柳家小平太の会@墨亭(上・弥次郎フルバージョン)

寄席も落語会も、珍しくあまり行きたいところがない。
日曜はご無沙汰の人でも聴きに行くか。柳家小平太師。
昨年の8月、池袋演芸場で正蔵師の代演だったのを聴いて以来。
代演といっても、目当てにして行ったので、たまたまではない。
その際は二階ぞめき。

小平太師も、東京かわら版でチェックはしている。
らくごカフェあたりは検討している。

会場は東向島の墨亭。ここは初めて。
都営交通の1日券で出かけると安い。本所吾妻橋から金町行きバスで3つ目、向島5丁目が最寄り。
終演後は同じバスで葛飾区に向かい、20%還元で買い物してきた。
最近の外出時は、必ずこんなことをしている。
池袋のあとも綾瀬まで行ったし。

年季の入ったシャッター商店街「鳩の街」を抜けた先。
スタジオフォーや梶原いろは亭などとは、レベル違いの高難度ロケーションではある。文句じゃないですよ。
外から直接靴を脱いで上がる。
なんと、キャッシュレス決済ができて感激。それもAirPay端末があった。
タッチ決済で入れる寄席小屋なんて前代未聞。前代未聞である事実のほうが嘆かわしいけど。
阿佐ヶ谷のにもく落語もOKだが、ここは本業のためにキャッシュレス入れてるわけで。
私はもう、これだけで瀧口雅仁氏に大いなる敬意を払うものです。

客は4人。
開き直って書きますが。

弥次郎
一文笛
(仲入り)
柳田格之進

4人のお客さま。ありがとうございますと小平太師。
あまり入らないと聴いてましたので、お二人ぐらいかなと。
その倍ですから上々です。
どうぞ眠かったら寝てください。遠慮なさらず。

政界はウソつきだらけで大変ですね、嘆かわしいですねと。
特に笑いはない。
まあ、これを笑いにするのは実に難しいけども。客の政治見解もわからないのに不用意にネタにするのは危険。

ウソつき小噺。珍しい。
ウソばかりついてきた爺さんに長生きの秘訣を訊くと、「正直に生きること」。
この爺さんが亡くなった際、小金を貯めてるから町内で使ってくれと遺言を残す。爺さんの残した瓶の中には「これがウソのつき収め」。

大家を訪れるのは、もちろん弥次郎。
あんまり流行りの噺ではない。
これが、初めて聴くフルバージョンで驚いた。
大家は今日はなんのウソつきに来たんだいと。先日、座布団が安いと弥次郎に店に連れていかれたが、仏壇のリンの座布団だった。
しばらく顔見せなかったじゃないか。どこ行ってたんだい。
北海道、かと思ったらこれが仙台。
仙台で結婚式に出たら、花嫁さんかうっかりブッと一発やらかしてしまう。
あまりの恥ずかしさに井戸に身を投げる花嫁。
さらには花婿。お互いの両親も、もう生きていられないと身を投げる。
ついには出席者全員身を投げた。
最後にあたしも身投げしようとしたら、幕が出てきて満員御礼。

本当は京都に行きました。
街で盗みを働いたか、ボコボコにされている男。実はいいところの出。
歪んだ公家は金づちで叩かないと直らない。

そしてようやく北海道だ。
こんなくだり、存在すら知らなかった。
北海道からようやく、知っている弥次郎ロングバージョンである。

おはよう玉に、凍るしょんべん。てめえのをひっぱたいて目を回す。
品よくやりたいらしく、女便所の釘抜きはない。
それから凍る火事に、焼け牛に水。
山賊退治から、猪の金潰しに、これが畜生の浅ましさ。

なんと2時開演で、一席終わったのが2時25分。
こんなに長くできる噺だとは。

大家は積極的にウソを聴きたいタイプではない。
だが、だんだん引き込まれてくる。
なんのことはない、大家が一番最初に落語を楽しんでいる。
それを眺めて楽しむわれわれ客。

一席終えて小平太師、ふだんかかるのはバッサリ切られたものですが、今日は長いのを。
寄席でやる勇気がないので。ここでやってみました。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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