ドラマ「昭和元禄落語心中」第1話

NHKでいよいよ始まりました昭和元禄落語心中・ドラマ版。
かつてのアニメ版と同様、劇中の落語を中心にいろいろ書いていきます。

冒頭、「欲深き人の心と降る雪は、積もるにつれて道を失う」は「夢金」の一フレーズ。
八雲が喋っているのは、現実世界の浅草演芸ホール。劇中では浅草雨竹ホールだ。
「心中のお噂を」と八雲。品川心中なんだろう。

父・助六のテープで野ざらしの稽古をする小夏。
弟子入りしてきた「与太郎」の名付け親は、小夏だ。
就寝前の与太郎の元に届いている八雲の稽古は、「鰍沢」。

浅草の楽屋で八雲のジャケットを受け取る前座さん、顔が見えないが二ツ目の柳家小もんさんのようだ。
浅草の高座に上がり、死神を掛ける八雲。
呪文はドラマ向けに(?)短く、「あじゃらかもくれんてけれっつのぱ」

与太郎にそそのかされた小夏が、八雲に弟子入りを依頼し掛けるシーンが入った。そこから一転し、父ちゃんを殺しやがってと怒りの小夏。

与太郎が様子をうかがう中で稽古をする八雲。演目は「たちきり」。
円家萬歳、萬月の師弟(親子)は東京の噺家に設定が置き換わっている。まあ、萬月が何度も八雲に弟子入りを願いに行ったという点からは、このほうがスムーズではある。
与太郎を弟子に取った理由を、八雲に向かって端的に指摘する萬歳。与太郎が八雲に似てるからだと。
萬歳師匠は、助六夫婦の死の理由をよく知っているのだ。

高座でたちきりを語る八雲。
おかみさんが感情を抑えて淡々と語るシーンは結構いい。情感たっぷりに演ずるところではないのだ。
柳家喬太郎師匠は、ごごナマに出演し、複数の噺家が役者さんに稽古をつけたと語っていたが、クレジットによれば同期の入船亭扇辰師。
他にもいるのかもしれないが、少なくともこの後出てくる「鰍沢」については間違いないだろう。サゲのフレーズは若干違うけど。

酔った与太郎が芸者の前でやる噺はわけわからない。ホウキを持った定吉が、帰ってくる若旦那を迎える噺だが、そんな噺あったか?
八雲の回想で、助六が語るのは「野ざらし」。

与太郎の初高座。演目は寿限無。
私、寄席で前座が寿限無やるのを聴いたのはただ一度しかないです。みなさん持っているのだろうけど、もっぱら学校寄席などの特殊な場で掛ける噺のようで、寄席ではやらない。

小夏を座敷に呼ぶ八雲。
助六の型で野ざらしを演ずる。「この人針取っちゃったよ」まで。

なぜか、寿限無の言い立ての稽古を小夏に付けてもらっている与太郎。
その後本格的に小夏に噺を教わる与太郎。出来心だ。
新米泥棒の気持ちを語るところに、昔の兄貴が登場。
兄貴に脅される与太郎に、寄席に行けと八雲。高座に上がれと謎を掛けているのだ。
現実の寄席では、その日上がる前座は立前座が指示するのである。だから、寄席に行ったからといって必ず高座に上がるわけではない。
八雲師匠が、立前座に依頼でもすれば、与太郎が高座に確定で上がるのは不可能ではないかもしれない。ただし、寄席の運営は立前座の専権事項ではある。
ちなみに、出来心は前座噺ではありません。やっちゃダメというほどでもないけど。
特に注釈ないが、普通はやらない花色木綿までやり切る与太郎。

その後の師匠の独演会のために必死で覚えているのは「たらちね」。こちらはちゃんとした前座噺。
お嫁さんの名前からすると、喬太郎師が教えてるんじゃないかな。だが、これが助六の型なので面白くない八雲。

後で上がった萬月が、「今日は開口一番から名人でございまして」。
嫌味なやつだなと視聴者は思うかもしれないが、現実の寄席でもこんなのは普通。むしろ愛情の表れである。

八雲は鰍沢。ゲスト付きの独演会だから、実はこの前にもう一本、軽めの噺を掛けているものと思われる。
そして居眠りしてしくじる与太郎。頭を突っ伏してリアルな寝かた。
口調がいいと気持ちよくなるよね、とちょっとだけ弁護してみる。
客は寝てもいいけど、いびきはいけません。

続きます。

作成者: でっち定吉

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