三遊亭歌る多、マナー悪い客をdisる

(お詫び)

池袋の話なのに、勝手な脳内変換して浅草の話になってました。
私自身、いかに偏見にまみれているかという話です。
お詫びして、タイトルも変更します(もともと「三遊亭歌る多、浅草の客をdisる)。
ただ、流れというものがあるので以下はそのままにします。
池袋の落語協会の客には、基本的に私は悪いイメージを持っていません。
とはいえ、このいいほうの偏見もあえて残しておきます。

§

Xことツイッターでは最近、「おすすめ」ポスト(ツイートのこと)が並ぶようになった。
私へのおすすめは、当然のごとく落語ばかりである。
ちなみに私のGoogleポータルには、落語とキャッシュレスとスカッと系が並んでいます。
X(ツイッターと呼び続けても別にいいけども)で、思わぬ情報を拾うことも多くなってきた。ありがたくはある。
そんなひとつ。

おやあ、気分よくないなあこれは。
いや、客じゃない。ポストの中身のほう。
高座の噺家が、客(集合体として)を露骨にdisるんですか。

浅草の客は確かにしょーもなく、落語がどうのというまえに人間的に難のある人が多い。これは事実だし、身をもって体験している。
そして落語ファンとして定着することはなく、無限に入れ替わっていくから成長もしない。

それはそうと。
「先にお座りのお客様どかして座るし」と。
これも確かにマナー違反ではあるのだが、教えられない状態でたどり着く文化だと思いますか?
浅草演芸ホールが教えてくれるわけでもなくて。
私語は、他人に直接的な不快感をもたらすから絶対にダメ。これは教わらなくてもわからないと社会人として論外。
この二つの悪癖は、人間としての悪行非道ぶりを比較したときにはかなりの差がある。
十把一絡げに悪い客だと論じるのは、無理じゃないですか。

不快に思うと同時に、自分自身の矛盾も感じた。
でっち定吉は先日、古今亭菊志ん師をいささか批判した。
師が落語協会マナー動画にケチをつけたからだ。

あー、歌る多師(落語協会理事)のポストに菊志ん師が噛みつくのだったら、全然わかるし共感もするなと。
先の落語協会マナー動画は、ユーモアたっぷり。いかにも噺家のシャレに満ちている。
あれに噛みつくなんてこの人頭おかしいんじゃないかと。
いや、初めて師の主張が真にわかった気がする。
ただの、兄弟子に逆らいたいひねくれものだと思ってましたからね。すみません。

歌る多師のポストには、ユーモアのかけらもない。
勝手に謝ってるあたりがまあ、かろうじてのユーモアなわけではあるが、返信ポストを見ると「師匠が謝る必要はありません」だって。
最低限のユーモアすら伝わっていないのであった。

改めて。
「客をどかして座るのがNG。高座の切れ間まで待て」
については、ちゃんとそう教わらなければマナー違反ですらない。
映画でも同じこと言いますか? 終わっちゃうけどね。
それを「どんな育ち方をしてるんだか」まで言い切ってしまうのは、傲慢が過ぎる。
「客に恥をかかせちゃいけない」という、演者側のマナーは発動しないのか?
言われた当人がポストを見ることはなさそうだが、そういうことでもなくて。

昔、鈴本演芸場でもって、前座さんがすでに喋っている際にはスタッフに、一席終わってから座ってくださいと声を掛けられた覚えがある。
そうやって、掟が確立されたうえで初めてマナー違反の問題となる。
また別の機会では、遅れてきた客たちは後方で、前座の一席が終わるのを待っていた。だが爺さん婆さんの夫婦が空気を読まず割り込み始めた。
空席がすでに少ない状況だったので、ちょっと後方パニックになりました。

三代目圓歌一門、ドンであるべき四代目がしくじった。
しかし、歌る多師も事件から本質を学ぶ部分が欠けてるんじゃないですか。師匠のルール、高座のルールを絶対正義のものとして振りかざしていたら、世間から反撃を食らうということを。
そもそもこの人、三番弟子の日るねさん(現・しん華)を追い出した点でも印象はよくない。
それはまあ、師弟関係を外から勝手にどうこう言うべきものでない。
しかし四代目の一門と同様、パワハラが蔓延してたであろうことはまったく想像に難くない。

芸協の師匠はこんなツイートしないよ、きっと。

作成者: でっち定吉

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10件のコメント

  1. アップお疲れ様です。
    私もこのポストを見て「え?こんなこと公の場で言って大丈夫?」と感じました。
    寄席のマナー動画もでっちさんの仰るようにあくまでもシャレのフィクションですし芸協の師匠方もせいぜいマクラでネタとしてイジる程度で収めるよなぁと思いました。

    1. いらっしゃいませ。
      ご賛同いただけ幸いです。
      絶対の正義があるとどこかで勘違いしてしまうのでしょうね。
      今回、強烈過ぎて、菊志ん師への不快感が吹き飛んでしまいました。

