正楽、小柳枝などの名跡の今後について

紙切りの林家正楽、芸協の重鎮春風亭小柳枝、そして太神楽の翁家小楽と、芸人が次々と鬼籍に入った。

正楽師匠の思い出は多数。
晩年の高座はもう、めちゃくちゃでしたね。でも面白かった。
鋏試しでもらった馬ぐらいなら保管してある。
もっともらっておけばとは思わない。高座の思い出のほうが重要だ、
「暗くなります」
「とりあえずビール」
「おせんべいの袋が開かないから開けてくれ」
こんなフレーズ思い出すと、泣けてくるね。
池袋の「正楽のクリスマス」一度行けばよかった。

春風亭小柳枝師は長くお休みしてたから、ブログ始めてからは一度も聴いてない。
以前はよく、日本の話芸などに出ていた。脳梗塞で休養に入る直前まで、最盛期だったのでは。
表舞台から突然消えた印象が強い。
最後にお見掛けしたのは、アロハマンダラーズである。
2020年の夏、コロナ禍でガラガラの寄席の大喜利企画で、小柳枝師が車椅子で登場し、歌っていた。驚いた。
公開リハビリみたいだった。
その後、アロハマンダラーズで登場したかどうかは知らない。

それから太神楽の翁家小楽師。
別に病気とかいうことでなく、若いふたり(和助・小花)に任せて実質引退したものと思う。
私が覚えているのは和楽師匠と兄弟で出て、養成所上がりの若い和助さんとトリオの時代。
小楽師匠は、和助さんを「バア」と脅かす役割。あれ、なんの芸のときでしたかね。

各師匠がた、亡くなったばかりのところ失礼ではあるのだが、今日はその名前がどうなるかというのを想像で。
芸人死しても名は残る。
もちろん、名前がすぐ譲られるなんてことはない。三回忌が済んでから。
例外もある。このたび古今亭志ん松さんが、真打昇進時に志ん橋を襲名するかもと書いたら、その通りになった。
「継ぐに違いない」と思っていたわけではなくて、「継いでもおかしくない」だけど。
この前例は志ん五であり、夢丸。

林家正楽の先代(二代目)は、二楽師の父である。
次の正楽は、二楽師であろう。
考え方としては、先代正楽の息子が現に正楽を継いでいない以上、亡くなったばかりの当代の弟子(楽一)が正楽になるようにも思える。
だが、早くから、「次は二楽」と決まっていたのではないかと。
そして血筋でもって、八楽さんがその次の正楽になる。
噺家が血統で名前を継ぐことを嫌がる人もいるが、色物さんだとわりとすんなり理解するのではなかろうか、
楽一師匠も面白いですがね。「あ、揺らしませんので」。

正楽師匠も、猫八襲名の披露目に並んでいた。
馬風ドミノのあと、元に戻る際に権太楼師と場所が入れ替わっているという小ボケはやたら面白かった。

小柳枝は亡くなった当代が九代目。
次が十代目というのは、なかなか続いている名跡である。現在一番代数が多いのが文治と馬生で、ともに十一代目。
弟子が継ぐことはまずないだろう。襲名披露のできる弟子はいない。
しばらく塩漬けだろうが、仮に復活するとなったら、今の二ツ目の真打昇進時か。
だが、一番近いと思われる柳昇の孫弟子、曾孫弟子あたりはピンとこない。
新作派が多いこともあるが、古典をやる人でも小柳枝というイメージの人はいないような。
イメージなんてどうでもいいと言われたら、まあそれはそうなんだが。
ちょっと遠いが、春風亭かけ橋さんが継いだらぴったりな気がする。抜擢されない限り、7~8年後。
四代目の小柳枝は、のちの六代目柳橋。かけ橋さんはこの曾孫弟子にあたるので、あり得ない話ではない。

春風亭柳枝という名跡が落語協会で復活したのがどうなんでしょうかね。
「小」がついていても、小柳枝はあまり柳枝と関係してこなかったようだ。
まあ、小柳枝もいい名前だから、気にしないで名乗るところだろうか。

小柳枝の行方も気になるが、もっと気になるのは柳昇。
春風亭柳昇の名が襲名されないのは、小柳枝師が反対していたからのようだ。
昔昔亭桃太郎師がいっときブログをやっていて、そんなことも書いていた。桃ちゃんに異を唱えるとしたら、小柳枝師のほかはない。
これで一気に柳昇襲名が進むことも考えられる。
弟子世代で名乗るとしたら昇太師しかないのだが、なさそうな気がする。
やはりその弟子が本線。
私は惣領弟子の昇々師が昇進するとき、柳昇になるものだとずっと思っていた。実現しなかったけど。
弟弟子から柳昇が出るんじゃないか。
ただ、新作の一門なのに、下の方は古典メインの人ばっかりだ。どういうことだ。

昇々師がもっと出世すれば、襲名披露ということもあるだろうが、現状ではどうかな。
それよりは同じ孫世代の、瀧川鯉八のほうがありそうか。
真打昇進時の襲名なら、瀧川一門から鯉白というビックリはあり得る。
その次は、曾孫弟子世代だが、昇輔さんとか。

余談だが「桂米朝」も、異を唱える人の没後に、吉弥師があっさり継ぐと思っている。
いえ、異を唱えられなくなる日を楽しみにしているわけじゃないですがね。

最後に、太神楽。
翁家和楽という名前は、間違いなく和助師が継ぐのだろう。
その際、一緒に奥さんの小花師が、小楽になるのでは。弟子であるし。
色物の襲名は、落語協会では江戸家猫八しか行われていないが、人気の翁家社中だったらありそう。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 更新ご苦労様です

    名跡の後継者といえば古今亭志ん馬の名前も7代目の志ん馬師匠が亡くなられてから襲名の話を聞かないですよね

    1. いらっしゃいませ。
      今度昇進の始さんが継ぐとか、話だけはあったのではないかと。100%想像です。
      もう間に合わないと思いますが。

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