浅草演芸ホール5 その1(ポンコツ前座瀧川はち水鯉に期待)

8月上席、池袋に1日行こうと思っていた。
人間国宝、五街道雲助師の主任である。
水曜朝になって当日の顔付けを確認したが、弟子含めベストメンバーという布陣。
そこまで確認しておいて、なぜか浅草演芸ホールの芸術協会に来てしまう。
浅草の8月上席昼は、にゅうおいらんず。一度観たかったのだ。
アロハマンダラーズならコロナ禍のガラガラの席で観たが。
落語の主任は小遊三師。
雲助師が名人であることにはなんの疑いもないが、小遊三師だって名人だ。人情噺をやらない名人。
浅草は2022年末以来。もともとあんまり来ない。
ここの客層は決してよくないが、時間がやたらと長いのでパフォーマンスはいい。
しんぱち食堂でご飯大盛りの朝飯食って出陣。長丁場に備え。
浅草のしんぱち食堂には朝ごはんの設定がないが、ビール(中生)が150円なのでつい頼んでしまう。
インバウンドで賑やかな浅草の街を抜けて演芸ホールへ。
今席は東京かわら版の割引なし。特別興行だから。
理解はしてるけど、かわら版には書いてなかったので割引OKかと思ったが。
ところで浅草はいつから酒持ち込み禁止になったんだっけ?
持ち込んではいないが、テケツに「飲酒された方の入場はお断りします」とあってちょっとだけアセる。
演芸ホールも団体さんでいっぱいだ。
笑点メンバー3人勢揃いはでかいだろう。それだけではないし。
この手の企画もので、他に参加したいのが住吉踊りと、鹿芝居。
それから池袋下席夜の大喜利。

開演は午前11時。朝っぱらから熱気ムンムン。

平林はち水鯉
元犬遊七
おせつときょうた
和田平助 鉄砲斬り伯知
荒茶鯉斗
ナオユキ
加賀の千代遊喜
真田小僧遊之介
京太・ゆめ子
米丸の思い出竹丸
蛇含草鯉昇
(仲入り)
手水廻し宮治
ねづっち
金明竹柳橋
ストレスの海昇太
小すみ
鰻の幇間小遊三
ディキシーランドにゅうおいらんず

極めて大衆的な寄席。
客はいつも来ているわけではないが、感度はそこそこ高いという感じ。
与太郎が鼻かんだ紙と便所紙の順番間違えてバカウケする客。
寄席に通い出した頃の、忘れていた感覚を思い出した気がする。
池袋の落語協会のほうだったら、まるで感想が違ったと思う。いい悪いではなくて、どちらも寄席のかたち。
「寄席で笑おう」というよく聞く標語がよく響く席だ。
よく知ってるネタも、客のいい笑い声のおかげで新鮮に聞こえるということはある。
全般的には、予想以上のいい客。
もちろん個別にはいろいろ。後ろの夫婦は私語やめないし。
前座の最中人を立たせて割り込んできた隣の女は、公演中ずっとスマホで芸人プロフィールを調べてるし。
ただ、浅草においては、通常より寛容であろうと思っている。

前座は鯉朝師の弟子、はち水鯉(はちみり)さん。
ポンコツ前座として他の芸人からよくエピソードを聞く人。
落語協会の柳家小はださんからも聞いた。
ご本人には初めて遭遇。
大学で映画に関わっていたので師匠が付けてくれた名前。
他の名前としては、「おし鯉」などがあったと。

声がやたらでかいが、滑舌はよくない。ところどころなに言ってるのかわからない。
だが、なかなか面白い人。
とにかく、高座の上で振り切っている。絶対に照れたりしない。
渾身のギャグがやや痛めで、そして決してウケてなくても、なにしろ堂々としているので客をつらくさせたりすることはない。
そんな人に、平林は最適な演目。
平林は無筆ものと粗忽もの、どちらかに寄せることが多い。
だが、はち水鯉さんはどちらでもない。
あえて言うならファンキーな定吉。

「ヒラリン」を教わり、自分でリズムをつける。
「♪ヒラリン、ヒラリン、ヒラリン。ポテト揚がったのか」は爆笑を生んでいた。

たいらばやしかひらりんか、いちはちじゅうのもーくもく、ひとつとやっつでとっきっき。
リズムだけでなく、なんとフリをつける。
楽しく踊る定吉。これは平林史においては画期的かも。
踊りを一瞬やめて、演者に戻る。
「本当はこんなことしたくないんですよ。映画監督になりたかったんです」と客に語りかけ、また噺に戻っていく。
結局平林さんに声を掛けられるが、サゲも工夫していた。

芸協の先代ポンコツ前座は最近聴いたが、あまり感心しなかった。
世間とのズレをよく自覚している当代ポンコツ前座には期待大。
そういえば落語協会の元ポンコツ前座、やま彦さんは、先日若手大喜利に出ていた。

長い浅草、始まったばかりです。
続きます。

(2024/9/10追記)
瀧川はち水鯉さん、2024年9月上席より「瀧川蛙朝」(あちょう)として二ツ目昇進。
おめでとうございます。
アチョー! なんでしょうね、きっと。
それにしても、「蛙」を入れた噺家なんていたかな。

 
 

作成者: でっち定吉

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