ひらい圓蔵亭の桂竹千代(下)

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一席終えて羽織を脱ぐ竹千代さん。
落語は古典落語、新作落語とありますが、他にもあるんですと。
東西800人の落語家のうち私しかしません。古代史落語です。大学院で研究してたので。
結構聴いている竹千代さんだが、売り物の古代史落語に出くわすのは私も初めてである。嬉しいですね。

古事記をダイジェストで、地噺として語る一席。
そして関係ないエピソードを次々放り込んで笑わせる。故郷、千葉県旭市の観光大使の話であるとか。
師匠・竹丸が西郷隆盛や石田三成などを使ってやっているスタイルを引き継いでいるらしい。
素材は珍しいが、スタイル自体は典型的な地噺のそれ。落語の世界として違和感なし。
国生み神話から、イザナミを黄泉の国に迎えに行くイザナギ。こだわりなんだろう、「イザナキ」と発音する竹千代さん。
天岩戸のアメノウズメから、スサノオ追放、出雲征服とテンポよく噺は進む。
天叢雲剣は、三種の神器のひとつです。あとふたつご存じですか? 冷蔵庫と洗濯機。
教養に充ちており、実に楽しい。
先週、らくごカフェで聴いた古今亭今輔師の七福神も思い起こさせる。
講談に移植したらまた楽しそうだなと。もう誰かやってるかもしれないが。

残り時間30分ほどで、最後に長い噺をやりますと。時計を見て、ちょっと延びるかもしれませんがいいですねと竹千代さん。
実際にはジャストだった。
梨の実と歯痛の願掛けを説明する。あ、佃祭。
向かいの平井公園に神輿が出ているのを見て思いついたのではないだろうか。
いい噺を持っていますね。

吾妻橋の人助けを遠因に、今度はしまい船に乗らないことで命を助けられる治郎兵衛さん。
竹千代さん、人情を語り込むのが上手い。
自分の過去記事を読むと、竹千代さんの「宮戸川」に人情を感じたと書いてある。
宮戸川に人情を感じるぐらいだ。本物の人情噺である佃祭なら、ストレートに聴き手に届く。
といっても、ギャグは多い。
決して湿っぽくなったりはしない。そして一人残らず死んでしまう水難事故も、遠景であって、悲惨なムードはここに持ち込まない。
実は生きていた治郎兵衛さんを見る町内の連中も、ああよかった、ホッとしたではなく、笑いに満ちて迎える。

おかみさんの悋気は強くなかった。
噺のいいムードを壊さないようにそうしたのだろうと想像がつく。
でも、悋気が強いという部分だけは生きている。だから治郎兵衛さんは、早く帰らなきゃいけないわけだ。
この点だけちょっとスムーズではない気がする。古典落語っていうのは、演出に疑問を持っていじると、あちら立てればこちら立たずということがある。

売り出し中の竹千代さんのいい噺が、3席聴けて満足です。
またひらい圓蔵亭、寄せてもらうかな。

作成者: でっち定吉

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2件のコメント

  1. 昨日の国立演芸場8月中席2日目、二ツ目の出番が竹千代さんで古事記をかけていました。客席はウケており、流石はさがみはら若手落語家選手権で優勝しただけのことはあるなというのが率直な印象でした。

    1. ばたばたさん、コメントありがとうございます。
      竹千代さん、寄席で受けるならホンモノですね。
      私は竹千代さんのことを本格古典派だと思っているのですが、二ツ目が寄席でそんなもの掛けられません。
      この点、古事記は寄席のバラエティ化に貢献しますし最適でしょう。

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