ワイドナショー緊急生放送の松本人志に思う

最近はすっかりラジオリスナーになり、特に午前中テレビはほとんど視ない。
昨年あたりは、仕事しながらCSでサスペンスを視ていたが、飽きた。
なぜラジオリスナーになったのかというと、尽きるところ落語の影響に違いないと思うのである。
落語自体は昔から聴いているのに、急にラジオをよく聴くようになるというのも変だが、でもそうだ。
耳からのみの情報は、想像力をかき立てるのでいい。

いきなり脱線からスタートしてしまった。
今日のテーマは、珍しくテレビを点けて視た、ワイドナショーの緊急生放送について。
もちろん宮迫・田村亮の会見後の顛末に興味があるから視たわけだが、全般的にはこの事件、よくわからない。
反社から金をもらったのが、現代の事情としてNGであることに疑問の余地はない。
闇営業、というか直営業の是非については、なんともいえないが、これで謹慎させられているわけではないから、関係ないだろう。
もともと起こったことの善悪から切り離され、世間の人は吉本興業のパワハラなやり口に怒りをたぎらせているだろう。

だが、そんな単純な図式の前に思う。
パワハラを繰り広げてでも事件性を潰す、そのことは許されないかもしれないが、だが、潰すことにメリットがあるからこそ潰すわけである。
組織を防衛しなければならないのは当たり前。その防衛に失敗し、潰れていった組織もたくさんあるわけだが。
結局吉本は、事件を潰すこともできなかった。というか、自分たちが窮地に追い込まれるようなやり方しかしていない。
そこに一貫した論理性はまるでない。
「窮地を避けるために、なだめたりすかしたりする」やり方もよくはないが、理解はできる。目的がはっきりしているからだ。
トカゲの尻尾切りも、相手がトカゲだと思えばこそ。実はトカゲでなく、恐竜かもしれない。
リスクマネジメントの失敗といえばそうなのだが、間違った成功を目指して奮闘していたようにも思えない。

それはともかく、番組でもっとも面白かったのは、事件を巡る本質的な議論についてではない。
松ちゃんのときたま放り込んでくるギャグ。
最終的には、宮迫と社長とで、乳首相撲をして決着をつけようだって。

テーマと関係なく、この話術にいたく感銘を受けてしまった。
このギャグ、成立させるのは極めて困難なのは、誰が見てもわかること。真面目な話を繰り広げている状況において。
普段から、「ギャグのときだけテンション上げる」という方法論を松ちゃんは採っていない。常に抑えた話術、真剣な話と同じテンションにより、この場面でのギャグが成立するのである。
テンションをガラっと変えて面白いことを言ったとする。一同が笑うとしても、それはその不謹慎さに対しての笑いとなってしまう。この状況でこんなこと言いやがって、バカじゃねえのと。
いい悪いでなくて、こうしたスタイルのTV芸人もたくさん思いつくけども。

この奇跡の話術、噺家さんについては、ちょっと例が思いつかない。
バナナの皮で滑ったら、周りには喜劇だが、当人には悲劇だなんていう。これが笑いの基本。
誰かが笑うことに、傷つく人もいる。
だが、真面目な話のときに、誰も傷つけずギャグをかますことも、達人なら可能なのだ。
松ちゃんは、最近セクハラギャグで物議をかもした。私もちょっとこれについて書いた。
ご本人は、笑いの領域が狭まってきていることを嘆いていたが、そんなはずはない。こんなギャグを披露できるなら、ノープロブレム。

春風亭昇太師匠は、結婚報告でバンキシャに出て、たっぷり笑わせてくれた。
日頃テンション高めの師匠にとってはお手のものだが、今回のワイドナショーの状況で、ギャグを入れることは果たして可能だろうか。
噺家さんは、緊張を和らげるためにクスっとさせることはできると思う。だが、爆笑まで持っていくのは難しいだろうなと思った。

というわけで、闇営業問題の本質と離れた、ダウンタウン松本人志の話術にだけ目が行く私でありました。
「落語の人情」というテーマを続けていたところなのだが、今回の話、まるで関係ないわけでもないので、ちょっと割り込みました。

作成者: でっち定吉

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