神田連雀亭ワンコイン寄席52(上・桂鷹治「ぐつぐつ」)

台東区でPayPay20%還元が始まった。
落語と無関係にすでに2回出かけ、吉池や多慶屋、二木の菓子で買い物してきた。
落語のついでがあると、さらに行きいい。上野に近い寄席に行こう。
火曜日の連雀亭ワンコイン、水曜日の梶原いろは亭、スタジオフォーの三者天秤に掛けて、連雀亭へ。
大雪の翌日で、出足鈍いかと予想したら、普通に入っていた。
つ離れはしないけど。

ここを選んだのは、久々に瀧川鯉白さんを聴きたかったから。
その鯉白さんは受付で、ロン毛で怪しさたっぷりだが、にこやかに客を迎える。
そして、絶対に外さない桂鷹治さん。

権助芝居萬丸
ぐつぐつ鷹治
人間こわい鯉白

 

前説は鷹治さん。
ギャグはそれほど挟まないが、そこはかとなく面白い。
トップバッターは萬丸さん。
楽屋が換気のため寒くて、楽屋から羽織着てますとのこと。特に防寒には役立ちませんが。
客席があったかいので、ずっとここにいたいです。
アクリル板は取れたが、楽屋が寒いのか。大変だね。

芝居に出た話。
人と合わせるのが苦手なので噺家やってますが、舞台では役者さんと合わせなきゃいけません。
なのでお近づきになれず、開演2日目にようやく馴染んだという。
馴染んだきっかけはなぞかけ。この舞台にもなぞかけのシーンがあるが、その場面は見ているだけ。
だが、そこは噺家。役者さんたちに振られると、即座に返せる。楽勝楽勝。
おかげでその後は、朝の挨拶の前になぞかけのお題を振られるようになった。

素人芝居を振って、蛙茶番、だと思っていたら権助芝居(一分茶番)。
この2種類の噺、冒頭がまったく一緒のものがあるのだな。知らなかった。
今年のおかるはオスだんべ、のあと、特にひねりのない(誰が考えたかは知らないが)サゲ。
権助の芝居エピソードはなかなか面白かった。
田舎芝居だけで持たせなきゃならないから、難しそうな噺。まあ、めったに出ないけど。

二番手が鷹治さん。
お足もとのお悪い中をお越しいただきありがとうございます。
こんな天気の日は、今日寄席はやってるのかと問い合わせの電話がじゃんじゃんあります。出演者から。
今日は連雀亭休みかと思ったら、夜になっても番頭さんから連絡がありませんでした。なので来ました。
楽屋が寒いんで、換気を切ってしまいましたとのこと。

鷹治さんは、朝から師匠宅に出かけて雪かきをしてきたそうだ。練馬は半分畑なので、雪が積もっている。
なので筋肉痛で、眠い。

キッチンタイマーが壊れたので新しいものを買おうと持ち歩いていたら、逮捕された。タイマー所持。
わりとウケる。

そこから、タニタのしゃべる体重計の話。
さらに炊飯器。関西弁のカーナビ、江戸弁のATM。
これはもう、名作「ぐつぐつ」のマクラというか導入部。
鷹治さんが持ってることも知らなかった。芸術協会でやる人いるのかな。
そして、小ゑん師にCDでいいよと言われたわけでなく、ちゃんと対面で稽古を付けてもらったのだろう。所作がついてることでわかる。

炊飯器については、新宿2丁目に行くと昔からオカマが喋ります。ケツの穴に差し込む共通点と語ったところで「教わったとおりに喋ってます。後で抜かなきゃいけませんね、時代的に」。

鷹治さんは非常に古典落語の上手い人だが、この日の冒頭、自分のマクラでもって、その喋り方がとてもいいなと改めて感じた。
意図的に抑揚を減らし、客の感情を大きくゆすぶらないことで、客にシンクロしていく。
いっぽう、今日やるのは人の噺。
小ゑん師はもっとくっきりはっきり、抑揚豊かに喋る人。
その人の作った噺を、抑揚を押さえた人が語る。化学反応が起き、なんだかとても面白い。

ロールキャベツ(フランス野郎)が入っていたので、教わったのはそんなに昔じゃないはず。二ツ目だから当たり前か。
小ゑん師からは聴いたことのない部分があった。
小ゑん師の原典にも出てくる、おでん屋にいるカップル。
女が男にオリオン座のことを聴く。そして男に尋ねる。
「オリオンって、立ってるでしょうか、座ってるでしょうか」
「うーん、棍棒振り回しているから、立ってるんじゃないの」
「残念。座ってます。星座ですから」ぐつぐつ。
星座の噺だから、小ゑん師に教わったと思うのだけど、私は知らない。
もうひとつ、この続きがあった。
鍋の中のイカ巻きが羨ましがって、自分でぐつぐつ。

鷹治さんがマジメに、タマゴの所作をやるから面白い。
ちなみに、親父が昆布を探して鍋をかき回すので、みんな右往左往だが、この所作が船徳だった。その説明は入れない。
あと、中身の詰まった「ふくろ」さんは、花魁の座り方。このあたりはオリジナルかな。
さすがに「こぶ、どうした? 正蔵になった?」はない。

寒い日だからこれを出したのだろう。
古典落語は意外とないものな。時そば、うどん屋、それから大ネタの二番煎じぐらいで。
今夜、おでんにしようかしら。
冬にぐつぐつを聴いた人のおでん率は極めて高いものと思われる。

続きます。
 
 

 

作成者: でっち定吉

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