和牛解散に思う「安定している漫才コンビは対等でない」

ちょっと続きものを中断しまして、本日入ってきたニュース。
漫才コンビ、和牛の解散は私だけでなく、業界とファンに大きな衝撃を与えているようす。

報道を読むと、ボケの水田の遅刻と女性問題が引き金だという。
事実は知らないが、世間がまるごとそれを受け入れているのも面白いなと。ちなみに私も受け入れております。
人間関係に100%の真実なんてないわけだ。裏を読んだって構わないのに、誰も読まない。
世間がいいほうと悪いほうを綺麗に二分してしまっていて、珍しいことである。

漫才にストイックな川西と、バラエティを強化したい水田という意向の違いなんてことも書いてある。
しかし特に常設劇場の豊富な吉本の場合、舞台をこなしておいた上でのテレビという構造は絶対あるわけだから、これは決定的な対立には思わないけども。

川西は、必ずいいボケの相方を見つけて復活するでしょう。
フットボールアワー後藤みたいに。
劇場でウケて、M-1グランプリにも出て、そして改めてバラエティにも進出してくる。そうなる道筋がすでに見える。
芸風はやや、ベテランぽい穏やかなものになりそう。
いっぽうの水田はどうなんでしょう。コンビはもうないだろう。
バラエティでボケて、その場にいる臨時の相方が処理してくれればいいが。

和牛のバラエティ出演を、私はあまり見ていない。
だから一世を風靡した漫才師が、その後露出が落ち着いたという感覚でいる。違う感想の人もいるかもしれないが、その点はご容赦いただいて。
露出が落ちてきた背景には、ネタそのものの存在があったという仮説を私は持っている。
水田演じるややこしい、ハラスメント体質の人間は、実に面白い。
だが、これが浸透していくにつれ、徐々に徐々にだが、笑っている漫才好きの中にどす黒いものが蓄積されていったのではなかろうか。
なにしろ相方の川西が、ネタ合わせをしていて徐々に精神が蝕まれるというエピソードを語っていたぐらいだから。
そうすると、なんとなく気持ちの上で避けるところも出てくるのである。
そんなネタやるべきじゃなかったとは言わない。だが、そういう地獄の一本道も世にはある。

さて、和牛の二人の関係性は、対等からスタートして、徐々に川西主導になっていったようだ。
こういうのが、解散に至りやすいと思う。
安定しているコンビとは、最初からコンビ内に序列があって、それがずっと維持されるタイプだと考えている。
まあ、私が一番詳しい寄席漫才に例が多く、吉本お笑い好きにはピンと来ないかもしれないが。
さらにダウンタウンは?とか言い出すと困るのだが。

  • ナイツ
  • ロケット団
  • 宮田陽・昇
  • ホンキートンク
  • 新宿カウボーイ

ネタを書く方が、序列が上。
姉妹漫才のニックスはそうでもないかもしれないが、妹のトモさん(書かないほう)はネタ中でも姉をフォローしている。
いずれにせよ安定しているコンビ内においては、書くほうが、書かない相方を無下にしたりしない。
ひとりではできない芸を、相方のおかげで続けていられる感謝がないと。
中途半端に売れたコンビは、この根本がなっていない。
ちなみに「おぼんこぼん」は、落語の寄席には基本いませんので。

書くほう「あいつがもう少しうまく立ち回ればもっとウケるのに」
書かないほう「自分ひとりでウケた気になりやがって」

書かないほうが、不満を蓄積しつつ後輩を集めて軍団を作りたがるなんてのもお笑い界にはあるね。
実は尊敬もされないし、よくはない。

コンビのゴタゴタは非常に人間らしいぶつかり合いだとは思う。
だが本能をむき出しにしていてはいずれ潰れます。理性でなんとかしたいものだ。
ロケット団については、東京かわら版の特集を読み、以前記事を書いた。

東京かわら版7月号はロケット団特集

ふたりの関係性についていたく感心したもので。
ロケット団のツッコミ(ネタ書いていないほう)倉本は、寄席芸人の中でもかなり強烈なビジュアルの人。
倉本なしのロケット団なんてあり得ない。でも、相方に対し驚くほど謙虚。
貢献度を過剰にアピールし出したって、人としては無理のないところと思うのだが。
ボケの三浦もまた、相方に過剰な要求をしたりしない。まあ、自分に自信があるからなんだろうけど。

いずれにしても、漫才師は解散したらタダの人。
落語の寄席に、漫談で呼んでもらえることはまずない。漫談にスライドしてきたねづっちを除き。
現在、極めて貴重な例外が、相方を亡くしたホームランたにし師匠。まだ遭遇していないのだが、寄席によく顔付けされている。
こんな例は奇跡に近いのである。ヘイヘイホーホーの昭和こいる師匠だって呼ばれなかった。
先日亡くなった大瀬ゆめじ師匠も、漫談で呼ばれたりなんかしていない。元相方のうたじ師匠もまた。
寄席で安定の漫才を見せていたのに、せっかくのビジネスパートナーとなんで別れてしまったのか。理解できませんね。

作成者: でっち定吉

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