拝鈍亭の柳亭こみち2(上・安兵衛狐)

大型連休、ようやく始動。
今月は、行きたい会が多いですよ。

こどもの日は拝鈍亭。
柳亭こみち師と、ご主人の漫才、宮田陽・昇の会。
毎年恒例の会であり、2年前に出向いて以来。

女流のパイオニアのひとりこみち師ももちろんいいが、最近の陽・昇はもはや神々しいばかりである。

客は70人ぐらいか。大盛況である。
こみち師が一席やって、漫才のあと仲入り休憩、最後にもう一席落語という構成。

こみち師登場。
今日はなぜかわかりませんが、楽屋に家族がいます。
このあと出る漫才師の、どちらかが家族です。
先ほど、お客さまの様子を覗いて、品のいいお客さまだってそう言ってました。
ちなみに、ふたりのうち、私に似てるほうが家族です。
息子がふたりいまして、長男が父親似で、次男が母親似なんです。でも、全員がなんとなく似ているという家族です。

小学生のお嬢ちゃんが客席にいる。そんな後ろでいいの? 前来てもいいのよとこみち師。前に来るとお姉さん怖い?

国立劇場で、ご住職の長唄の会に行った話。
そこからご自身の出囃子(供奴)も長唄ですと。
この唄で踊りを披露した話。三味線から着付け等、全部費用が自分持ちで大変だそうな。
それだけ頑張って準備したが、裏方さんがリハと同じところで間違ってしまったと。
この人、自分の責任なのに私に食って掛かりました。
なんでも偉い方のご子息だそうで。
だから二世は! 客、拍手。

小学生にもわかる小噺をと、ドライブ猿の小噺。
オーバーアクションでウッキウッキ言ってて、面白い。
この小噺は、こみち師がいちばん面白い。

お嬢ちゃんがウケてくれて、これでもう大丈夫と。
落語にはこういう、動物が出てくる噺がありますと振る。

長屋の独身男性4人。
偏屈な源兵衛と安兵衛は仲がいいが、あとの二人とはよくない。
変わったところから入るが、安兵衛狐だ。
東京ではこれは古今亭、金原亭の噺でしょうな。珍しい。
こみち師、純然たる古典は意外と珍品派である。

そういえばモノマネ得意の林家けい木さんが、当代馬生師と、馬石師の安兵衛狐のサゲの違いというのをやっていた。
「おじさんも狐だあ」が馬石師。

この噺結構好き。上方では天神山。
偏屈な源兵衛、長屋の二人に酒ぶら下げて花見でも行くのかと訊かれ、つい花など見ない、わしゃ墓を見に行くと答えてしまう。
答えてしまった以上、律儀に谷中まで墓を見に行く。
女の墓を見つけて酒盛り。そしてしゃれこうべがむき出しになっているのを見つけ、酒を掛けて供養する。
早速女の幽霊が訪ねてきて、かみさんのように扱っている。
隣の安兵衛が羨ましがって真似をするが、安兵衛はたまたま狐を助けたので、狐がかみさんになる。

呑気な噺だが、人情が漂うところが噺の味。
源兵衛も安兵衛も、偏屈だがちゃんと人助け、動物助けをしている。

二人のかみさんは、こみち師の地でなく、ちゃんと作り込んだ造形。
幽霊を実質かみさんにした夫婦は、夫婦喧嘩も楽しそう。

本来のストーリーでは、二人組がつい狐のかみさんの正体を暴いてしまい、かみさんが出奔してしまう。
だが、それをよしとしないこみち師、このくだりを省いていた。
このままじゃ狐に長屋が乗っ取られると心配し、不在の安兵衛を探しに、隣町のお婆さん(おじさんではなくて)を訪ねて行くのである。

お婆さんは、こみち師の得意なキャラ。
耳が遠くて、二人組のあいさつがよく聞こえない。
二人組が、聞こえないのをいいことに「早くくたばれ」とかろくでもないことを言い放つくだりは、幻の前座噺の八九升に似ている。

ちょっとした改変のお陰で、平和な噺が平和なまま。
30分。

それから宮田陽・昇。
「あの人が拍手してない」でなく、最前列の客に声を掛けるという変則ワザ。

陽さんが、昇さんをからかう。
今奥さんの高座を覗き見して、こんこん言ってるあいつ可愛いなって言ってましたよ。
俺はそんなの誰に言ったんた。ひとりごとかよと昇さん。

日本地図から。
広島はどうした! 広島は島根に吸収合併された。
よりによってなんで島根なんだ。今年からな。
だから今年から島根東洋カープになった。
やだよそんなチーム。広島東洋カープでお願いします。

2年前にも聴いた奉納漫才のネタから、ほぼ知っているが実に楽しい。
陽さんの口座にいったんギャラが振り込まれるので抜き放題。
リトル水原と呼ばれてます。
リトル谷繁と合わせて、リトル&リトルだって。既存のネタに新たなのが追加されていくのでたまらない。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。