柳家喬之助師は、落語協会でCMを作り、深夜早朝の安い時間帯に流そうというマクラ。
ここから、もうすっかり賞味期限が切れてるであろう「続きはWebへ」を振る。
2年前に池袋で聴いた際にも「続きはWebで」はもう古いんじゃないかと書き残してるが、まだやるんだ。
もっとも、演者本人がもう流行ってないことを語っている。当時、続きはWebでと言われWebサイト見てみたら、時間返せというようなコンテンツばかりだったと。
そのときと同じ、前座が女の子だとお茶が美味しいという、団塊かよという時代錯誤マクラ。
でも、なんだかこの人は乗り切るね。
ちなみに前座さんに女性がひとりもいなくなってしまったと嘆く。そうだっけか。
まあ、パワハラのせいじゃないでしょうか。
最初から芸協に行ったほうが、人生ムダにしなくて済みそうだもん。これはでっち定吉のひとりごとです。
演目は、その池袋で出た「宮戸川」。得意ネタなんでしょう。
爺さん婆さんがほとんど活躍しない、バッサリ編集した宮戸川。ただし、婆さんがなかなか起きないので爺さんが死んだかと思ったクスグリ入り。これは前回なかった気がする。
お花は積極的どころか、待ち伏せしている。
日本橋京橋みたいなまどろっこしいのもない。
途中で、客席に子供がいるのに宮戸川かよとつぶやく。
連れてくる親がおかしいんだって。
そりゃ、ネタ出しだったら親がおかしいかもしれないけど。
そしてサゲが、「続きはWebで」。
分類すると、うゑぶ落ちです。
楽一師の紙切りは時間調整のためか短め。
仲入りは柳家小満ん師。81歳。
私は3年振りだ。
若旦那を軽く説明して、湯屋番、だと思ったら紙屑屋。奉公先が違うのでようやくわかる。
まったく圧のない高座に、客のほうが積極的に乗り出していく。超ベテランの空気感がたまらない。
冒頭、若旦那がずっとイキな文句をひとりうなり続けている。
この噺って、音曲噺だったのかと。こんなスタイル、今はだれもやらない。
いつまでも寝ていて、家のサービスにまで文句をつける傲慢な若旦那だが、実に洒落人。いいなあ。
白紙は白紙、カラスはカラス、線香紙は線香紙、陳皮は陳皮、毛は毛。
これもまた、楽しいフレーズ落語。
イキな若旦那が、屑をより分ける姿にスライドするのがたまらなくおかしい。
この先は紙屑屋としてはこれしかない感じだが、教養人である若旦那の趣味嗜好が全部現れるので、噺が厚い。
「紙くずをより違えました」というサゲは初めて聴いた気がする。
やっぱり寄席に来ないといけない。
寄席に来て、小満ん師を聴かないと。先に出た、喬之助なんて浮かれた人もだが。
仲入り休憩の後再開前に、落武者の前座、小じかさんが客前でマナー講釈。
鈴本は丁寧だ。
こういうことをやっていて初めて、開演中の割り込みはダメ、と言えるわけです。
マナーモードもバイブ音がうるさいから消してくれ、画面を付けないでくれと丁寧。
浅草でもやって欲しいもんだが。
のだゆきさんはますますもって面白い。この日の色物さんにはこんなことばかり書いてるが、事実だから。
色物さんもずっと出てるとどんどん話芸が上達していくので面白い。
柳家小ゑん師は例によって、埋まったお客を見て「お客さんもやればできるんですね」。
喬太郎以外の寄席にも来てくださいね、やってますから。
私も先代小さんの弟子です。
そして入門した頃の筆頭は小三治でした。人間国宝が二人出た一門ですよ。
じゃあどうしてお前はそういう芸風なんだなんて。
1週間通って入門を許された話。
今なんか、気軽ですよ。明日から来なさいなんてね。
正確には昔も今も、楽な弟子入りもあればようやくというのもあるわけですが。
そして、柳家の秘密兵器、小三太について。
秘密兵器過ぎて、寄席では秘密なので、出ません。
青森から出てきた小三太が師匠に入門を願い出ている。
「噺家なんか食えないんだから」「じゃあ、師匠はどうして食えてるんですか」一歩も引かない。
しん平さんは三平師匠に弟子入りする際、出待ちしてて、緊張のあまり「師匠、ぼくの弟子になってください」って言ったんですよ。
本編に入ると、就職の面接のシーン。
会社は、ハンダ技研。ハンダ宗一郎が創業した、世界のハンダ。
なまりがひどく、なんだかわからないことを言う学生がやってくる。
面接官にも理解できない、一計を案じ英語で質問してみるが、なまった英語が返ってくる。
知らない噺だ。小ゑん師から、知らない噺を久々に聴けてとても嬉しい。
途中で「いぼめい」というワードが出て、知っているタイトルとようやく一致する。落語協会の台本募集の優秀作。
いぼめいは異母姪ではなく、形容詞。標準語にできない表現。
なんとも言えない感情を意味するのだが、具体的に理解できる使い方は最後まで出ない。
なんとなくはわかるんだけども。
この日初めての新作落語だが、実によくウケてた。
最近方言ブームで、標準語にできない表現もわりと話題になっている。
「いずい」とかね。
そういう背景があってできた落語なんだろう。
サゲが「いぼめーい」なのがたまらない。
おじゃましまーす!
前座に女子がいなくなった話は他の師匠も仰ってました。
寄席の楽屋に雛菊、杏寿、美馬の3人がいると楽屋が潤うって・・・ちなみに高座じゃなくて落語会の後の打ち上げの席で聞いた話です。
ただ、彼女たち、しくじりも半端ないらしかったですが。
でも女流真打も増えてるんで、これから女性の師匠方へ入門する前座さんも出てきそうですね。
和製トランプ師匠んとこはいないと思いますがw
いらっしゃいませ。
パワハラ事件のおかげで、しばらく女性の志願者ゼロになる可能性だってあると思ってますけども、
宝塚みたいに、「厳しさ」に憧れて入ってくるお馬鹿さんがいるかもしれませんが…