再び見台が出て、仲入りはこの日唯一芸協所属でない学光師。
鶴光師の惣領弟子であり、唯一大阪にいる。
関西のラジオで落語を聴いてる私にはおなじみの人だが、生の高座は初めて。
学光師がラジ関寄席の冒頭インタビューでもって語っていた東京の真打披露の様子を私がレポートしたところ、次のインタビューで、東京の人のブログに取り上げられたと語っていた。
同じラジオでは、師匠が東京の寄席に呼んでくれないと不平をこぼしていた。
文治師が呼んでくれればということだったが、上方落語家も多いので、文治師のセレクトに引っかかるのも大変だ。
マクラの盛り上がりがすごい。この会の常連が多いにしても、手練れである。
学光師、加齢でヒザが痛い。
なのでテレビCMを観て、サントリーロコモアを購入。
さらに世田谷自然食品と、富山のリョーシンも買う(初回が安いから)。
ヒザが痛くなる前は、テレビでこれだけサプリメントのCMが流れているとは気づかなかったたのこと。
そこから夢グループへ。
文珍師もそうだが、BSのCMネタは、東西の客をつなぐとっておきのアイテムのようだ。
別にヒザの痛くない私も、大いにのめり込む。
十分あっためたところで、ネタ出し木津の勘助。
師匠のものは喬太郎師の番組だったか、聴いた覚えがある。
学光師もさまざまな方法論をお持ちのようで、春團治系統のものもラジオで聴いた。
だが師匠の噺は、師匠の方法論で。
人情噺にたっぷりギャグを入れる。ただ、あまり地噺っぽくないのが不思議。
入れたギャグ、スベって全然OKな性質だが、スベると「鶴光作」。
大阪一の金持ち淀屋の娘が、木津の勘助に惚れたらしい。
勘助は貧乏人だが、筋の通った男。
淀屋が墓参の際に忘れた、20両の財布を届けてやったが、横の墓に財布を置いて失念する、金持ち了見が気に食わない。
1両のお礼を断って帰ってしまう。
それを気に、淀屋と交流ができる。
貧しい百姓の勘助だが、知識人。知らないことはない。
知らないのは中村メイコが亡くなったことだけ。
ストーリーは、もろ講談。
落語らしい、展開面でのおかしさは皆無で、笑いはすべて地のギャグ。
鶴光師が好きになると、こういう噺は心地よく聴けるようになるものだ。
わからない人も悩まないで「こういうもんだ」と思って聴けばいい。
実に楽しい一席で、仲入り休憩。
仲入り後、幕が開くと大喜利。しまいじゃないが大喜利。
司会の学光師は、ハリセン片手に立っている。
下手から順に、学光、竹三、ちづ光、希光、羽光、茶光、和光、空席。
空いた空席に、里光師が滑り込んでくる。太鼓を叩いていたらしい。
竹三さんは、二ツ目香盤では上にいるが、しばらく休養していた人。
大喜利だけ参加らしい。
「リハビリです」とのこと。
前座のちづ光さんは、直前に出たらと言われたらしい。
学光師によると、ハリセン大喜利を形にしたのは、師匠・鶴光ではないかということ。
「たつどし」を織り込んだあいうえお作文、客からお題をもらってのあいうえお作文など、まあまあ盛り上がりました。
物販の話題多数。
幕がいったん閉じて、ヒザは里光師。
マクラはなんだか謝っていた覚えがあるが。
お伊勢参り、東の旅を振って、軽業。
「大いた血」からインチキ見世物シリーズ。
「エリマキトカゲ」の見世物がある。喜六清八が入ってみると、噺家笑福亭里光が、襟巻きをしている。
エリマキとハゲだそうだ。
体を張って、ご苦労さまです。
扇子の上での、軽業も登場。
里光という人は、地味に、しかしながら明るいいい仕事をするので私は好きなんです。
その割に、寄席で聴いた際の取り上げ方が手短か。
芸風だから仕方ない。
トリは一門の総帥、鶴光師。
ほんまに高齢化社会でんな。
そしておばちゃん小噺。「あたしこれ3割引き」「あたしなんか5割引き」「あたし万引き」。
本編はネタ出し、薮井玄意。
医者ものであり、政談もの。初めて聴く(と思う)。
釈ネタをギャグを入れながら進める、いつもの作法。
すでに弟子の学光師も同じ方法論の噺を出してるわけだが、別に問題ないみたい。
貧しい人のために働く医師、薮井玄意はいつも貧乏している。
流行り病に罹患し、見放された大商人の治療を請け負い、見事治してしまう。
玄意、約束通りの高額請求する。投薬が1回百両、10回で千両。
しかし命を助けられたのに恩知らず、200両しか出さないシブチン。
玄意はさっそく奉行所に訴えて出る。
木津の勘助よりはストーリーがあるが、でもお白州ものだからといって展開にさほど起伏があるわけでもなく。
しかしながらやはり実に面白い。
そして、その面白さはすべて鶴光師の発するギャグのおかげというわけでもないのだった。
骨太の「おはなし」は面白いのである。
頭を下げてから、弟子全員を呼ぶ鶴光師。
すぐにやってきたのが惣領弟子の学光師。
鶴光師が「みんな帰ったんかいな」と言ってからバラバラ登場。師匠を中心に、左右に並ぶ。
みな着物のままだった。
師匠は弟子の活動について、すべてお見通しという感じ。いい雰囲気。
羽光が弟子を採ったんやてという話題に。兄弟子たちを差し置いて。
弟子が呼ばれる。ワイシャツ姿の弟子を見て鶴光師が、「サラリーマンやないか」。
羽光師が「かね太郎といいます」。サラリーマンかね太郎というシャレかと思ったのだが違う。
羽光師から1字取って、はね太郎。羽太郎かもしれないが。
正月の軽さも漂いつつ、ネタ出し長講をしっかり聴け、そしてほんわかムードの楽しい会でした。
本当にいい一門。また来たいものだ。