浅草演芸ホール5 その2(ナオユキ)

二ツ目は小遊三一門の女流、遊七さん。
一門で集まった際のしくじりの話をしていたが、小遊三家の飼い猫の話をしていたのに、しくじったのはご本人。話の流れがよくわからない。
元犬のシロを、高い作った声で演じていたのは印象よくなかった。
先日配信で聴いた神田連雀亭の「道灌」は悪くなかったけど。

おせつときょうたは2年振り。
英字新聞をあしらった揃いのスーツ。久々に見た。
寿司屋の符丁(ウソ混じり)で客を手玉に取る。
実に楽しいのだが、このコンビ、回転寿司ネタ以外聴いたことがない。他のネタもあるのだろうが、遭遇していないので。
しかし同じネタでも、よりスムーズになっていて実に面白い。
回転寿司のショートケーキと、廃棄が心配なマグロをそれぞれ担当する。

釈台が出て、講談は真打昇進したての松林伯知先生。元・神田真紅。
歴史上知られていない有名人として、故郷・水戸にお墓のある「和田平助」。
水戸光圀公の家来である、居合の達人。
なぜかその墓は、遊女たちが守ってきた。和田平助を逆さに読むと、「助平だわ」。縁起もの。
初めて聴いたが上手い人だなと。
碁盤の上での決闘、そして意趣返しによる飛び道具での襲撃を、見事撃退してしまう平助。
鉄砲ごと気配で叩っ斬ってしまうなんてウソみたいですが、ちゃんと水戸藩の歴史書に書かれていますとのこと、

続いて瀧川鯉斗師。現場では初めて聴くはず。
この芝居は小痴楽と交互出演。そりゃ、小痴楽師のほうが聴きたかったが。
ただ鯉斗師、元暴走族の肩書きを使うのはいただけないが、本業のほうは意外といいじゃないかと過去に思ったことがある。
NHK演芸図鑑である。
最初聴いてなんじゃこりゃ、と思ったが、再度偏見を排して聴き直したら悪くないじゃないかということがあった。
芸の評価は常に難しいもの。

マクラは師匠以上にお世話になっているという小遊三師の話。
本編は、荒茶。
鶴光師の荒茶に似てるなと思ったら、本当にそうだった。地噺として脱線する流れで、鶴光師に教わったと話していた。
鶴光師は上方落語だから噺を教わる機会は少ないと思うのだが、地噺の荒茶ならそんなに東西関係ないのだろう。
ちなみに鶴光師に教わったことを話していたのは、つまらんクスグリのあと。ここだけは入れてくれと鶴光師に頼まれたんだと。
なんだったかな。加藤茶ではなくて。

ずいぶんウケていて驚いた。
この一席に関し個人的な評価はまだ難しいが、ウケていたのは真実。
やや疑問に思ったのは、講談のあとで地噺か、という点。
講談と落語の地噺、構造がよく似てると思う。
しかも次が漫談だし(スタンダップコメディ)。

そしてナオユキ。
いつも爆笑のこの先生、今日はもうバカウケ。
いつものネタが、客の反応のおかげで増幅し、より楽しくなった。
ナオユキは一見、ネタを機械的に再現していくように映る芸だが、実際は客の反応を非常によくすくいあげている。
それがこの日は改めてよくわかった。

「夏、うだるような暑さ」から、「祭りばやしが聞こえる」。
お祭りの屋台の情景が客全員の脳裏に浮かび、うねっていく。
そしていつもの酒場ネタ。
愛しのダメ人間どもを優しく描写していく。
ダメ人間振りを自分自身の中にどれだけ感じるかは人それぞれだろう。だが、浅草という土地ではややシンパシーが高そう。
バーテンネタはなく、ダメおやじをいじるネタばかりなのは計算のたまものではなかろうか。
知らない酒場ネタシリーズが最後にあった。
「西成なんばや」。大阪、萩之茶屋にあるらしい実在の立ち飲み屋、難波屋の模様。
なんでもナオユキはここでライブやったりしてるらしい。

そして寄席芸人として地位を確立したいま、ナオユキは爆笑を舞台に残さず、一緒にきれいに消えてしまう。
あとの師匠方に迷惑を掛けることはないのである。
ブログ始める前に上野広小路亭で観たときはそうじゃなかった。
なにしろ次に出てきた鯉昇師がやりにくそうだったんだから。

小遊三一門が二人続く。遊喜、遊之介。
遊喜師は以前も聴いた加賀の千代。
ちょっと寝ました。
さらに寝ながら聴いてての感想で申しわけないが、遊之介師の真田小僧、いい感じだった。
金坊がギリギリに親父を追い詰めていくやり方が。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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