  2. 歌る多師、気が強いからなぁ・・・を落語協会の師匠連からも若手からも聞きます。理事会でも結構な頻度で噛みつくとか。まぁ筋が通ってない事(本人の気持ちの中で)納得できない事がお嫌いなんでしょう。ある意味同調圧力には屈しないキャラも必要?
    現しん華さんについては、のんびり不思議ちゃんキャラとは合わなそう。
    でも順調に成長されて真打になられたお弟子さんもいるので、そこは合う合わないの部分ですかね。

    1. いらっしゃいませ。
      気が強いのは構いませんが、ユーモアもなく特定の客を拒否するのはいただけません。
      池袋でも、割り込み客も、高座最前列を横切る客も見たことがありますが、知らなきゃどうしようもないレベルだと思っています。
      私も、高座の最中不規則発言を繰り返した客(これは芸協)のことは許しません。

      惣領弟子の和泉師は、真打を機に一門から独立させられたんだと思ってますが、どうなんでしょ。

  3. アップお疲れ様です。
    寄席に通いはじめてここ三ヶ月ほどの20代の若輩者ですが、ブログ拝見させていただいております。初めてのコメントおそらく、本筋から逸れてしまうのですが、失礼致します。

    先日大学の後輩と一緒に演芸ホールに行きました。彼女は寄席に来るのが初めてで高座の切れ目でお手洗いに行き、途中で戻ってきて席に通してもらいました。
    すると、高座が終わった後に通してくださった、私と同年代くらいの女性(マスクをつけていたので不明瞭ですが)に「高座が終わるまで外で待ってください」と言われました。

    言い方もすごく気を遣って丁寧に言ってくださったのでこちらも誠意を込めて謝罪しました。

    私は横切られてもあまり気にならず、また恥ずかしながらマナー動画を見ていなかったので、恥ずかしさと申し訳なさと丁寧に注意してくださった方に感謝でいっぱいでした。

    ただ、もし可能であれば寄席側の方で次の高座まで待ってくださいと入場を制限することはできないのかなともふと感じております。もし非常識なことを申し上げておりましたら申し訳ございません。駄文失礼致しました。

    1. いらっしゃいませ。
      いい話をありがとうございます。
      高座の最中、人をどかせて出入りするのは確かにダメです。
      ですが、知らなければ仕方ないことです。学習すればいいんです。
      「普通に育ってきたらわかるはず」はさすがに傲慢な決めつけ方です。
      ご婦人の注意の仕方が粋でいいですね。
      寄席のほうでコントロールは、できないでしょうねえ。そんな人員は割けませんから。

  4. 「4代目圓歌」師が、「天歌」さんに坊主を強要するはるか昔に、「歌る多」師、弟子を坊主刈りにさせた事、ありましたよね。
    弟子の二つ目昇進時に、お祝の手紙を書いた所、「お祝は、本人に言え、師匠には祝ってもらう必要は無い」との内容、人間性を疑う大変無礼な返信を頂戴した事があり、以降、彼女の高座は全て避けています。
    「無礼なのは、貴女でしょ」と言いたい 。
    「和泉」さんは完全に離れましたね。
    「律歌」さんも師匠から離れ、「橘之助」さんの下へ行かれたのかな?
    孤独な師匠は、先代の月命日に墓参りをして、何を報告しているのでしょうか。

    1. いらっしゃいませ。
      「弟子は厳しくしないと育たない」なんて法則はとっくに消滅しており、むしろ逆だと思います。
      自己満足のために厳しくする師匠は本当に地雷ですね。
      そして意外と、自分自身は厳しい修業をしていなかったりして。

      律歌師は離れたのですか。
      姉弟子は、三遊亭をもらえなかったのだと想像していますが。

  5. こんにちは。
    繁昌亭は協会直営だからか、職員が扉のところで途中入場を止めてロビーのモニターに誘導して「つぎの演者までこちらでお待ちください」と案内していますね(協会主催でない貸席の場合も含む)。モニターがある新しい席だからとも言えますが、寄席文化が一旦消滅した上方ならではの気遣いとも言えるかもしれません。
    歌る多師の落語は嫌いではないですが、当代圓歌を擁護するようなツイートをしていたりして、人物として「?」がつき始めています。菊千代師も高座外のご活動で「?」ですし、もはやお二人の高座では個人的に笑えません。繁昌亭の暮れの「女流ウィーク」ではこの二人ではなく、そろそろイキのいい新しい真打や二つ目を呼んでほしいものです。「女流」だけではもはや客は呼べないので、古びたお二人はもう結構です。

    1. いらっしゃいませ。
      そうですか、上方の女流企画では、初代「女真打」のお二人が出ているのですか。
      菊千代師、私は一度も聴いたことがないです。
      歌る多師も、自分自身の頭で常によく考えて生きてこなかったツケでは。
      確かにもう、女流は飽和してどこにでもいるわけで、企画も変えたほうがいいのかもしれません。

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