鈴本演芸場10 その1(柳家小太郎「やかん」)

16日朝仕事を納品し、やっと鈴本、喬太郎師の芝居へ。
喬太郎師、夜はがっつり独演会に出突っ張りで実にお忙しそうだ。
死神に、亡くなった馬遊師を入れ込んだとか。
鈴本のほうは、毎日何出してるのか情報なくてわからないな。
ただ、当ブログの「母恋くらげ」にアクセスがあったところを見ると、これは恐らく出たらしい。

鈴本は1年振り。今年は寄席四場のうち最後にやってきたのがここ。
現金投入機は新札対応になっていた。
なんだか、力の入れどころが違うのう。

平日昼間だが、さすが開演前からそこそこ埋まっている。
本日はストレート松浦先生の代演が紋之助師匠。
小里ん師の代演が扇遊師。
浅草と違い、開演前も仲入り休憩中も、携帯等のマナー告知を徹底するのが鈴本。
「おとなの遊び場を守ろう」という熱意に満ちているのはとてもいい。

 

小町ひろ馬
やかん小太郎
如月琉
猫の皿歌武蔵
おすわどん小平太
ロケット団
夫婦でドライブ百栄
たいこ腹菊丸
八楽
代書屋権太楼
(仲入り)
紋之助
新ガマの油わん丈
浮世床(夢)扇遊
のだゆき
抜け雀喬太郎

喬太郎師は抜け雀。
何度も観たテレビの高座よりずっとパワーアップしていてこれはサイコー。数日後の記事で、検索1位を必ず獲ります。
ただ、「いかにも鈴本の昼席」という高座が二三あり、やや不満が。
私は、寄席を初心者のためのものと決めつけ、落語会にしか行かなくなるファンが好きではない。
ただ、そんな気持ちも今日はちょっとわかったりして。
池袋なら、ピッタリ来るので寄席がどうのなんてことは思わない。
来年の鈴本は、若手を抜擢する夜に来たいな。

前座は小せん師の2番弟子、柳家ひろ馬さん。鼻筋通ったハーフ顔。
2年前に棕櫚亭で聴いて以来。

先日、弟弟子の小じかさん(落武者)がちょっとウケたい病に罹かっているのではないかと指摘した。
ひろ馬さんはずっと端正なのだが、この人もちょっとだけウケたい病かも。
八っつぁんと隠居の会話、フラットにやればいいのに一生懸命アクセントを付けようとするのだ。
そんなやり方、師匠はしないと思う。

横丁の隠居さんはいるが、高架下の隠居はいない。
こんなの、そんなに面白くないし。

長いやり取りだが、書画から「女の絵」に進む。
道灌かと思ったら、小町だった。ちょっと珍しい。
久々に深草少将のエピソードが聴け、これはちょっと得した感じ。
コイに上下の隔てはねえ。

この後、ひろ馬さんが高座返し。
3年も前座やってるのに、楽屋に詰めてるはずのもっと下の人間は、まだ見習いみたいなもんなのか。

続いて柳家小太郎さん。この人は目当て。
知ったかぶりを振って、やかん。
この人は、決してハネず、ウケを狙いに行かないのに実に味わい深い。前座が目標にしてほしい人である。
なにしろ、先生が一言発し、八っつぁんが口を数秒閉じるだけでどっとウケるんである。

グシャグシャ言う先生と、なんでも質問しまくる八っつぁんが、表面的な対立関係に一切ないのが、まずすごい。
なんとか一度は先生を凹ませたいところを描くなんて普通のやり方だが、そんなわかりやすいスイッチを押さないことで、味わいが増す。

小太郎さんの描く先生は、最初に断っているような知ったかぶりではない。
アドリブに強いプロのエンタテイナーである。
そして八っつぁんも、宮田昇先生のようなツッコミ上手。
二人の漫才は実に楽しい。

劇中講釈は上手いし、八っつぁんがだんだん楽しくなってくるのもよくわかる。
客のほうはもちろん、もうやたらと楽しい。

いろいろ落語のフレーズ覚えていい気になってる私だが、川中島の決戦における信玄、謙信の名前の言い立ては覚える価値があるかもしれない。

遊びは入れない高座だが、欲しがらない小太郎さんが、「そんなことアルマイト」なんて入れると、クスっと来る。
講釈はわりとメリハリ付けるのだが、どこまでやってもそれはウケたいからではない。
いきなり狂気じみた先生が楽しいのだ。

小太郎さんが外で大ネタやったりしたらどうなのかはわからないが、寄席の二ツ目のポジションが最高に上手いことは確かだ。

マジックの如月琉先生は、わずか7〜8分ほどで盛り上げていった。
ちゃんと袋の中のルービックキューブが揃っている。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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