東京太・ゆめ子先生の自由漫才。81歳と74歳のご夫婦。
私はこの夫婦漫才、2年振りだが、なんとさらに面白くなっている! 衝撃。
ゆめ子先生が不規則発言をしつつ、それを全部京太先生のせいにし、京太先生は面白がりながらもそれを野放しにする。
ある種、これこそ究極の漫才なのではなかろうか。
やってることは、夫婦の噛み合わない(でも仲良し)会話を覗き見ることなのだが。
ゆめ子先生が子供の頃九州で覚えた竹取物語の歌の、合いの手を京太先生に入れさせる。
かあちゃん、俺知らねえから無理だよ。
漫才が完成してきている証拠に、困ったときの「ネッ」がもうない。いらないのだろう。
オチの「これがほんとの地場産業」もなかった。これはまだやってそうだけど。
シルバー比率高めの浅草とはいえ、客の大部分は年下であろう。
人生の先輩がこれだけ楽しい舞台を務めているのだから頭が下がりませんか。
会話の中身はまるで思い出せないけど。
釈台が出てきた。
講談だったかなと思ったら、桂竹丸師。
でも、正座してた。念のため出しているのだろうか。
満員のため開けている2階席にも手を振る竹丸師。
相変わらず完成度の高い漫談。
ミャンマー出身の桂蝶の治さん、スウェーデン出身の三遊亭好青年さんの話題を振る。グローバルな時代です。
そして今日は最初から、師匠の話の予定だったみたい。先日大往生の桂米丸師が、竹丸師の師匠である。
当然、モノマネ入り。
師匠は、その師匠今輔の前名である「米丸」の名前に強いこだわりがあり、弟子には「米」か「丸」を付けていた。
師匠は、今輔の考えで二ツ目デビュー。後年、大変だったと言ってた。
一番弟子が歌丸。この人は、古典落語がやりたかったのでいったん師匠今輔の元を去り、兄弟子の米丸に再入門したんです。
歌丸師の自叙伝には違うことが書いてあるのだが、でも竹丸師が語っているのもウソではないのだと思う。
二番弟子がヨネスケ師匠です。この人はカタカナで活躍してますけど、本来漢字ですから。
師匠は、こだわりのある米助の名をカタカナにされて、あまりよくは思っていませんでした。
そうしたら、幸丸さんまで、テレビのレポーターに抜擢されるときに「ゆき丸」にする話が出て来たんです。「お前さんもかい」。
新しもの好きの師匠でした。最後に作った噺がドローンですよ。
師匠の生まれた大正14年は噺家が豊作でした。
まず林家三平師匠。あ、面白いほうですよ。
おしゃれな師匠でした。いつもあつらえのスーツで。
テレビ局に出向くので幸丸師と一緒に歩いていたら、ご自慢のスーツに鳩がフンを落とした。2羽揃って。
鳩フンは固まってから除去すればいいのに、慌てていた師匠は思わず手で拭ってしまう。あとに3本線が残ってアディダスになった。
幸丸師に八つ当たりする師匠。君がこっちを歩かないからだ。
その日はテレビ局のあと寄席の仕事です。師匠は「トリ」でしたね。
実に芸協らしい高座が続く。
出囃子「鯉」が掛かって瀧川鯉昇師。仲入りである。
笑点好きの寄席初心者にとって、次のステップに進むのに最適な師匠だと思う。
この日も鯉昇師にハマった客、きっと多いに違いない。
顔を上げての静止から、暑さによる体の不調を覚えるようになって50年。
71歳だがまだ若手。
いつものマクラが、やはり客の反応で増幅してきてとても楽しい。
1年前までクーラーでなく、扇風機でした。
近所の倒産した会社でもらった首の回らない扇風機と、ボタンが甲乙丙の扇風機の2台。
この先なにを喋るか細かいセリフまで完全にわかっていて、なお笑ってしまう。これが話芸というものだ。
暑い中外に出かけて、バスが来たからバスに乗るが照り返しが厳しい。特に(ボールドヘッドの)私には。2重に照り返して体感100度。
ここからバスとカチワリ氷の小噺に。
バカウケだった。
先日、二ツ目がこの小噺を掛け、ウケなかったので「教わった通りにやってます」。
ウケる人がやりゃバカウケだろうよと思った。
早速原典が出た。それでもって寄席がどよめく様子を目の当たりにした。
大変な破壊力だ。
ここから入るのは、鯉昇師の場合蛇含草と決まっているものか。
だが、人を溶かす蛇含草は一切出てこない。仕込みなく始める。
昨年聴いた際は、団体の中学生が入っていたので、人が死ぬ噺は避けたのかと思っていた。
だがもう、鯉昇師はこれでやることにしたらしい。
鯉昇師は一度手のうちに入れた噺を、徹底的に動かす人である。
時そばも、失敗するサゲまでやらないものを掛けていた。これはこれですごいのだが、その後段階的に進化していって、現在は「そば処ベートーベン」になっている。
言われてみれば、別に人が死ななくてもこの噺は面白いのだった(そうかな?)。
ちなみに、手ぬぐいで作った変な服着てる場面もなかった。
仲入りとはいえ、にゅうおいらんずが入るこの席の場合、時間が短めだったのもあるだろうけど。
最近の若手は「ボケっぱなし」の技法を心得ているというのが私の観察。
しかしベテランの鯉昇師も、ボケっぱなし技法の大家であるなと改めて思った。