神田連雀亭ワンコイン寄席49(上・三遊亭好二郎「愛宕山」)

やっと神田連雀亭が、マスク不要になった。
10月6日にアップされた11月分の番組表発表の際、「9/11よりマスク着用についてはお客様の任意となりました」と掲示された。
決まったなら、早く言ってよ。知らないままひと月経っちゃった。
少なくとも、早急に告知すべき情報だとは誰も思っていなかったらしい。

マスク自由化については、私の書いたことも多少は貢献したのではないか。
まあ、勝手にそう思う分には構うまい。

神田連雀亭いまだマスク外させず(いい加減にしなさい)

とにかくマスク自由でいいのなら、出かけます。
変なルールがなければ、500円で二ツ目さんが聴けるここはパラダイス。
木曜日はさっそくいい顔付け。

愛宕山 好二郎
四段目 一花
ぷるぷる 吉笑

 

ビル入口には「マスク着用」の貼り紙が。
2階の寄席ではマスク任意だが、ビルに入る際は着用義務あり。
したがって正解は、「階段を上がる際だけマスクして、寄席で外す」。
知るか。
顔付けがいいので、30人以上入って大盛況。
マスク率は半分くらいか?

一花さんの前説のあと、三遊亭好二郎さん。
黒紋付に茶色の羽織。
最近カメイドクロックで繰り返し聴かせてもらい、急速になじみになった。
タダの会だって、ヘタなら行かないからね。
ちょっと語尾がモゴモゴするクセが抜けると実に完成度高い人。そしてそのクセはもう抜けている。

今日はトリが吉笑アニさんで。
私と一花さんと、賞レース用の噺があるので聴いていただこうということに、つい先ほど決まりました。
お客さんそっちのけですみませんが。

誰にも、たとえ吉笑さん相手にも語れないのだが、二人は今年のNHK新人落語大賞の本選に出るのかもしれないね。
3人の東京落語家のうち2人が今日出ていたらすごいことだが、そんなこともこの寄席にはあると思います。

好二郎さん、先日初めて、国立演芸場の花形演芸会に呼んでいただいたんですよと。
今の国立演芸場も改装に入ります。最後の機会に嬉しいものですが、困ったことに先約がありまして。
私長男なんですが、次男の結婚式の日だったんですよ。
悩んだんですけど、せっかくの機会なので国立を選びました。
弟は快くOKしてくれましたが、頑固な母が問題です。
なんで弟の式に出ないのよ。花形演芸会は栄誉なんだよ、トリは柳家㐂三郎師匠だよ。
誰よそれ。爆笑問題さんもゲストで出るんだけど。
爆笑さん……でもダメよ。

田舎の人は「国立大学」など国立に弱いと見た好二郎さん、策を弄す。
演芸場は国立なんだよ、歌舞伎なんかやるところだよ。じゃあがんばんなさい。
歌舞伎やる大劇場と一緒にしてしまいました。
まあ、改装前の国立に私が出るのは一度切りですけど、弟の結婚式はもう一回あるかもしれませんしね。

花形演芸会の選出を見ても、円楽党、中でも好楽一門の躍進ぶりがよくわかる。
好二郎さんの師匠、兼好師だけではないのです。

マクラをちゃんと振って、残り時間を12分程度にする。
やっぱりNHKかな。

始めた噺は、愛宕山。大ネタ中の大ネタだけど。
幇間なので、羽織は途中まで脱がない。
山登りの前にぶつぶつ言う一八のあと、いきなりかわらけ投げ。
恐ろしく大胆な編集。しかしまあ、他に削るところはあるまい。
山登りするという旦那に一八が、「なんで?」と訊いている。
このフレーズが後で繰り返されて活きる。

かわらけについて、一八が「この土を焼いて皿みたいにしたのを投げるんですか」と。わからない人へ、手を休めず説明する見事な工夫。
そして旦那も、口では説明せずにかわらけの端を噛んで切っている。
あっという間に小判投げ。すぐに20枚投げ終わる。
もちろん時間との戦いなわけだが、ちゃんと「旦那を止める間のない一八」というギャグになっている。
上手い編集。

現代視点では、金欲に駆られ谷底に飛び降りる一八を描くのは、やはり難しい。
客の前に、演者が自分自身を納得させないといけないのだろう。
この部分も上手い。
一八はためらうし、旦那はもうひとりの幇間茂蔵に(冗談で)押せと言うし、茂蔵は躊躇しつつも旦那の命令だから従うし。
なんとなくそうなってしまうのだ。

傘を振り回して谷底に落ちていき、羽織を手で上から引っ張って木の枝に引っ掛かる。
説明抜きでもわかる、見事な所作。ここで初めて羽織を脱いで脱出。

谷底で金を拾う一八。
ここで見事なオリジナルギャグが。
NHKに選ばれてたらネタバレになるから書かない。
ヒントは「船徳」。

勢いあるし、明るいし、とっておきのギャグもあるし、絶賛売出し中。
大きな拍手で退場。
この後着替え途中の吉笑さんが現れ、「10点ですね」。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。