まっていたのであろうなあ。
結局、円楽党の方式のほうが正解だったんだと。そういう結論が出たのでは。
四天王の下を見るだに、「寄席の否定」は結局失敗に終わった。
そんな現実を誰もが認めざるを得なくなったということでは。志らくはともかく。
寄席を最初から神聖視しすぎるのも違うとは思う。ただ、結果としては、寄席は育成に最適な場所だったという結論。

以前調べたが、二ツ目の神田連雀亭への参加率が一番高いのが立川流だった。
かの団体の二ツ目たちこそ、喋る舞台を最も求めていて、危機意識も高いらしい。

新しい二つの寄席は、二ツ目中心なのだろうか。平日なのでそんな気もするのだが。
出番が増えて、これから立川流二ツ目の実力もわかりやすく上がっていくことだろう。
私も行くつもりだ。
中にはこれ、という人がいる、と思うのだが。

投稿日:
カテゴリー: 寄席

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

4件のコメント

  1. 立川流の若手、寸志さんとか、かしめさんとか、地方での小さな会に来てくれるんでたまに聴く機会はあるんですが、いよいよ寄席にも聴きに行きやすくなるんですね。
    究極のインディーズ落語家(私が思ってるだけですが)こしら師とかも出るのかな?

    1. やっぱりたくさん高座があると伸びやすいですよね。
      出てるだけじゃダメですが。
      寸志さんはいいですよね。
      かしめさんはわかるような、わからないような。
      こしら師はもっとよくわからない人ですが、他の噺家の不得手な通信関係やらキャッシュレスに強い点は敬意を払っています。
      まあ、私も聴いて有望株を見つけます。

  2. 自分と落語のきっかけには立川流が関わってることもあり、
    その動向は気にしていますが、落協や芸協に比べ、
    見る場は少なく感じますし、組織としてやはり弱さを感じます。
    誰かが主導してなにか変わってくるきっかけ、なのでしょうか?

コメントは受け付けていません。