神田連雀亭ワンコイン寄席53(上・桂鷹治「ちりとてちん」)

今月、2024年5月はいろいろ聴きにいった。実に楽しい席ばかり。
こどもの日に出向いた柳亭こみち師&宮田陽・昇なんてはるか昔のこと、そんな気もする。

2月以来の神田連雀亭へ。
巣鴨スタジオフォーや梶原いろは亭、二ツ目さんの楽しい席も無数にあるから、ここの回数は明らかに減った。
出演者をランダムに割り振るのがここの魅力だが、なにせ組み合わせに作為がないゆえに、締まらないこともある。
今日は鷹治、小はぜという期待の人と、初めて聴く田辺いちかさん。
講談、特になじみの薄い講談協会の人は極力聴いていこうと思って。

5月の木戸銭合計、このワンコインでもって1万円を突破した。
ちょうど1万円と思ったが、よく考えたら亀戸は1,200円に値上げしている。
このままのペースを維持するのもどうかと思い、6月は基本配信視聴にしようかなと思っている。

ちりとてちん 鷹治
粗忽の使者 小はぜ
出世茶碗 いちか

顔付けがいいので盛況。24人だそうな(設定温度と同じ)。

前説の小はぜさん、立ったまま「寒くないですか?」
ということで室温調整。
注意事項は携帯の音のみ。

トップバッター、桂鷹治さんは室温のお詫びから。
早く来て、私の最も快適な温度に設定してしまいました。
今日はいちかさんの講談を楽しみにお越しくださいまして。
40分ほど、まずは男どもの落語でご辛抱ください。
落語の登場人物は、講談と比べるとみなバカ。やってるほうもみなバカ、それを聴いてる人も…ようこそいらっしゃいました。
幇間を振る。幇間の20分の噺というとたいこ腹?
ではなくて、ちりとてちん。職業としてのたいこ持ちでなく、ヨイショの上手い一般人の噺。
そろそろ寄席で重宝する噺だ。文治トリビュートもあるし、稽古替わりでしょうか。
私はウェルカム。

ヨイショの竹さんが登場する場面から。
料理が余っちゃったというのは、後で密やかに語られる。

先日、志ん朝の昔の映像(火焔太鼓)を聴き、抑揚豊かな志ん朝が、いかに狭いレンジで声を出してるか、それに気づいた。
そして今日の鷹治さんも、そんな手法なのだ。
隠居は、言葉にアクセントを付けずハイスピードで喋る。
といっても高揚感を出すためでなく、竹さんと調子を違えるために。
隠居の語りが棒読みなので、竹さんは対比で自然とアクセントがつき、ヨイショの達人振りに磨きがかかる。

上手いよなあ。
どんな演者だって、竹さん(名前は統一されてない)は大げさに演じるものだ。そういうシーンだもん。
だが、隠居を抑える工夫により、くどくないがしっかりヨイショの上手い人物が出現する。
あっさりめでも、噺の中での役割はきちんと果たす。

ところで、違ったらすみませんが。
竹さんに下がってもらうの、忘れませんでした?
愛想の悪い寅さんがやってきて、なんの挨拶もなく竹さんそこにいるんだもの。
あとで隠居が一言だけ竹さんに同意を求めているのだが、とってつけたようで。
そういう型もあるのかなと思ったけど、私は知らない。
正月にも、一目上がりでもって法則を見つけ出さないうちにアニイの家に行ってしまうのを見ている。
非難なんかじゃないですよ。今日も圧倒されたんだから。
創作力も高いしね。

ちりとてちんという名は、隣の三味線を聴いて竹さんが発明している。

寅さんについては、隠居は一言、「あれでどこか愛嬌があるんだろうが」と語っている。丸っきり憎いやつじゃないのだ。
そして、演者の人柄が出るのだろう、確かにそんなイヤな人じゃない。
口は本当に悪いのだが、隠居の言う通りどこか愛嬌がある。

江戸に来る酒は、道中少しずつ盗み飲みされて、だんだん水っぽくなるそうだ。

赤ちりとてちんは、白や黒と違って貴重品らしい。
そして寅さん、ビン詰めにしたちりとてちんを一気食い。
芸協は一気食い好きだよね。
それはそうと、「江戸っ子のくいもんなんでえ!」と一気に腐った食い物を流し込む寅さん、カッコいい!
鷹治版ちりとてちんは、敵に後ろを見せないいなせな江戸っ子の噺だったのだ!

ちなみに志ん朝の名を出したところだが、腐った豆腐を覗きこんでオエップの鷹治さんの顔が、一瞬志ん朝に見えた。
不思議だ。

隠居がじわじわ寅さんを追い込んでいくシーン少なめのちりとてちんだが、時間は22分くらい。結構長めでした。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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