小遊三師の「鰻の幇間」はトリとして実に見事だったが、今席は本当のトリ(大喜利)がある。
にゅうおいらんず。
いったん幕が閉まり、大急ぎでライブの準備。
小遊三師も、浴衣に着替えている。
演奏しながら幕が開く。
現にゅうおいらんずはこのメンバー。
- 三遊亭小遊三 トランペット
- 桂宮治 トランペット
- 春風亭昇太 トロンボーン
- ベン☆片岡(落語芸術協会事務員)ベース
- 片山士駿 ソプラノサックス
- 高橋徹 ドラムス
- 春風亭柳橋 バンジョー&MC
- 桂小すみ キーボード
片山士駿、高橋徹の両氏はプロのミュージシャン。
片山さんは日米を股にかけて活躍の中、8月はにゅうおいらんずのために開けているのだそうで。
そして小すみ先生も、言ってみたらプロだと思う。
このバンド、もう18年やってるのだ。
昇太師は結構トロンボーン上手い。
トロンボーンは師匠・柳昇が吹いていた楽器。
実に楽しいライブであった。初めて来たのが今さらながら惜しまれる。
30分ぐらいやってたのかな。ずいぶんたっぷり。
プロも混じってるから、ちゃんと音楽そのものでも楽しませてくれる。サックスソロ、ドラムソロもあり。
それに噺家ならではの掛け合い。
もともとは、小遊三師がトランペット買ったので始まったバンドですとのこと。ホントかどうかは知らない。
メンバー紹介のあと、改めて新曲で、セレソ・ロッサ。
キャバレーで掛かっているような、アレである。
小遊三師のトランペット、ハイトーンソロで始まる曲。
小遊三師が頑張って息を入れ続ける中、昇太師が「ウッ!」と合いの手を入れて、曲が動き出す。つまり昇太師のさじ加減。
引っ張るだけ引っ張っておいて「ウッ!」。
小遊三師、「殺す気か」。
曲の合間に昇太師が語る。
歌丸師匠が亡くなって、芸協の新会長を決めなければならなくなりました。
会員の総意は、小遊三新会長だったんです。
この人こう見えて、人望すごくあるんですよ。
歌丸師匠がご病気だったので、小遊三師匠は会長代行としてずっと協会取り仕切っていたんです。
会員みんなが当然、小遊三会長になるもんだと思っていたら、ご本人がやらないって言うんですね。
せめて一期2年だけでもやってもらおうと思って、お願いに上がったんですね。
ぼくたちは、小遊三さんに国の勲章もらってほしかったんです。会長やれば、勲章もらえると思いまして。
小遊三師が受けて、「俺が勲章もらいたがる人間かどうかわからねえのか」。
いやあ、私なんかも小遊三師匠に勲章もらって欲しいけど。でも、カッコいいエピソード。
ともかく、若い人に譲りたかったんだと小遊三師。
昇太師も、本気で小遊三師に会長やって欲しかったのだろう。
協会の顔だもの。
続いて曲は東京ドドンパ娘。
いい曲だよね。私も好きだ。
途中から、小遊三師がボーカル入れる。
「♪好きになったら離れられない」
決して上手くはないけれど。
なんだかちょっとグッと来る。
あり得ないが、なんだか涙腺が緩みかける。
自分自身でもよくわからない感情の発露だ。
次の曲はジャズ・スタンダードのなんだったか。今度は昇太師がボーカルも担当。
トロンボーンほどには歌は上手くない。
来年は、落語協会の会長退いた、柳亭市馬師をゲストボーカルに呼んだらどうでしょう。
そんなに無理な話ではないと思う。もちろん高座も一席、山号寺号くらい軽くやってもらって。
小遊三がヘロヘロになって、休憩に入る。
トイレ行ってくるって。
そこに桂宮治師が登場。
小遊三のいたところ、ビチョビチョですねだって。
宮治師のトランペット、まだまだそんなに音は出ない。
サボってるシーンも多い。
最後にもう一回小遊三師が登場。用を済ませてきたって。
聖者の行進をやって、演奏が終わると「ありがとうございましたー」とみんなが勝手な方向にハケようとするところ、宮治師がトランペットを吹いて、みんな演奏に戻る。
これを数回繰り返してようやく幕が閉まる。
さすがに寄席であるからアンコールなんてのはない。
楽しい舞台でありました。
小遊三師の存在感の大きさも再認識した。
偉大なおじいちゃんだ。
80代になっても続けるのでしょうか。
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