プーク新作落語寄席2 その4(三遊亭白鳥「3年B組はん治先生」)

そういえば、きく麿師は小さなあいびき使ってましたな。
あと4日間の番組は小ゑん師が作っているそうで。

仲入り後、古今亭志ん五師は「噺家に着物でスケボをやって滑らせる」というテレビ企画の影響でスケボを始め、練習場で小里ん師の孫と知り合ったマクラは実に面白かった。
本編、天気のテーマパークの噺がピンと来ない。
噺が軽いのはこの人の特徴だし、そこは全然いいのだけど。
「赤坂なのに日テレのお天気キャラが出てくる」あたり、狙った面白さがハマらない。
ヤン坊マー坊の歌がなぜか客席参加型になり、演者もびっくり。

三遊亭ふう丈さんは、最近掛かった痛風のマクラ。真打で痛風丈になります。
本編はまんまこれを引いて痛風の噺。
悪いが大ハズレ。早く終わらないかなと辛抱していた。
そう思ってから、私が新作落語に欠かせないと思っている「飛躍」がトトロのネコバスとして出てきたが、手遅れ。
客席終始静かだったのに、最後にムリに客参加型。もはやついていけない。
ふう丈さんの新作落語、共通項として、キャラクターを肉付けしようしようと頑張りすぎるなという印象を持っている。
演者の狙いを活かすには、むしろ方向性が真逆じゃないのか。
できるだけ記号に近いキャラ(さらに、棒読み)だったら、望み通りになる(かもしれない)。
きく麿師がまさにこの手法。花いち師もまた。
現状は押し付けがましい。
神田連雀亭で最後に聴いたときはわりとよかったのに。

個人的にはちょっとイヤなムードでトリの一席へ。
白鳥師に軽く取り返してもらい、幸い。

三遊亭白鳥師は、この地下の怪しい空間はもはや唯一無二ですねと。
かつてのジァンジァン、実験落語会を思い出します。
私はあの会の前座に入ってましたが、その後が入らないんですよ。
喬太郎や彦いちとは、6年ぐらい離れてるんです。
なので私がずっと川柳や左談次あたりの世話をしてまして。打ち上げでベロベロになった川柳を自宅に連れて帰るという。

そしてせっかくのプークなので、寄席でできない噺を、と「3年B組はん治先生」へ。
ネタボードには「3年B組はん爺先生」と書かれていた。もともと両方あるらしい。テキトーだな。
師匠にパイプ椅子で殴られたエピソードと、そして訴えてもよかったんだなと。
落語協会のパワハラ問題を取り込んだ導入部は、前回聴いたのと同じ。

今回は「エロ坊主」文菊が生徒に加わっていた。「・・でゲス」とゲス言葉を多用するキャラ。
それから生徒の中で馬石の出番が増えていた。前回の池袋では、たまたま馬石師がその芝居の仲入りだったから入れたのかと思っていたが、どうやら実力のたまものらしい。
はん治先生いわく、「お前、最近評判いいらしいな。独演会とか。白酒より人気あるらしいじゃないか」だそうで。
「馬石にしたほうがウケるな」だって。まあ、女性客が多かったし。
ちなみに馬石モノマネは全然似てないが、でも楽しい。

笑点学園の一之輔・宮治と落語で戦う落協学園。
ちなみにエセ古典の遊雀、小痴楽しかいない芸協学園を揶揄した後、「落語協会はすぐ芸協を下に見るからな」と自主的にフォローを入れるはん治先生、というか白鳥師。

学級委員長三三は道灌。そしてスケバンこみちのやる噺が短命から「小言念仏」に代わっていた。
きっと本来小言念仏で、池袋ではさすがの白鳥師も遠慮した、そう想像する。
惨敗の三三にはん治先生、「小三治は俺が継ぐ!」「それはダメです!」
そしてこみちには、「小言念仏なんて、寄席で小三治がやってたのはあれは手抜きだ!」
誰も言わないから先生が言う。白酒の茗荷宿と同じ手抜きだ!
個人的には快哉を覚えた。
プークのほうが歯止めがないようだ。
まあただ、白鳥師にも「アジアそば」とか茗荷宿的な噺もありそうな気はするが。

なんだかノッてきてしまったようで、こみちがかつて教えを乞うた一之輔とのラブシーンまで入っていた。
はん治先生、「本気にするなよ。高座で喋るとすぐ本気にされるからな。こみちにはちゃんと売れない漫才師の旦那がいるんだから」
さすがにノリ過ぎてしまったので全力フォロー入り。
売れないだけ余計だが。売れてますから。

この噺、白鳥師の笑点論も語られる。
ちなみに白鳥師も実は笑点メンバーになりたかったってチラっと語っていた。
現在の状況から抜け出し、あちらに行きたいって。
本音はもちろんもう少し複雑だと思うが、2年前に笑点に参加し、3人のジジイたちに圧倒されたのは事実のようだ。
ふた昔前のように、「あそこで座布団取りっこしてるやつはみな下手だ」なんてもはや言っていられないことを、身をもって体験したのでしょう。

この噺は白鳥師の現代・古典落語論でもある。
やりづらい噺として前回は「引っ越しの夢」とそれから後生鰻が上がっていた。
今回は後生鰻に替えて「持参金」。これははん治先生が、お前の師匠のやる持参金はどうだと生徒・馬石に振っていた。

被ってしまった3年B組はん治先生だが、二度聴いて3Dになったのでよかったです。
白鳥落語評論を詰め込んだこの噺、かなり評判いいだろうから、封印するすると言いつつおそらくしない。
なんとなく、私もスタジオフォーあたりでまた遭遇しそうな予感がする。

多少外れもあるが、新作落語はやっぱり面白い。

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作成者: でっち定吉

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