あざみ野落語会(中・柳家花いち「井戸の茶碗」)

昨日書かなかった、ごはんつぶさんの、お爺さんに席を譲るマクラを思い出した。
これも、呼吸一発で大ウケでありました。

続いて花いち師。チラシを1枚手に持って高座に上がる。
ごはんつぶ君から話がありましたけども、今度池袋演芸場でトリを取るんです。
寄席は12時半ぐらいからやってまして、4時半までです。途中から入っていただいても構いませんし、途中で帰っていただいても構いません。ぼくの前に帰らないで欲しいんですけど。
そのまま夜までいていただいても構いません。入れ替えありませんから。
チラシがありまして、これで500円割り引いて2,300円になります。あとで配ります。
これ3枚あったら1,500円引きになるかというと、そうはならないんですけど。

といいつつチラシ配ってなかったのが粗忽な花いち師らしい。1枚欲しかったのだが、幸いツイッターに画像が出ている。
池袋は東京かわら版割引がないのでチラシ割引は貴重である。
師匠は出ないが、一門総揃いの番組。仲入りは小ゑん師で、ヒザ前はさん喬・小満ん交互。
ちなみに池袋中席の夜は、市馬師。
居続けはしないな。圓歌とか志ん輔とか顔付けされてるし。

4回目になるこの会は、チラシのポスティングもしてるんです。
おうちにチラシが届いた方、いらっしゃいます? あ、お一人だけですか。それで来られたんですか? (「第1回にも来ました」)。

今日この後は、仲入り休憩があって、その後もう1席ごはんつぶ君です。
安心してください。休憩ありますから。
落語初めての方だと、「仲入り」って意味がわからないことがあるようで、帰っちゃう方がいるんですね。帰らないでくださいね。

正直清兵衛さんを振る。
井戸の茶碗か。ごはんつぶさんが古典だったからてっきり新作かと思った。
この落語会の客層に合わせているようだ。
花いち師、寄席では新作派として扱われているようで、実質新作縛りみたい。今回の池袋のトリも、たぶん古典はできないだろう。
実際、私も新作に遭遇するほうが多いが、でも花いち古典は面白い。
ごはんつぶさんは、古典は意外と本寸法の芸だけども、花いち師は最初からだいぶズレている。
ズレ具合(本当は、意図的なズラシ)が絶妙で、だんだん癖になってくる。
かつて聴いた「茶の湯」や「お見立て」などが積み重なってきた上にこの日の井戸茶がドンと重なって、なんだかもう、めちゃくちゃハマってしまった。
ズレというか、そもそもふざけている。
ふざけた芸だと、表面的に面白くても不愉快なスイッチが入ることがある。
話芸は難しいのだ。でも花いち師だと入らないんだなこれが。

さすが新作派で、既存のギャグにはあまり頼らない。
高木さまのくず屋いじりも、激しくはない。「(もう被り物を)脱いだのか」「長い顔だな」ぐらい。
清正公さまに集まるくず屋たちに、街で評判だよと敵討ちの話をして聞かせるのは、仲間ではなくて茶店の婆さん。
清兵衛さんに、首が落ちたんじゃないのかいと聞かせるのもこの婆さん。
既存のクスグリは「あま~い甘酒」「お前にはやらん」ぐらいかな。
細川屋敷を通り過ぎようとして、つい声を上げてしまい、変顔でごまかすというギャグは秀逸(でもないかもしれないが、笑った)。

ふざけた井戸の茶碗なのだが、ふざけ具合のほどがいいこと。
骨格である「いい噺」自体を壊すふざけ方ではない。
ふざけ具合そのものでウケを狙うと、外れたときに致命的。だが、そういうやり方ではない。
ズレ具合、ふざけ具合が気に入らない古典落語好きがいるのも容易に想像はつく。「本寸法マニア」でない人ですらなお。
口調も、やたらシロウトっぽいし。もちろん本当のシロウト芸はこんなのではないが。
でもなんというか。「ふざけ具合を決めた上で、この範囲内できっちりやろう」なんてムードを感じる。

そして千代田卜斎は、仏様から出てきた50両を目の前に、激しく葛藤している。手が伸び掛けてやめて、清兵衛にツッコまれている。
別に、人としての葛藤を描くなんて深いテーマは一切感じない。ただいじってみたかったのだろう。
茶碗の化けた150両の際は、清兵衛は泣いて大家に相談している。

花いち面白古典は、落語会で聴きましょう。
寄席では新作を楽しみに。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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