ドラマ「昭和元禄落語心中」第3話

前回、「お好きな黒髪弾いてますね」がわからないと書いた。
私は転失気の和尚ではないので、知らないことは知らないと言ったが、ほどなくしてわかりました。「たちきり」ですね。
でもなあ、「落語のフレーズ」じゃない。ただのセリフ。なんでただのセリフを抜いてくるのかしら。
さて、ドラマの第3話。

ウェイターとして働く菊比古のバックには、笠置シヅ子の「買物ブギ」が流れている。
噺家らしい仕事ではない。
まあ、しかしながら二ツ目さんが落語で食えるようになったのは最近だと聞く。

野ざらしの稽古をする助六。初太郎はいつの間にか名前をもらっている。
二ツ目になったふたりだが、菊比古は働かなければならず、助六は遊びほうけながらしっかり稽古をして、売れっ子になっている。

雪をよけて歩きながら、別々の稽古をするふたり。
助六は夢金、菊比古は鰍沢。ともに雪の降る寒い夜の噺。
二人のニンがそれぞれ合っている噺なのはいい。

傘の上で毬を廻す大神楽は、鏡味仙三郎社中。落語協会の色物さん。
次の柳泉という噺家は、柳亭小燕枝師匠。演目は「長短」。
この後楽屋で「助六の奴、ずいぶん沸かせてるよ」というセリフまであった。小燕枝師匠の大好きな私にはとても嬉しいシーン。

高座に上がる助六は夢金。
大ネタで、寄席で二ツ目がやるような噺じゃないけどね。
ベテラン師匠の後に二ツ目が上がるということはそうそうない。まあ、寄席4軒掛け持ちらしいから。
このドラマ版、メインテーマの野ざらしに並び、サブで夢金が今後も登場するのだろうか?
殺しの相談を受ける欲張り船頭、熊さん。スリルとサスペンスに溢れる噺。

しかしいいところで客同士の喧嘩。困ったもんだ。
噺が壊れそうなところ、現実の世界にトンネルを通し、見事に解決する助六。
現代でいうと携帯が鳴った状態。この処理を隠しテーマにしているのだと思う。
サゲはNHKだからなのか、「自分の急所を握ってた」。キンはまずい?

菊比古は寿限無。これも二ツ目がやるのは聴いたことがない。というか、寄席では前座からも聴かないというのは前回も書いたところ。
菊比古の寿限無で寝る客。といっても、気持ちよくて寝る場合もありますから、寝ているだけで落ち込まなくてもいいけど。

師匠に稽古をつけてもらう菊比古。品川心中だ。
完璧すぎて隙がないことを師匠に注意される菊比古。遊ぶことの効能を説かれる。
みよ吉と話しても、固いことこの上ない。これでは確かに、色っぽい噺なんかまだまだ。

余一会の相談をする助六と菊比古。余一会とはリアルですな。
余一会は、大の月の31日にやる企画もの。通常の寄席である定席とは違う特別番組であるから、鹿芝居をやってもおかしくない。
鹿芝居は弁天娘女男白浪(白浪五人男)。
菊比古が弁天小僧で、助六が南郷力丸。
今年歌舞伎座で、音羽屋さんの芝居を観せていただきました。人気の演目。

助六の人気をやっかむ菊比古。現実世界の噺家の同期の関係にも、こういうことはよくあるはず。
現実世界でも、明るい一門に入ってしまっているのにそのニンがなくて、迷走している二ツ目さんを見かける。
明るい芸で人気があるライバルの真似をしてもダメである。師匠の言う通り、別の味を見つけないと。
いいのさ、愛嬌がなくても。それでも好きな二ツ目さんは現実世界にもいる。
このあたりのくだり、芸談として沁みますね。

楽屋でネタ帳を読む菊比古。ちゃんと、架空のネタ帳だ。

芝居で一皮むけた菊比古の高座は、なんと品川心中。
二ツ目がやる噺じゃないのは夢金と同様。
このお染さん、結構いい。変に女っぽく喋ることになしに遊女の雰囲気を出している。

今週は落語指導が隅田川馬石師だった。夢金の稽古を付けたのかな。
では、また来週

作成者: でっち定吉

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