久々の亀戸梅屋敷へ。
前回は11月30日。6代目円楽最後の弟子、前座の楽太さんを激賞している。
楽太さん、二ツ目になって名が「萬太郎」または「萬楽」になると予想したのだが、萬次郎でした。
萬橘師の2番弟子になったのだから次郎のほうがすわりはいいが。
その後亀戸だと、無料のカメイドクロック落語会のほうに行っていたのだが、なくなっちゃった。
GWには復活するかと思ったが、落語はなく大道芸ばかりやってるみたい。
そんな中、亀戸梅屋敷寄席は、江東区から感謝状をもらったのだった。文化向上と地域の活性化に寄与したから。
確かに江東区にある常設小屋は貴重だ。
好楽師の席だから楽屋を取っ払って広く使う。確かに多めだが、溢れかえるほどではなく、今日は50人に届かない。
好楽師は、昨年5席聴いている、
最近特定の演者に集中せずいろいろ聴いている中で、5席は多いほう。
その代わり、決して持ちネタの少なくないはずの好楽師の演目、被るようになってくるのは仕方ない。
本日も、通算4度目の「三年目」。
まあ、被るようになってからが師の持ち味発揮かもしれない。
親子酒や肝潰し、一眼国や風呂敷を聴きにまた来るさ。
木戸銭は千円から1,200円に値上がり。
強情灸 | げんき |
夢の酒 | ぽん太 |
へっつい幽霊 | 鳳笑 |
(仲入り) | |
錦の袈裟 | 小円楽 |
三年目 | 好楽 |
受付を一人でしていた前座のげんきさん、着物が緑色で、痩せ型で、なんだか柳家わさび師みたいなシルエット。
髪の毛はマッシュルームカット。
期待している人だが、ますます上手くなり、ますます声を張るようになっている。
いつものように女性から声が飛ぶ。
なんだか噺家らしい風格を急速に身に着けている。
メクリはまだなく、開口一番。
江戸っ子の強情について振る。
湯屋の「ぬるすぎるから動くな」のマクラ。
これ、強情灸付属マクラでしょう。
どう考えても前座噺じゃないけどね。
前座の強情灸はただ一度、まもなく二ツ目昇進というタイミングで金原亭小駒さんが掛けていたのを聴いただけ。
その後出てきた二ツ目時代のわさびさんに、当てこすられていた。
だが面白いもので、げんきさんがこの噺を語ると、非常に前座噺っぽい。
これはいい意味。
二ツ目になってから掛ける噺だが、みなさん必要以上に頑張っちゃう気もする。江戸っ子らしくやりたいと。
だがげんきさん、噺に深入りしない。
噺の世界からしっかり距離を取って語るその具合が、とても前座噺ぽくて好ましい。
げんきさんが描く二人の江戸っ子、ぜんぜんそれっぽくないのだが、噺と距離を保っているおかげで、極めて記号的に描かれる。
無理しない強情灸は、実に心地いい。
記号的なおかげで、どう見ても男っぷりのよくはない演者から、しっかり意地っ張りの江戸っ子が見えてくる。
自覚してこうしてる気がする。
クスグリもムダに頑張らないおかげで、よくウケる。
ずっとおしりのほうですとか、思ってやしないかと思ってとか、まさかやらねえだろうとか。
最後がバーベ灸。
もともと、一生懸命やると白けるものばかり。
施術する人に変に訛らせたりする必要はない。
二ツ目になっても、この方法論を磨き上げそう。
本当に兼好師の教育はスゴい。
次はぽん太さん。
この人も目当てだが、来る気になってからは二ツ目枠が誰だかいったん忘れていた。なので改めて嬉しい。
私のときは声掛からないんですね。
今、うちの前座や若い子は大人気で。私だって若いんですが、いや本当はそんなに若くないですけど。この(空間では)相対的に若いですよね。
私は打倒げんきですよ。そして打倒萬次郎です。
米国公演の話。
一人で回ってきた。デトロイトにも。
字幕監修者の米国人女性助教授は、ぽん太さんと同世代。
日本語のシャレを上手いこと訳してくれて大ウケ。でも、オレいらないじゃん。
嫉妬の噺。
悋気の独楽とか権助提灯だろうと。珍品好きのぽん太さんは、珍しめの悋気の火の玉かなんて。
だが、夢の酒。
あ。これも悋気の噺か。落語協会だと流行っている気がするが、でも珍品のほうかもしれない。
細かい工夫が多い。
若おかみ、お花が若旦那の夢の話を、大旦那の前で再現する。
そもそも若旦那の語り自体、カミシモ振って劇中落語なのだ。語りもスピーディで、劇中のセリフの入れ替わりも瞬間的で鮮やか。
これをお花が、違う角度でもって再現する。
「泳ぐように出てくる」ご新造を、お花が再現するのはとても楽しい。
違う角度から同じ話を語ることで、客の脳裏に、夢がリアリティをもって映し出されるのだ。
大旦那は、「昼寝したことがない」なんて極端なキャラではない。昼寝すると夜寝られないからイヤがってるのだ。
「淡島さまのお札がないだろう」とお花に言うが、お花はなぜか持っている。
夢に出現した大旦那だが、ご新造はやっぱり泳いで出てくる。
このご新造、大旦那のほうも狙ってるみたい。まあ、大旦那は酒のほうが好きなのだけど。
楽しい一席。