NHK演芸図鑑のホストは、4月から桂文枝師。
巻末の対談のお相手は、落語協会副会長の林家正蔵師。この人もたびたび番組のホストを務めている。ホスト同士の対談は珍しい。
2週間分の録画をまとめて観た。
愛人が孤独死し、そして本宅も顧みなかったという(知らんがな)文枝師、その人物評価は私の中で微妙である。
落語のほうも、偉大な人なのは重々承知のうえだが、それほど好きじゃないし。
文枝落語を否定しているかというと、必ずしもそうでもないが。東京に持ってきた文枝新作は、適度な異化効果があって面白くなるものも多い。
まあ、「そういう人」だという認識。
桂春蝶よりはずっといい。上方落語協会の元会長と、比べるような相手じゃないけども。
脱線するが、上方落語協会の会長選で、文枝担ぎ出しがあったというのは驚いた。
笑福亭銀瓶師が名乗りを上げたことは報道もされていたが、文枝担ぎ出しは寝耳にウォーター。
しかも僅差まで行ったのだと。
上方落語界も、所属事務所が3つあることなど、もともと一枚岩になるのが難しいところはある。
しかし、当選した仁智師と同じ、吉本から反旗をひるがえされるとは。
油断もスキもないですな。
まあそれでも、元会長の肩書はいつまでもついてまわる。東京落語界で、それを利用しようとする動きもあるわけだ。
知らなかったが、文枝師、鈴本でトリ取るそうで。6月中席昼である。
落語協会員以外の主任は、皆無かどうかは知らないが、かつてなかったことではあろう。
仲入りは小朝師。ヒザ前は、馬風・木久扇交互。
仲入りの前が翁家社中で、その前に正蔵師。
これは落語協会百年興行のひとつである。
寄席はワリだから、吉本の劇場でやるのと比べてそんなに出ませんがと断って。
そしてこの対談も、次期会長としての正蔵師の披露目も兼ねているのでは。
正蔵会長、なんでだと思う人も多いだろうが、もう外堀はすべて埋まっている。
文句のある人は、芸協を聴きに行きましょう。
偏見かもしれないが、「こぶ平ヘタクソ」と吠える人に限って、芸協嫌いな気がするけども。
芸協も嫌いなら、立川流にでも行ってください。
まあ、私も正蔵会長には心配もあるのだけど。あまりにも落語協会周辺の人脈だけで動いているようだから。
だからこその文枝招聘なのか。
文枝師に声を掛けたのは小朝師だそうで。好楽師のときと一緒。
小朝師は、会長になる野望が枯れ果てて久しいので、正蔵師の後ろ盾を務めているのであろうか。
文枝師の昼席は行かないと思う。
ちなみに夜席がむかし家今松師。なんでだろう。でも、金原亭の揃った楽しそうな芝居なので、こちらに行けたら行ってみたい。
なかなか中身の濃い対談ではあった。
だが、よく聞く話ばかりではあるのだ。
文枝師の話は、こう。枝雀にいさんに圧倒されたので、古典をやめ、円丈師の薫陶を受けて創作派(師は新作とは言わない)になった。
正蔵師はこう。志ん朝に、「お前は三平にはなれないよ。俺も志ん生にはなれないから、文楽、先代正蔵の教えを乞うた」。
小朝師はどうやら、正蔵師に「親父の芸を追うな」とは言わなかったみたい。
むしろ逆だったのでは。だから当代三平という廃人が生まれてしまったのだと私は思っているのだが。
小朝師の話は、文枝師に連絡したという以外には放送に出てきてませんので念のため。
対談の全体のトーンとして、今後会長になる正蔵師を、西から文枝師が支えていくという構図が見えた。
私が正蔵師についてもっとも不安視する外交の第一弾と思えば、全然いいじゃないですか。
だが、一瞬だけ頭をガツンと殴られた気がした。
志ん朝の話のあと、文枝師が他にお世話になった噺家は、と振る。
そこで出てきたのが小三治。
しかし、西の人から忖度なしの発言が出た。
小三治さん、会長のときに真打ひとりしか出さないと言うんでね。私電話したんですよ。
真打ひとりしか出さなかったら、あとつかえるんじゃないですか。そしたら、「いいんだ」っていうんです。
ちゃんとしたものだけ真打にしたいんだそうで。
危険な空気を察知したらしい正蔵師が、時代をさかのぼり真打試験の話にチェンジした。
小三治が認めてくれたおかげで、ヘタだヘタだと言われていたが真打になれたんだと。これまた、正蔵師から頻出の話。
正蔵師が話題を巧みに変え、消してしまった話のほうがずっと気になった。
小三治会長時代にひとりで真打になったのは、一之輔師。
世間への発表は、その半年後のやはり抜擢のふたり(志ん陽、文菊)と一緒だったのだが、構想段階でもって小三治がひとりだけ上げると決めていた、その頃の話なのだろう。
こんな内幕、東京の噺家の誰もしたことはないと思う。
真打が滞留してもいい。
なんて傲慢なんだと、私はひとり、故人に向かって怒っているのだった。
師匠・小さんが圓生に逆らって大量昇級させた歴史があるのに。まあ、これはどうでもいいか。
それより「俺が判断する」。なんたる不遜。
あなたに、新作なんかわかるのかよお。新作派は一生二ツ目で終わりかねないではないか。
実際に、新作派の昇進を露骨に止めたのだから。
そして、一之輔師のあとの抜擢のひとり、志ん陽師はいまだに売れていない。少なくとも結果からいえば、抜擢失敗だと思う。
いったん権力を掌握したら独裁者になる、こんな人を放置しておいてはいけない。
協会でも、小三治排除の動きが働いたに違いない。それもおそらく身内の柳家から。
幸い、飽きたのか早めにやめてくれた。
あんな権力行使がなされるぐらいなら、年功序列真打のほうがどんなにいいかと思う。
まあ、芸協のほうだが、年功序列でやっているのに弟子の昇進を2度も遅らせる師匠がいたりして。これまた権力。
ああ、いやだいやだ。
やはり会長は、正蔵師なのですかね。
さん喬師が良いという意見もありますが。
来年の真打も発表になりました。
今回抜かれた人ばかりです。
抜擢は、難しいですね。
いらっしゃいませ。
さん喬師に限らず柳家は絶対ないと思います。
そしてこの先しばらく、柳家の会長は出ないと思ってます。単にいないからですが。
いずれにしても独裁者はご遠慮いただきたいものです。
落語協会の新真打は今日書きます。
お邪魔いたします。
この回の放送を観て、「落語とはこうあるべきだ」「芸とはかくあるべき」という思考を持っている人ほど独裁的になってしまうのかなと思いました。
実際昇太師匠にはそのような独裁的な雰囲気はまったくしないですし…
いらっしゃいませ。
コメント気づきませんで失礼しました。
独裁的になるところまでは、あるいは仕方ないのかもしれません。
ですが一般人に、それを喜ぶ人が多いのが困ります。
ところで落語協会には、実は独裁者排除の仕組みが、目に見えないがちゃんとあったのでは、働いたのではという気もしているのです。
証拠はないですが、柳家の人たちが独裁者を追放したと私は考えています。
あの一門が晩年孤立していた根拠しかないですが。