永谷商事の営む「永谷演芸場」は都内に3か所。
「新宿Fu-」こと新宿永谷ホールを入れると4か所だが、こちらは落語にはあまり関係がない。
3か所とは、「日本橋亭」「上野広小路亭」「両国亭」である。
このうち日本橋亭は、12月で建て替えのためしばし閉鎖。
決して大きくないこのハコがいったん消滅のため、大きな混乱が起きた。講談協会のクラファンであるとか。
これらも「寄席」なのであるが、「東京に寄席は4か所ある」というときの「寄席」には含まれない。
寄席というのは定義が実にあやふやなので、使うときはそのつもりで。
どちらかというと、「立川流と円楽党は寄席に出られない」というときの「寄席」のほうが、全体から見ると特殊ではある。
さて日本橋亭の閉鎖は、思わぬ波及をもたらした。上野広小路亭から立川流がほぼ放逐されるのである。
夜5日、昼2日あった立川流の寄席が、昼1日になってしまうのだから半端ではない。
よほど客が入らなかったものか。
今日はこの続編。
1月の上野広小路亭の番組が埋まっていた(顔付けは未発表)ので。
立川流は17日の昼1日だけ。
実はこの日の夜も立川流だが、「広小路亭夜席・立川流特選落語会」という触れ込み。
定席ではないぞということらしい。まあ、来月以降も入っているかもしれないが、微妙な位置づけではある。
立川流がごそっと抜けた後はどうなったか。
夜に休席が4日もあったりするのだが。まあ、これは貸席用に空けておいたのが埋まらなかったということなんでしょうか。
とにかく、15日まである芸術協会の定席はそのまま。
正月だから最初の5日間は特別興行で、夜まで通しでやっている。
6日以降は通常どおり。
なんだか、日本橋亭の直接的なアオリは感じられないな。
それ以外はというと、こう。
- しのばず寄席が増えた
- 二人会がやたらある
しのばず寄席は、上野広小路亭の名物で、各派混合。
すぐ近隣の鈴本に出ている落語協会員は除くが、それ以外実に多くの協会・団体から寄り集まっている。
落語だけでなく、講談、浪曲。そして色物も、ボーイズバラエティ協会とか東京演芸協会とかマイナー団体からも出ている。
協会の統一を願う人も多いが、そうした人からは理想の寄席であろう。統一を先取りしていると言えなくもない。
前座さんがいつも芸協の人であるところを見ると、業界的には芸協の寄席の拡大版なのかと思う。
そもそも、上野広小路亭自体が芸協の管理下にあるような恰好でもある。振り返れば、立川流が7日もよく入っていたなと思わなくもない。
さて、二人会もやたらある(みな、夜席)のだが、これもしのばず寄席と無関係ではない。
1月の二人会。
- A太郎・ナオユキ二人会
- 柳之助・王楽二人会
- 愛橋・はる乃二人会
- 鯉昇・貞友二人会
- 好楽・蘭二人会
- 松鯉・太福二人会
- 談四楼・神楽二人会
- 楽之介・貞弥二人会
- 今輔・萬橘二人会
ちょっとびっくりする数と、そしてびっくりする組合せ。
そしてこれらは貸席ではない。すべて「しのばず寄席特別興行」である。
確かに最近こういった興行はあったが、12月(4日)と比べても一気に増えた。
永谷商事って番組を組む人がいるのかな?
詳細は知らないが、実質的には芸術協会が組んでいそうな気がする。「談四楼・神楽」「楽之介・貞弥」なんて芸協メンバーでないものも含めて。
そして演者が自分で開く会だったら実現しそうにない組み合わせも中にはある。
個人的には、今輔・萬橘二人会に行きたい。
立川流の席がなくなったことも、しのばず寄席と二人会が増えたことも、業界再編の動きには思える。
そして、芸術協会には再編に関する明確な主体性があるように思える。これは昇太会長からも感じるところ。
ここで一気に立川流と円楽党を芸術協会が飲み込むとは一切思わないのだが。
とはいえ、実質的に芸協が取り仕切るのだという野望は感じる。
立川流も、ちゃんとした人ならしのばず寄席のほうで救済してもらえるのではないかな。
今後の落語界そして講談浪曲も含め、面白そうですね。
だから落語協会ばっかり行ってちゃだめですよ。時代の変化を見逃すことになる。