落語における「寄席」とは(上)

2024年も、検索ヒット率を上げていきたいのです。
ちょうど1年前に、こんな記事も書いた。

落語の検索はでっち定吉が全部引き受けよう

商業ブログでは、検索ヒット狙いは当然のこと。2023年は意識してこれをやってきた。

基本ワードを調べたときに引っ掛かる、コラム記事なんて大して面白くはないでしょ?
まあ、私もフィーもらったら書くし、書いたこともあるけど。

「寄席」ということば、もちろん「よせ」と読む。
「よせき」だと思っていたあなたも、覚えればいいのです。
それにしても、「昼席」「定席(じょうせき)」「上席(かみせき)」「下席(しもせき)」「端席(はせき)」などいろいろな「〇席」があるが、「せ」で終わる言葉なんか他にひとつもないけどね。
よせきと読んだって無理はないと思う。

寄席とは実のところ、多様な概念を持つことば。ひとくちには表現しにくい。

  • 圓楽一門会は寄席には出られない
  • 立川流は寄席には出られない

なんてことを気軽に言うのだが、この場合の「寄席」は最狭義の意味である。
円楽党(五代目圓楽一門会)は両国寄席と亀戸梅屋敷寄席とを開催しているので、寄席はちゃんとある。ただ最狭義の意味の寄席からすると、これはないことになる。そういうこと。

寄席は「興業の中身」であり「施設」である。だから意味が広い。
それぞれ見ていきましょう。

落語を聴ける場所

最広義の意味の「寄席」は、落語会を含む。
昨年私が聴いた中に「みずほ寄席」「プーク新作落語寄席」「西新井いきいき寄席」などある。
タイトルに「寄席」とついているが、一般的にはこれは「落語会」と称されるものである。
「寄席」とつけるのは間違いか? 別に間違いではない。
噺家や色物さんを呼んで開催される落語会を、寄席と称しているわけである。
落語会と称する会も、だから当然に多い。あと名人会。
名人のいない名人会なんて揶揄する噺家もいる。
気を付けたいのは、「〇〇寄席」に行ったあと、人さまに対し「初めて寄席に行ったのよ」と語ると、聴いた方のイメージとは恐らく異なる。
「初めて落語を聴いた」と語る方が誤解がなくていいと思う。

ちなみに、ヤフコメなんか見ると「落語界」つまりギョーカイのことを語るのに「落語会」と書いてしまう誤字が実に多いので気を付けられたい。

永続的に落語の興行を催す施設

歌舞伎座に行くといつも歌舞伎が観られる。
落語も同じように、常設の施設に行けば聴ける。これが最も一般的にイメージしやすい寄席の定義。だから場所を指すことば。
この意味の寄席は「演芸場」とも言う。
あるいは「寄席小屋」。

寄席のようで寄席じゃない

常設の寄席小屋なら寄席なのかというと、難しい場合もある。
国立演芸場の一時閉館でいったん終わったが、「国立名人会」というものがある。
これは寄席か?
「花形演芸会」ともども、入れ替わり立ち代わり演者が出てくるので、寄席でないとはいえない。
でも、寄席の「定席」ではないのだ。
定席とはまた定義が難しいが、常設の小屋における主たる番組である。
国立演芸場でも、明確に寄席とは言えないものも多数ある。「独演会」や「二人会」。
国立演芸場主催公演であっても、貸席であっても、これらは「寄席」とは呼ばないほうが無難。
微妙なものは他にも結構ある。
池袋演芸場の下席の夜は、落語協会特選会。
寄席小屋でやっていても、これは寄席とは言いづらい。落語会である。
国立演芸場と同じく一時閉館になったお江戸日本橋亭も、ここは寄席に一応含まれるのだが、寄席の定席は非常に少なかった。
「落語会ばかりやっている寄席」ということになる。
このあたりでもって、決して確立していない「寄席」の定義がひとり歩きしだす。

最狭義の寄席は「寄席四場」

一番狭い意味の寄席は、東京にある四つの演芸場である。

  • 鈴本演芸場
  • 浅草演芸ホール
  • 新宿末広亭
  • 池袋演芸場

こちらでは、月を10日ずつ分けて「上席」「中席」「下席」として番組を替え、寄席興行を催している。
「立川流は寄席には出られない」というときの「寄席」はこれ。
ただし、月の31日は定席でなく、余一会(よいちかい)。特別興行の企画もの。
このときに、立川流や円楽党の会が催され、「立川流が寄席に出た!」なんて報道されたりしていた。
寄席の定義を統一しないで一人歩きさせてもねえ。余一会はそもそも寄席なのかという。
たまに30日までの下席を、普通に31日まで延長してやっていることがある。企画が埋まらなかったのだろう。
あと、単純に閉めてるときもある。

前述のとおり、池袋下席夜も性質が余一会っぽい。
つまり、寄席小屋を借りてやっている落語会という趣き。

寄席四場では、落語協会と落語芸術協会の定席を交互に開催している。
ただし、鈴本は落語協会専用。専用と言っても協会が持ってるわけではなく、寄席と協会の関係は他と同様。
池袋演芸場は、下席が落語協会固定である。

「寄席五場」もある

2023年をもって一時閉館した国立演芸場は、寄席四場ではない。
顔付けのシステムや演者への支払いなど、よく見ればまったく異なる。
とはいえ、さまざまな芸人が順に出てくるスタイルは寄席そのものなので、こちらも寄席に含めることが多い。
ただし定席は昼のみ(コロナ前は金曜日の夜席もしばしばやっていた)で、下席がない。

続きます。

 
 

投稿日:
カテゴリー: 寄席

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. あけましておめでとうございます。今年も楽しく拝見させていただきます。
    初席の末廣亭へ行きましたが、初席だと顔見世公演みたいなもんで大勢の噺家さんが短い噺をパパッとやってお次へ・・・なんですがそれも新春の寄席の風情ですよね。
    高座をハシゴされる師匠もいれば、年齢の兼ね合い?で10日間で1~2回だけの師匠もいるようですがそれも味わい。

    ちなみに人気落語家さんだと年間千回以上の高座を務められるとか。一之輔師とか宮治師とかかな?ちなみに昇吉師は200回ぐらいといってましたがそのへんが標準?今年もいろいろな噺家さんとの出会いを楽しみにブログを拝見します。よろしくお願いします。

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